第四買 お嬢様と貧乏学生
一年ぶりくらいですかね?どうも相田です。
別のサイトで二次創作の方を初めましてこっちのほうに全く手を付けてなかったので、こんなに間が開いちゃいました笑
久々のさつきストア
新キャラが出てきますね。ざっくり説明しちゃうと、めちゃくちゃ頭いいことお嬢様。
サブタイトルからお察しの通り見事なまでの真逆なキャラです。
安定の深宮家の様子も出てきますよ~
では皆さん、さつきストア第四買 お嬢様と貧乏学生
どうぞお楽しみください!
あれから。無事にシフトをもらえて、今日は初めての正式なバイト日。
「おはようございまーす!」
意気込んで挨拶をした先には、休憩室の机に突っ伏す店長がいた。
「ふわぁぁぁぁ…あ、玉姫ちゃんおはよう」
「えーっと…店長。何してるんですか?」
「いやあちょっとね…」
ああ、どうせ御月さんになにかしたんだろうな…。
「どうせまたろくでもないことしたんじゃないですか?」
「酷いな玉姫ちゃーん」
噂をすればなんとやら。
「あ、深宮さんおはよう」
御月さんが入ってきた。
「御月さん、店長と何があったんですか?」
「ああ、いや下らないことだよ」
「下らないこと?」
まあ、なんとなくわかりはするのだが。
「プリンで、少しもめてね…ははは」
なんとなくが確信に変わった瞬間であった。
「ああ、店長のプリンをうっかり御月さんが食べてしまって、それで店長が起こった後、拗ねてこのざま…ってことですか。何度も謝りはしたけど許してもらえなかった…みたいな?」
「さすがだね深宮さん…本当感心するよ」
どうやら百点満点の解答のようである。
「いつもお疲れ様です。あ、私着替えてすぐ仕事入りますね」
「ありがとう、助かるよ」
そんな会話ののち、私は着替えていつものように仕事に入ることにした。
「よろしくお願いしまーす」
カウンターに入ると、見慣れない人が、いた。なんかすごく派手な格好をした女の子が。
「初めまして、今日からこちらで働かせていただく、姫乃鷺学園一年、楚々村 莉李です。どうぞ莉李って呼んでくださいね!」
「……」
お嬢様…というか…なんというか。お嬢様というには緩すぎるな。
「あ、ごめんね言ってなかったね!今日から新しいバイトの人がはいるから!」
「そういうことでしたか。里美立高校一年、深宮です。よろしくお願いします」
「下の名前は?なんていうの?」
「玉姫です」
「玉姫…じゃあ玉ちゃんだね!よろしくね、玉ちゃん!」
あ、この子あれか。コミュ力高い系か。あれ?でも…
「楚々村さん…」
「莉李」
「楚々…」
「莉李です」
…はい。
「えーっと、じゃあ…莉李ちゃんって、姫乃鷺って言ってなかった?」
「うん、莉李は姫乃鷺だよ!」
「姫乃鷺ってなんていうかもっとお嬢様みたいな子が多いんじゃないの?」
あ、姫乃鷺って何?って感じの人が大半だと思うので、私から軽く説明をさせてもらうと、とんでもないお嬢様学校である。
学費が年間一千万だとかなんとか。
まあ、大人の話である。未成年の私が言うのも不思議なところではあるが。
そして正確には姫乃鷺学園なので、お嬢様学園と言うべきかもしれないが、そこはまあ、察していただきたい。
「それがそうでもないんだよ~。むしろそういう子は少数派かな?面接ない学校だから性格はもう十人十色で楽しいよ~」
「そうなんだ…それにしてもすごい服だね…」
「そうかな?莉李の衣装部屋の中から地味な感じの服持ってきたはずなんだけどな…」
※彼女の服が分からない方のために私から口頭で軽く説明させていただくと、薄いピンク色を基調とした、メルヘンチックなふわっふわの服である。どんだけパニエを入れたんだよと、思わず突っ込みたくなるくらい。
「仕事柄スーツもあるんだけど、ちょっと硬すぎるかなって思って…」
「あー。多少硬すぎたとしてもスーツのほうが…ってなんでスーツ?まだ高校生ですけど…」
「莉李会社経営してるから、その関係でスーツも着ることあるんだよ~」
なんだろう。お嬢様って半端じゃない。
というか社長か。
「本当、タメには見えないよなー」
「あ、ろくみん!何してたの?今まで」
「いや、忘れ物を取りに…って深宮、なんだそのゴミを見るような眼は」
「ああ、いえ。先輩との心の距離を42,195kmほど感じていただけです」
「なんでフルマラソン分の距離を感じてんだよ、俺何かしたか?」
「いえ、なんというかその、初対面の同学年の女子にそんなに可愛いあだ名で呼んでもらっちゃってて、すごいなーと」
そう言いながら私は後ずさる、ずるずると。
「おい待て、後ずさらなくていい」
「あの…二人はそういうご関係?」
「「まって(いや)どういうご関係?!」」
「二人で漫才コンビ…結成して…」
「「ないです(から)!大丈夫!」」
「でも息ぴったり!莉李ここまで息の合う二人は初めて見たよ~」
私としても、ここまで息の合う人は正直初めてである。
「そりゃ、どうも」
「えーっと莉李ちゃん、褒め言葉でいいんだよね?」
「もちろん!莉李仕事以外はそんなにストイックじゃないからね~」
仕事もストイックそうには見えないけどね…。
「ねえ莉李ちゃんのお父さんってもしかして、楚々村紳士の社長さん?」
「陽さんよく知ってますね~。そうです、莉李のパパは楚々村紳士の社長です」
こちらもいまいちわからないと思うので解説を入れておくと、楚々村紳士というのは、日本の紳士服メーカーである。高額なものばかりであるが、その質の良さから、リピーターは国内のみならず、海外にも多数いるという一流ブランド。
というかそれよりだ。
「なんで突然会話に入ってくるんですか、楽望さん」
「お、玉姫ちゃんやっと普通に呼んでくれたね~」
「何かおっしゃいましたか、楽望」
「あ、深宮さんごめんなさーい」
なんか、先輩感が本当にないな、この人。
というかそれより。
「楚々村紳士の社長ご令嬢がなんでこんな普通のコンビニで働いてるの?」
「確かに。わざわざバイトなんかしなくても生活困らなそうなのに」
「生活は全然大丈夫ー!」
「「「そりゃそうだ」」」
楽望と同じことを…同じタイミングで言う…だと。
「私…死ぬべきですかね」
「この一瞬の間にお前は何を思ったんだよ」
「ちょっとした葛藤です…ってそれより、結局なんでバイトしてるの?」
「ずばり、社会勉強だよ!」
「社会勉強と来たか」
「うん!パパに、行ったことないところでバイトをしてみなさいって言われたから」
行ったことないところ…?
「莉李ちゃん、コンビニ行ったことなかったの?」
「コンビニ行かなくても、食べたいものは、言えばすぐ出てきたから!出かける必要なかったんだよ~」
お金持ち基準って…。
ここで何というか一度思考が冷静になった私は思った。
私がこのお店に来たのは開店時間の15分前。
店長と軽くくだらない話をした後、ここで莉李ちゃんとかとまた雑談をしている。その間にきっと15分なんて経っているのではないだろうか。
店内を見ると、レジにこそ人は並んでいないが、お客さんは既に入っていた。
「先輩たち、お客さん、もう入ってます」
「お、全然気づかなかった。ちゃんと仕事しないと」
「莉李初日ですが頑張ります!」
「俺も~」
とはいったが、開店時に入ってきたお客さん以降、特にお客さんは入っていない。
まあ休日だし、こんなもんか。
そんなことを思っていた時、
「多分レジ一台で事足りると思うから、みんなは休憩入ってていいよ」
と御月さんがいったので、私たちは一旦休憩室に入った。
本当にあの人はエスパーなんだろうか。
まあ休憩室で始まることといえばただのありきたりな雑談である。
「え、莉李ちゃん姫乃鷺の生徒会長なの?」
「はい、学校で動くお金のレベルが大きくて、誰もやりたがらなかったので、推薦で私が」
「一年生が選出されることなんてあるんだね」
「多分親の会社の規模で決められてるんだと思います。在校生徒の親の会社の中で楚々村紳士が一番規模は大きいですから」
「まあ、知らない人はいないよね、正直」
なんて話をしているとき、
「あ、そうそう、新しい人もう一人入るから!その人ももうすぐ来るは…」
「こんにちはー」
その例の新しい人は、見事なタイミングで登場した。
「本日から働かせていただく奥堂翔です。よろしくお願いします!」
好青年、その一言だった。
「楚々村莉李、姫乃鷺一年です!よろしくね!かけるん!」
「春高三年、楽望陽で~す。よろしく、奥堂くん」
「里高一年、麓見燈矢です。よろしく」
「同じく里高一年深宮玉姫です。よろしくお願いします」
いつから現れたか、椋さんはいつものようにタッチパネルで紹介していた。
「あ、僕は東済の一年で…」
「「「「東済!?」」」」
東済とは、東済高校、通称東済のこと。玉姫達の住む地域のみならず、全国的にも有名な学力トップクラスの名門。そして創設200年を誇る、伝統校でもある。
「バイトしてて学校大丈夫なの?」
「まあ、自分のためなんで」
「自分のため?」
「僕、家が度のつく貧乏で、今までは学校まで自転車片道二時間で通っていたんですけど、さすがにきつくて定期を買いたいなと思いまして」
本当に度のつく貧乏だった。
「あれ?でも東済って私立…てことはまさか特待生!?」
「まあ、一応ですけど」
私立の鉄板、特待生。東済は学年200人中、成績上位三名までが対象となる。学費、教材費、設備費、研修旅行費もろもろ免除。
「東済の特待生ってことは、全国模試とかも全部一桁?」
「まあ、そうじゃないと怒られるらしいので」
「(らしいって…)」
「大変そうだね」
「でも学校にそんなに行ってないので、実際どのくらい大変かはよくわかっていないんですけどね」
「え、なんで?」
「バイトしないといけないので、学校は留年にならないギリギリの日数しか行ってないんです」
…まじか。
「家計、そうとう苦しいんだね」
「まあでも仕事はどこも楽しいので、不幸とは思ってないです」
「「「「(な、なんといい子なんだ…)」」」」
とこの場の全員が思った。
そんな奥堂くん。やはり頭がいいので仕事もすべて小一時間で覚えたのであった。
そんな時
「あの、深宮さん」
「はい、なんでしょうか?」
「違ったら申し訳ないんですけど、もしかして東済受けてますか?」
「受けてるよ~。試験会場かなんかで見かけた?」
「あ、いえそういうわけではなくて、先生が話していたので、東済の特待生なのに入学しなかった不思議な人がいるって。気になってその人の成績を聞いてみたら、ついでに先生が名前も喋っちゃって。それが深宮さんだったから、もしかしたらと思って…」
深宮玉姫、まさかの東済特待生であった。
「私特待生だったんだ~」
「知らなかったの?」
「元々行くつもりなかったからね。受かったことしか知らなかったけどまさか特待生だったとは…」
「学校側に説得とかされなかったの?」
「あーもう校長総出で面倒だったけど特待生だったからなのか」
「お前...地頭いいのは知ってたけどそこまでだったのか」
「まあ割と真面目に勉強してたんでね」
「じゃあ点数とかも聞いてない?入試の時の」
「聞いてないよ~。気にはなったけど得点開示面倒だったし。え、奥堂君私の点数知ってたりする?」
「うん。先生が進学しなかった奴だしっていいかなっていって教えてくれたから。国語は満点。数学、理科はどっちも95点。社会94点の英語97点だったよ」
合計487点か。東済の問題でよくやったよ私も。
「国語満点ならなんでもいいかな正直。英語そんなに取れてたのか。ちなみに奥堂くんはー?」
「数学と理科は満点。国語97点英語96点の社会95点だったよ」
数学難しかったのに満点とは、さすがに出来が違うか。
「さすがだね~」
「そうそう、入試成績トップ10の人が単純に入学しなかったのって深宮さんが初めてらしいよ」
これで悪評広まったりしたら申し訳ございません、東済さん。
「まあ東済クラスだもんね~」
「なんで入らなかったの?答えたくない事情とかなら無理にとは言わないけど」
「あー。なんか楽しそうではあったんだけど、ちょっと雰囲気ピリピリしちゃうかなって。進学校だからわかってはいるんだけど高校はもう少し緩ーく楽しみたいし。あと、死に物狂いで勉強とかはしたくないかなーって」
大学受験は絶対推薦がいいし。絶対推薦…。
「深宮さんらしいね」
「あとは、もうちょっと友達と一緒にいたかったし」
「お前でもそんなこと言えるんだな」
「相変わらず失礼ですねー先輩は」
「あともう一つ気になってたんだけど、さ」
「はい、何でしょう」
「麓見くんも深宮さんも高校一年生だよね?なんで深宮さん、先輩って呼んでるの?」
「あーちょいちょい聞かれるけど大した理由はないよ。ただ単に私よりここに一週間入ったのが早かったってだけ。あとまあ仕事はほとんど先輩に教わったからって感じですかね」
「そういうことか。てっきり麓見くんが年齢は一つ上なのかと思って」
「あーでも知能的には一つ下くらいの勢いですよ」
「東済合格組に言われても何も言い返せないじゃん俺」
「あ、莉李いないところで仲良く談笑とはけしからん!」
「楚々村さん…」
「はい?」
「来てくれて助かったよ…ありがとう」
「?ろくみんなんでこんなに瀕死状態なの?」
「先輩の学力について話してたらこうなったんですよ」
「それで莉李が来てよかったってことはろくみん、莉李のこと勉強できないと思ってるんですか?」
「少なくとも、その前にいる二人よりはできないと思った」
「かけるんはともかく、玉ちゃんと莉李は同じくらい…」
「それがそいつ、東済特待生で受かってたんだよ…」
「まあさっき知りましたけどね」
「え、そうなの?え、なんで行かなかったの?」
「説明も面倒だし、あの時のこと全部話しちゃうよ、その方が早そうだし」
「回想タイムだね?」
「まあそんなとこ」
「深宮さん」
「...はい」
「本当に東済に行くつもりはないですか?」
「ないです」
「理由は何か?」
「学校の雰囲気が合わないっていうのもありますし、入ってから勉強についていける気もしないですし、ついていくために必死で勉強とかも嫌だからです。あと、友達と同じところに行きたいんです」
「あなたの入試成績、学校のテストの成績を見る限りは大丈夫です。絶対ついていけます。それに高校が違く手も永遠にあえなくはなりませんよ?だからどうかその才能に限界を引かないでチャレンジしてみませんか?」
「いえ、もう決めてます。私、深宮玉姫は里美立に行きます。」
「ご両親は?何か言ってませんでした?」
「母ならすぐそこにいますが」
「呼んでいただけますか?」
「お母さん、校長先生が」
「はーい」
麻姫、校長室に入る
「玉姫の高校の話でしたっけ?」
「はい。深宮さん自身の将来を考えると、里美立よりも東済の方がいいのではないかと思いましたのでお母様のご意見も伺いと考えて本日お呼びたてさせていただきました」
「私はこの子を全面的に信用しています。玉姫が里美立に行きたいというのなら、それがこの子にとっての最善の策だと私も思います。何も知らないから私たち保護者が道を示すなんて場合もあるかもしれませんが、玉姫はそんなことしなくても自分の道は自分で決められる、そういう子です。だから私は玉姫を東済に通わせようとは思ってないです」
「そうですか」
「話はこれだけですか?」
「ええ、本日はお呼びたてして申し訳ございませんでした」
「とまあこんな感じでしたね」
「玉ちゃんのお母さんかっこいいね~」
「本当に深宮の親なのか?」
「私の親にどんな想像してるんですか?」
「いや、深宮以上に毒舌な人かと」
「毒舌は親のせいです。父親がとんでもなく鬱陶しい人なので」
「莉李のパパも!」
「莉李ちゃんお父さんにツッコミ要求される?」
「ツッコミ?は要求されたことないかなー」
「じゃあ大丈夫。それは鬱陶しいに入らないよ」
「玉ちゃん…莉李人のそんなに絶望した顔初めて見たよ」
「深宮家で一週間も暮らせば誰だって味わえるよ大丈夫」
「(深宮にも、闇はあったんだな…)」
深宮玉姫という後輩に、今までよりももう少しばかり優しくしようと決意をした麓見燈矢であった。
「ただいま」
「玉姫おかえりなさ~い。ご飯できてるわよ」
「ありがとうお母さん」
「おかえり玉姫」
「げ」
お父さんもいたのかよ。
最悪。
「今日どうだった?」
「新しい人が二人来たよ。東済の人と姫乃鷺の人」
「じゃあ玉姫同級生かもだった人?」
「そうなんだよ。あとこれびっくりしたんだけど私東済の特待生だったんだって」
「え、そうなの?あの時校長のとこなんか行かないで東済行かせればよかった」
「ねえ…」
「入試の得点487点だって」
「あんた謎に勉強してたもんね」
「ね…」
「凜と結衣乃としかつるんでなかったからね」
「そーそー」
「ねえお父さん無視して進めないでよ話」
「あ、今日お父さんの話もしたよ?」
「え、どんなっ!?」
「お父さんと一週間関わると誰でも絶望を味わえるよって話」
「え、なんか本当お父さんの存在意義どっか行っちゃってるよね」
「「昔からじゃない?」」
「もうこの親子嫌だ…」
さつきストア 第四買 お嬢様と貧乏学生
ご覧いただきありがとうございました!
莉李ちゃんと翔くん。全く真逆の境遇の二人を出させていただきました。
学力もある意味真逆かもしれませんね
(莉李ちゃんは経営特化型、翔くんは勉強というジャンルでは最強ですから)
店長は仕事をせず、お父さんは安定のうざい絡み、そんなところは通常運転でこれからも頑張りたいと思います。
では後書きもこの辺にして、皆さん次話か次回作でお会いしましょう!