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短編集 冬花火

イコン

作者: 春風 月葉

 それは私の写し身とも呼べる存在であり、また私の理想を反映した影のようなものである。

 インターネット上に存在するもう一人の私は、私の汚い部分を隠し、綺麗なところだけを写しとったものだ。

 それは鏡が外見だけを写し、心を写そうとしないのと同じで、もう一人の私が上辺だけの存在だと主張しているようで、現実に存在する私は胸の奥に小さな痛みを感じる。

 もう一人の私は愛らしい猫の絵のアイコンで自分をアピールしている。

 そこに写る猫の絵こそが、もう一人の私にとっての外見なのだろう。

 私が作り出したはずのその写し身を象徴する愛らしい絵を見ると、意味もなく悲しい気持ちになる。

 アイコンの語源は聖画像らしいが、これは絵を通してその奥に存在するイエスを崇拝するためのものだったらしい。

 ではこの愛らしい猫の絵を通して、その奥にいる醜い私が見透かされているのだろうか?

 もう一人の私の綺麗な言葉は、この私の汚い言葉を削り取っただけの空っぽの言葉だ。

 私は自分の持つ理想の人を演じているだけなのだ。

 ではこれは誰だ?

 もう一人の私?

 違うだろう。

 では私とはなんだ?

 現実の私とは、もう一人の私とは、本物の私はなんだというのだ?

 私は私を失くしてしまった。

 私は仮初の自分を取り繕い、今もアイコンの裏で涙を流している。

 あぁ、私は何処?

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