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ごまかし  作者: 南 音葉
1/1

また桜かよ!!と思った方はごめんなさい。

連載に挑戦。よく分からないけど、お付き合い頂ければと思います。

まだまだ未熟で勉強中の身ですから、暇つぶし程度にあたたかい目で読んで下されば幸いです!

梅がこぼれる。

どこまでも澄んだ空の中で。


「鈴秋さぁん、そこ結んでぇ」

「はーい」


肌寒い風が通り抜けた。


「会長、ここで宜しいでしょうか。」

「あ、いいと思うよー」


まだ太陽は少しの暖かさしか出してくれない。

3月、それも初旬。立春はとっくに終わったとは言っても、まだ冬の面影は薄らと、存在を主張している。


「じゃあ、朝の仕事は終了ねー。……ふぅ。卒業式の看板って結構重いんだね。疲れちゃったよー」

「仕方ないでしょう、この学校の生徒会は会長しか男性がいらっしゃらないのですから。ちなみに卒業式では無く卒業証書授与式です。」

「大変でしたねぇ、かいちょぉ。まぁ、たまにはそういう面倒臭いコトもやんないとぉ。」

「あはは、皆手厳しいね。でも会長も、たまには役に立ちますね」


何も遮らない青い背景に、彼の困ったような苦笑と溜息が響いた。そして、やがてそれは楽しそうな笑いに変わる。

彼ら……いや、彼女らは、他愛のない話をしながら、また校舎に帰っていった。


- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -


「ねぇ、結奈は結局どうするの?」

「ん、何を?」


寒い校門前から教室に帰り、鞄をロッカーに入れ、軋む椅子に腰を掛けたら、唐突に尋ねられた。

どうするの、では漠然としすぎていてわからない。

困った結奈は智絵に聞き返したのだが、「もうわかってるでしょ、そんなの」と言われ、更に戸惑っている。

今日は、中学三年生の先輩たちの卒業式。

まだ一つ学年が下の私たちには、特にイベントはない筈。

強いていえば、生徒会の仕事くらいで。

それも大したものでは無い。卒業式の立て札を設置して、マイクの受け渡しやBGMのタイミング管理、音量調整、花道の準備や在校生の誘導くらいの、雑用だ。

送辞は副会長が読むし、私が特に目立つことは避けた。

果てさて、何かあっただろうか?


「もー、とぼけないでよぅ。あんたの告白よ、コ、ク、ハ、ク」

「……あぁ、そんなのもあったっけ。」

「随分雑ね。ずっと片思いしてる先輩がいるんでしょ?」


誰だかは知らないけど、と付け加えてから口を閉ざし、こちらを見つめてくる私の親友。


思い出した。

私は、確かに恋に落ちた。過去形か現在進行形かは自分でも分からないけれど。

親友にも、言えないほどの真剣な恋。

……まぁそれも、今日で終わる。

先輩は_______高山広樹先輩は、今日で巣立つのだもの。

同じ吹奏楽部で、一緒の楽器を演奏していた先輩。優しくって、冗談も面白くて、演奏も素敵で、何よりかっこよかった。

笑顔は、幼くて可愛くて……

ううん。

告白したところで、年下の彼女なんて高校デビューを果たす先輩には重りでしかないでしょう。

まず、快い返事は頂けないと思う。


「……しないよ、そんなの。一過性のものだし、恋愛感情なんて。」

「その割には、今返事を返すのが遅かったですけど?」

「悩んでたわけじゃないよ、自分の中で結果なんてもうとっくに出してたし」

「意地張っちゃって。馬鹿ねぇ。」

「意地なんて……!素直に言っただけよ」


私がムキになって言い返すと、彼女は溜息をつき、茶がかった黒のショートヘアをくるくると指に巻いた。

ふわりと爽やかな桜が香る。


「後悔しないでよね、結奈。今日を逃したら次は無いんだよ。」

「分かってる……私、仕事あるから行く。じゃあね」


生徒会の集合は本当はあと10分後だ。けど、この場から消えたかった。

ガタンと、音を立てて振り向かずに大股で廊下に出た。

智絵には、きっと逃げたって思われただろうな。




_______本当は、私だって先輩と……




ううん、ダメだ。先輩はこれから新しい道に進むんだから。迷惑だよ、どっちにしろ。


下らない考えを振り払うように、私は式の会場に向かって廊下を駆けていったのだった。

中学の卒業ってどんな気持ちなんでしょうね。

次話は未定ですが、近日中には公開します、お待ち下さい。

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