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22/22

迷宮22)防衛を頑張らないと?

~前回までのあらすじ~


 ありえないぐらいの方向音痴な宮路芽衣は、交通事故で異世界転生!

 よりにもよって、方向音痴なのに迷宮そのものに生まれ変わってしまいましたっ。


 最初は小さな迷宮だったけど、みんなのおかげでえっちらおっちら部屋数増えてちょっとした迷宮に育ちました。

 そして雑貨屋も始めたのですけど、魔物の襲撃がっ・゜・(ノД`)・゜・。

 なんとか、邪悪なスライムを良い子のスライムさんに戻せたのですけど……。


『こんな感じで、元に戻ったかな?』


 わたしは、迷宮の隅々まで意識を走らせる。

 邪悪だった巨大スライムに溶かされた迷宮は、迷宮パワーでもりもりっと修復できました。

 レンガを土の中から作り出すのは結構さくさくと出来るから、迷宮パワーはほとんど使ってなかったり。


『こびっ』

『お花? そうですね、ちょと植えてみましょうか』


 コビットさんが、花の種が入った皮袋を手に、迷宮の周囲にポンッと転移していく。

 やっぱり、コビットさんは、迷宮の中から外には確実に転移が出来るんだなーって思う。


 邪悪なスライムに襲われている時はわからなかったのですけれど、迷宮の外では転移を使えないはずのコビットさんが、外周にポンッと現れたのですよね。

 よくよく考えると、外周は迷宮の外だから、コビットさんが出現できるのは不思議。

 すぐそばだったからなのかな。

 それとも、ルーくん達の町ぐらいまで、転移できるようになってたりするのかな?

 

『ぷにぷーに、ぷにっ』

『スライムさんも種をまいてくれるの? ありがとう。でも、花の種持てるかな?』


 スライムさんの場合、手がないのですよ。

 体の上に乗せて運ぶことは出来そうなのですけど、 


『ソード、こびこびっ』

『そっか、ソードさんが持ってあげるのね。それならお願いするね』


 ぷにぷに、こびこび。

 スライムさんとソードさんが、仲良く種を蒔きにいく。

 

 外周もわたしの意識が繋がっているから、土を掘り起こすのはわたしが出来るよね。

 スライムさんとソードさんが向かったほうの外周に、意識を向ける。

 外壁のすぐそばの土をぽこぽこっと掘り起こしてみると、レンガを出すよりも簡単に耕せました。


 コビットさんのほうにも意識を向けてみると、慣れた手つきでもうすでに土をスコップで掘り起こしてる。

 うん、やっぱりコビットさんのほうはお手伝いしなくても大丈夫です。


 するすると意識を温室のほうに移動してみると、すぴーすぴーと気持ちよさそうな寝息が聞こえてきました。

 温室の真ん中に、巨大スライムのプニさんが眠っています。

 巨大スライムさん、ううん、いまは中くらいのスライムさんかな?

 分裂して、八匹に分かれてもらったのですよ。

 あのままの大きさですと、迷宮の中に入れませんでしたし。

 そのまま迷宮の外にいたら、冒険者の皆さんに確実に見つかって退治されちゃいますしね。


 プニさん、いつも寝てるなぁ……。


 一杯戦ったせいなのか、邪悪な存在から元に戻れた反動なのかな?

 プニさん、迷宮の中でも一、二を争うぐらいよく寝ているのですよ。

 スライムさんよりも大きいから、小鳥さんとかがその上に乗って「プニプニですわ~」ってお昼寝したりしてるの。

 わたしも眠くなったら、お昼寝させてもらおうかな?

 青い夜以外に眠くなったことはないのですけど。




『迷宮さま、ルーくんが来たケロッ』


 ケロケロさんが楽しそうにわたしを呼びました。

 いそいそと意識を迷宮の上のほうに持っていくと、うん、ルーくんがこちらに走ってきています。

 

 いつも通り、ケロケロさんが質問して、ルーくんはわたしのそばまで迷うことなく走ってくる。

 うーん、やっぱりちゃんと、防衛が働いているきがするのですけど。

 なんで邪悪なスライムさんたちには通じなかったのかな。


「迷宮さん、大変なんだ。当分の間、迷宮を閉じておいたほうがいいかもしれない」


 ルーくん、金色の瞳にちょっと困ったような色を浮かべている。

 何があったんだろう?


「旅商人から聞いたんだけど、いま、この国の各地で魔物が大量出現してるらしいんだ」

「えっ、村……じゃなくって、町のみんなは大丈夫なのです?」

「うん、それはね。田舎だし、ここら辺で魔物なんてあんまり見ないしさ」

「それならよかったのですよ。魔物が多く出現した理由はもうわかっているのです?」

「その辺の情報はまだ聞かないね。でも、これからは冒険者が各地の魔物退治に行くことが増えると思うんだ。そうしたら、迷宮さんのところに来る冒険者が減る」


 ふむふむ、確かにそうかもです。

 魔物の討伐は、大規模なものならこの国の騎士団が向かいそうですけれど、それ以外の魔物には、冒険者が対応に当たりそう。

 

「冒険者さんが最近はとても多く来てくれていましたから、少しぐらいは減ってくれたほうがいいかもです」


 入り口で順番待ちしてもらう日もあるぐらい、大盛況ですからね。

 少し冒険者さんが減ってくれたほうが、迷宮の中で別々の冒険者さん同士がエンカウトしなくていいのですよ。

 また以前のように、トラブルになってしまっては大変ですからね。


「迷宮さん、冒険者が減るってことは、その分、盗賊に狙われやすくなるんだよ?」

「盗賊?」

「うん。ここって冒険者が多くいるから、いまは狙われないけどさ。下手に突っ込んできたら冒険者に捕まるだけだしね。でも、各地の魔物討伐に冒険者が赴いたら、手薄なここに盗賊団が襲撃してきてもおかしくないでしょ」


 ルーくんがちょっとあきれ気味に言うのですけど、盗賊になぜ狙われるのでしょう。

 前世ならともかく、いまのわたしはレンガ造りの迷宮さんですし。

 狙われる要素がないと思うのですけど。


 あ、女神像の中にいるから、一応、女の子風ではあるのかな。

 でも、もしさらわれそうになったら、意識を迷宮に戻せばいいだけですしね。

 わたしの意識の入っていない女神像は、本当に石の石像で。

 白い石で作られた石像は石の塊ですから、とっても重いのですよ。

 女神像を持ち去られる前に、レンガを動かして迷宮から出られなくしてしまえば、盗まれることも無いのです。


「……迷宮さん、本気でいってる? この迷宮って、財宝の山だよ。コビットさんの作る各種薬草はもちろんだし、永久炎華なんて、普通はめったに手に入らないんだよ?」


 そういえば、高く売れるとか何とかいっていたような気がするのですよ。

 ガラス瓶に入れて、雑貨屋さんにも二つほど置いてあるのですが、売れてなくて。

 なので、あんまり高いお宝というイメージがありませんでした。



「そうしますと、迷宮は閉じるとして、雑貨屋さんも閉じたほうがいいのかな」


 突然出来た雑貨屋さんなのに、冒険者の皆様から、特に何も聞かれなかったのですよね。

 初めて来る冒険者さんはそうゆうものだと思ってくれていそうですけれど、以前からきてくれていた冒険者さんたちも、何も疑問を口にせずに利用してくれているのです。

 ちょこっと不思議ですけれど、盛況なのは良いことなので、気にしなくてもいいかな。


「うーん、どうだろうな。魔物が多く現れて、ポーション類はいままで以上に必要になるだろうし。それに、いやな噂もでてるから、ポーション類だけは多めに作っておいたほうがいいかもしれない」

「嫌なうわさ?」

「治癒魔法を使える魔法使いが、魔物に特に狙われてるらしいんだ。だから、怪我をしたとき治せるのが、ポーションぐらいになりそう」

「それは、結構大変なのでは……」

「うん……」


 魔物が多く出現しているなら、怪我を負う人もきっと多いのですよ。

 なのに治せる治癒術士が狙われてしまうなんて。


「わかったのですよ。少しの間迷宮は閉じて、雑貨屋さんだけ、営業しておくのです。迷宮の防衛強化もしたかったので、丁度よいのです」

「防衛強化? どんなことをするの」

「それはまだ考え中なのです。ルーくん、よい案はありますか?」

「うーん、そう聞かれると悩むな。普通の迷宮だと、魔物で溢れてるんだよね」

「わたしの迷宮は、一応は魔物系なのですけど……」


 わたし筆頭に、魔物の宝庫にもなっていると思う。

 迷宮妖精のコビットさんとソードさん。

 ぷにぷに柔らかい癒しのスライムさん。

 肉弾戦に強いゴーレムのゴーレムさん。

 悪い人を門前払いしちゃう門番蛙のケロケロさん。

 ハーピーになった小鳥さん達はもともとは小鳥だけれど、いまはやっぱり魔物だよね?

 仲間になったばかりのプニさんも、巨大スライムさんですし。

 みんな、優しいけれど、魔物なの。たぶん。


「みんなは確かに魔物かもしれないけど、人間襲わないでしょ。もっとこう、邪悪なスライムさんレベルの魔物じゃないと」

「うぅっ、それは辛いのです……。邪悪なスライムさんですと、わたしが溶かされちゃいますし。見境無く人を襲ってしまうと、危険なのですよ」


 迷宮パワーがすっごくもりもりに溜まっていますから、たぶん、とっても強い魔物さんも作り出せそうなのですよ。

 邪悪なスライムさんも、生み出せるんじゃないかな。

 でも、人に危害がいってしまったら、討伐されちゃいますからね。

 

「普段は無害で、いざって時に強い魔物……って、いまの迷宮さんたちか」

「そうなっちゃいますよね。いままでと変わらない状態ですと、悪い魔物と戦えないのです」


 邪悪な巨大スライムさんとか。

 ルーくんのおかげで元に戻せたのですけど、迷宮のみんなだけですと、きっと、被害がもっと大きかったはず。

 

「そうしたら、壁を鉄に変えてみるとかはどうかな。いまより強固になりそう」

「鉄にですか? いわれてみれば、確かに固そうなのですよ。ちょっと、試してみましょうか」


 わたしは、迷宮パワーをむむむーっと使ってみる。

 前世のイメージで、鉄の感じを再現出来るように頑張って、土を見つめる。


 固くて冷たくて銀色で、ちょっとやそっとでは、壊れない感じの……。


 

 もこもこっ、もこもこもこもこっ。


 土が、わたしの意思にそって形を作り始める。

 大きさは、迷宮のレンガと同じ。

 でも、レンガがするっと一瞬で出来上がるのに対して、鉄の壁はなかなか形が上手く作れない。

 むむーっと、迷宮パワーを増してみる。

 

 もこもこもこ……ぼこんっ。


「あ、出来上がりましたっ」


 鉄の塊が一個、土の上に出来上がりました。

 レンガとは違ったつるっとした側面は、鏡みたいに周りの風景を映し出しています。

  

「迷宮さん、鉄のレンガは一個だけ?」

「もう少しというか、これで壁を作っていくのですよね……」


 なんだろう。

 普通のレンガと違って、とっても作り辛いのですよ。

 

 むむむむむーっと迷宮パワーを土にこめると、さっきよりは早く、レンガと同じ大きさの鉄の塊が出来上がりました。

 でも、これを、積み重ねて壁に…………。


「迷宮さん、とっても辛そうだけど、大丈夫か?」

「……だめかもしれないです……」


 鉄の塊だからなのかな。

 レンガみたいに一瞬で壁になってくれないし、ぜんぜん、持ち上がらない!

 本当は、レンガだってそれなりの重さがあるはずなのですけど、こちらは重さを感じないのですよ。

 最初の頃は結構重かったのですけど。

 なので、もしかしたら、迷宮がもっともっと育ったらこの鉄の塊もさくさく動かせるのかもしれません。

 でも、いまは、無理。


「そうすると、あとは、壁をぐぐっと高くしてしまう、とか?」


 ルーくんが、迷宮の壁を見上げる。

 そういえば、迷宮を大きくしていったのですけれど、壁の高さは最初から変えてません。

 大体、三メートルぐらいかな?

 梯子なんかを使えば、人間でも普通に登れる高さかもしれません。

 邪悪なスライムは、壁をよじ登ってきていましたし、高さをぐっと高くしたら、中に進入し辛くなるかも。


 わたしは、迷宮パワーを迷宮の外周にぐぐっと張り巡らす。

 外周の地面がぽこぽこ盛り上がり、どんどんレンガが出来上がって外壁が下から押し上げられて高くなっていきます。

 すっごく早くて、なんだかたけのこみたい。


「迷宮さん、一瞬で上が見えなくなったね」

「やりすぎちゃったかな?」


 うーんと背伸びしても、上のほうが見えません。

 意識を上のほうに持っていけば、いつもどおり迷宮全体を見渡せるのですけど。

 さっきまで重たすぎる鉄の塊を作っていたから、ついつい、迷宮パワーを入れすぎちゃった気がします。


「いいんじゃないかな。これなら登れないだろうし。あとは、溶かされないようにしたいけど、外側だけ硬くすることって出来る?」


 登ってくるほかに、邪悪なスライムはレンガをあっさりと溶かしてましたからね。

 外壁だけでも硬く出来れば、防衛対策はかなり進みそう。


 わたしは、レンガの外壁に意識を集中してみる。

 鉄の塊にしてしまうとたぶん、動かせなくなっちゃうから、表面だけを変化させたい。

 スライムの攻撃にも溶けない様な、迷宮のみんなを守ってくれる、かたーいかたーい感じに……。


「どう?」

「出来たような、わからないような……」


 うん、迷宮パワーは注ぎ込んだのですけど、見た目は変わっていないのですよ。

 でも、なんとなく、以前とは違う感じがするのです。

 すべすべ素肌に、日焼け止めを塗ったような?


「そっか、じゃあ他にも出来ることをどんどん考えて、迷宮さんの迷宮を守っていこう」


 ルーくんの言葉に、わたしはこくこくと頷きました。

 出来れば、ずっと平和であってほしいのです。


 お久しぶりです。

 少しずつ、また、更新していきたいと思います。

 アルファポリス様のほうで、1000文字程度を先に更新→ある程度溜まったら、なろうを更新、という感じになります。

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