抗ってみますかねえ
今は春。
入学シーズン。
だが、こんな綺麗な桜を見るのももう最後となるのか。
今年の冬、大規模な戦争が起こる。死神との。
優斗や藍までもがこの学校に来てしまった以上、これから怒る戦争に巻き込まれることは、目に見えている。
「お前らが俺に連いて来ちまった以上、いずれ知ることになるさ」
淡々と答えた。迷いもなく、躊躇いもなく。
「…そっか」
__________静寂。当たりを静寂がつつむ。
桜が舞う。
風が吹く。
__…だが、本当にこんなことを言って良かったのか?
__いざ戦いが始まったとき、俺はこいつらを護れるだろうか。
__いざとなったら自分の生命を優先しないだろうか。
様々な疑問が胸を疼く。
刹那。
その静寂を彼女が破る。
「あーもー!! 何なのよ、二人して黙り込んじゃって!! ほら、行くよ!入学式に送れちゃうじゃない!!」
藍が罵声を上げ、優斗の制服の袖を引っ張っていく。
「それと鵠也!!」
「うぉっ!? な、何だよ…」
「何考えてんのか知らないけど、鵠也と一緒の高校に行くってのは私達自身が決めた事だから!! だから何かあっても私達の責任、いい!?」
細い人差し指を立てて言う藍。
「…っふ、はは…っ」
「な、何よ…。私変なこと言った?」
「別に。何でもない。ま、お前の言うとおりだわ」
鵠也は歩き出す。
通学路を。
破滅への道を。
その先にどんな運命が待っていようと、彼は歩き続ける。
どんなに長くても。
どんなに遠くても。
「んじゃまあ、俺もちょっと抗ってみますかねえ」
桜花爛漫から、花びらが一枚零れ落ちた様に見えた。