舞架
2024.12.22.
-大阪・神戸奪還作戦-
「おいテメエ! 何で裏切った!? まさか今まで過ごしてきた日が全部演技だったとか、ふざけたことを言うつもりか!!?」
「…そんなわけないじゃない。私だってできることなら、こんなことしたくなかった。だけど、だけど…仕方ないじゃない……!!」
彼女は涙を滲ませながら小さな手で拳をつくる。
「鵠也を、鵠也を救うために……!!」
頬から涙が伝り、潤む瞳が鵠也を見つめる。
鵠也は驚いた様なショックをうけた様な、複雑な表情を浮かべたまま刀を構え直す。
「詳しい説明を聞かせろ...」
「駄目。今は時間がない。でも鵠也。二つだけ貴方に言わなければいけないことがあるの。
一つは貴方が持ってるその刀を絶対に手放さないで」
彼女は片手を広げ、鵠也の足首についた鎖をキツく締め、自分の刀を構える。
「ぐぁっ!!」
「もう一つはこの戦いの後、鵠也には一時の平和な時間が流れるわ。でもそれも一時。
貴方にとって平和な冬は今年だけ。
来年の冬、私と貴方はもう一度会える。
だけど今度は敵同士として」
彼女はもう涙を流していなかった。
「どういうことだ…。お前…一体何を企んで…!」
「この刀は菊一文字。嘆きの刀と呼ばれた妖刀。桜花爛漫と並ぶ、この世界最強の妖刀」
「なんで、お前がそんな…。それは消えた筈の、名刀…...」
鵠也の言葉を聞いた彼女は悲しげに目を細める。
「そう...やっぱり知らないのね。貴方が持っているその刀。一緒に戦ってきて確信したわ。
その刀…桜花爛漫でしょ?」
「な…!!?」
「戦いの時、その刀から桜の花びらが止まることなく散っていたわ。…ほら、今も少し」
「そんなこと、戦ってる俺にだって分かってる!!」
声を張り上げる鵠也を余所に、彼女は黒いゲートを作り、漆黒のマントを羽織る。
「話したかったのはそれだけ。さよなら鵠也。また会いましょう」
彼女は振り向きもせず、ゲートの中に足を踏み入れる。
「待て、ちゃんと説明しろ! 何で裏切った!?
行くな、舞架!! 舞架!!!」
必死に血まみれの手を伸ばすも、その手は彼女に届かなかった。