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クレア

6月なのに気温が8℃しかない…寒い(´・ω・`)

----クレア 視点----48時間前


「時間が無いので端的に説明しますから理解できない場合はアントンに質問してください。現在私達は高度1万3000メートルを飛行中ですがUnknownに捕捉されました。こちらからの通信に反応なし、またIFFにも反応はありません。先程UnknownからAAMの発射を確認、現在回避行動をとっていますが恐らく撃墜されます。よって功樹君とアントンは自力でロシア国内から脱出を行ってもらいます。手段は問いませんのでアントンは全力で功樹君を護衛しノア本部・箱根基地に帰還しなさい。以上通信終了」


 早口で要点だけ伝えた後で通信をきると、アラートが鳴り響く中でコクピットへと急ぐ。


「状況は?」


「回避行動中です。対ミサイル防衛を行っていますが水平線以遠からの攻撃です……この機に搭載している防衛装備では対抗は困難かと」


「緊急降下して! 海上への不時着備えるのよ」


 生きていればの話だけどね……。内心で自嘲気味にぼやいてから、それでも生き残る為に頭を働かす。不時着に成功したとして次に襲い掛かってくるのは恐らく───。


「更にUnknownを捕捉!! 10時の方向、数は……5、12、15機!! クソっ! ステルス機か!? Unknownより、高速の飛翔体が分離!! ミサイルだと思われます!!」


「回避して!!」


「無理です!! 間に合いません。ミサイル来ます!!」


 思わずぐっと目を瞑る。だが想像していた衝撃は訪れず、相変わらず鳴り響く耳障りなアラートを感じて目を開く。緊張で張り付いた喉から声を搾り出すようにしてパイロットに話しかける。


「外れたの?」


「いえ、ミサイルは機体の至近を通過、後方のUnknownが発射したミサイルに向かっています……」


「敵味方識別に反応あり、前方の機体はロシア国防宇宙軍所属機です」


「後方のミサイル、撃墜されました。Unknownは急速離脱していきます」


 助けれられた? なぜロシア軍機が我々を助けるのよ。しかも国防宇宙軍なんてこんなところを飛んでいるような部隊じゃない。一体、何がどうなっているのか……。


「宇宙軍機、真横に来ます」


 ハッとして窓から外をみると、そこには資料でしか見たことない最新型のロシア軍機が飛行していた。しかも、機体の何処をみても国旗も部隊を識別するはずの徽章も描かれていない。ただ真っ黒な機体がそこにいる。


「なるほど……、そういうこと」


 あの機体……、それどころか私たちを助けようとしているのはロシア国防宇宙軍ではない。という事は次に通信を送ってくるのは───。


「恐らく、次は戦略ロケット軍の周波数帯で通信がくる筈よ」


「はぁ……。あっ、来ました! 戦略ロケット軍からの通信です。これは───」


「洋上の回収ポイントでしょ? これより機体を破棄します! 各搭乗員は脱出の準備を開始しなさい」


 もしも、私の推測が当たっていれば功樹君達は相当危険な状況におかれている筈だ。一刻も早く救助しなければ救出部隊の手によって謀殺される事になる。





----クレア 視点----4時間前



 機体を放棄して海水浴を楽しんでいた私と部下達は、慌てて識別マークを消したと思われるロシア海軍のパワースーツ母艦に救助されて以来、ずっと艦内の一室に軟禁されている。部屋の広さと丁度品からみて高級仕官用の一室なので、高待遇といっていいだろう。


「失礼……」


 ノックの音と共にロックされていた部屋の入り口が開き、階級章もなにもついていない軍服をきた男が部屋に入ってきた。男はそのまま私の対面にある椅子に座り、手に持っていたファイルを差し出してくる。


「受け取る前に質問が」


「なんですか?」


 男はファイルを机の上に投げ置くと、やや緊張した面持ちでこちらを見つめてきた。


「まぁ、質問というより確認です。なまりのない流暢な英語、識別のない航空機やパワースーツ母艦、それに階級章のない軍服、あなた方はロシア国内軍……。通称、内務省軍の極秘部隊ですね?」


「…………」


「規模を考えると、国家維持部隊の所属ですか?」


「…………」


 男は無言のままだが、この場合は肯定と受け取っていいだろう。机の上のファイルを手に取り目を通すと軟禁されていて入手できなかった情報が克明に記載されたいた。

 一緒に入っていた記録メモリを再生する為に目線で男が持っている個人端末を催促する。こんな何が入っているか分からない代物を自分の端末で再生なんて絶対にしたくない……。


「どうぞ」


 手渡された端末にメモリを挿して再生を開始する。中にはアリス計画の詳細と功樹君が行動を共にしているチェルノボグ戦闘部隊の記録と隊員の詳細な資料が入っていた。このメモリは是非とも持って帰りたい……。


「これは頂いても宜しいのですか?」


「どうぞ。それとアラカワ氏が現在立て篭もっている、旧モスクワ市街地の政府関係者が脱出用に準備していた地下通路の地図、必要になると思われる対EMP装備のパワースーツと戦闘用装備を準備してあります」


「ずいぶんと気前が良いですね。そちらの目的は?」


「世界的な要人の救出です」


「我々の機体を撃墜したと大統領に嘘の報告までして、目的が要人の救出とは……信じられませんね」


 男は今度はハッキリと困った表情を浮かべ、天井を見上げると溜息をつきながら話はじめた。


「目的は国家の維持です。現在、わが国が大変な危機を迎えております。新世界を呼称するテロリストが政府上層部に侵入しており、すでに軍の高官数名を含める政府関係者に逮捕者が出ています。さらにアラカワ氏に知られた情報が外部に漏れた場合、連邦を構成する国から離反国家が現れるでしょう……。それを武力で鎮圧するとなれば───」


「国連が介入してくる……。そしてその国連は功樹君の母親である美紀さんの影響力が計り知れない」


「はい。その場合、第三次世界大戦が勃発することでしょう、ロシア連邦対全世界という最悪の悪夢が……。仮にアラカワ氏が単独で脱出に成功した場合も、恐らく絶望的な報復措置をとられる事になると考えています」


 確かにこのファイルを読んだ限りでは、アリスちゃんが誘拐された時に新世界が包囲網を掻い潜って逃走できた理由はロシア海軍の協力があったせいだからだ。それを知った時、功樹君は男が言うように間違いなく報復措置をとるだろう。

 それも最近は方法を変えてきている……、ノアの衛星ネット放送でロシアを敵対国と認定するプロパガンダ放送でもしようものなら大衆心理をどのようにも操り始めることだろう。しかも化粧品の売り上げ効果をみれば、それはもはや洗脳に近いものになるはずだ───。


「わかりました。それでは改めてそちらの目的と要求は?」


「目的はアラカワ氏の救出と無事の帰還。要求は、アリス計画と新世界に関係する全資料と関係者の引渡し、また新世界に関係する場合のみ国家維持部隊の指揮をノアに委譲するかわりに報復措置をとらないで頂きたい」


「わかりました、条件を受諾します」


 私の言葉に男はやっと表情をゆるめた。さてと、それじゃ資料を参考にして脱出方法を考えないと……。功樹君がいる地下鉄の駅までは地下通路を経由して途中の通路を爆破すれば通気口を通って合流できる。

 問題はその後ね。チェルノボグ全員をつれて逃げるとなれば国家維持部隊に早速協力してもらわないといけないかもしれない、合流した時点で美紀さんにも連絡して隊長達に援護を───。


さてさて、これで全員がどのような状況に置かれているかがやっと出揃いました!!



次回、クレアが考えた脱出作戦とは!?

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