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地下鉄防衛戦 (2016/06/01 改)

続きを大幅に改良しますので、このお話から変更しています。

----荒川 功樹視点----


 新世界からの攻撃が始まり、俺のいる旧モスクワ駅付近は敵の砲撃が着弾する衝撃と音が鳴り響いている。先程の通信班の人の報告が正しければ、付近にはかなりの数のスーツが展開しているはずだがここはもつのだろうか? いや、それ以前に各隊と連絡が取れない状態で防衛戦なんでできるのか? そんな心配が表情にでていたのか、ユリヤ大尉がどこか愉快そうな声色で話し掛けてきた。


「ヴォルカ、お前は恐らく父親の大佐から現代戦の方法を学んでいるな?」


「まぁ……そうですね。少し前に参加した戦いでもパワースーツを主力とした現代戦を経験しました」


「ふむ。では、お前が生まれる前の世界、つまりパワースーツが無かった150年前はどのように戦争をしていたか知っているか?」


 150年前の世界って事は俺が死ぬ前の世界でいいのか、それとも『この世界』の150年前の話をするべきなのかどっち基準で話すべきだろうか。まぁ、スーツが無い時点でどちらでも大して変わらないから死ぬ前の世界を基準にして話すか……。


「圧倒的な航空戦力で制空権を奪取した後、航空支援を受けた地上部隊が重要目標を占領していく形だったと思います」


「ふんっ、70点というあたりだな。正確には海上戦力を含めた全ての部隊が関係してくるのだが、それは今は置いておこう。それでは次の問題だ、敵国と圧倒的な国力差がある国が防衛戦をする時はどのように戦ったと思う?」


 一体大尉が何を言いたいのか理解できない。圧倒的な国力差? そんなもの今の俺達のようにゲリラ戦を行うしかないだろう。というか俺が知りたいのは戦術や戦略云々ではなくてどうやって他の班と連絡を───。

 まてよ? 150年前に無かったモノといえば他にもある。例えば俺が持っている個人端末……こんなモノは俺が生きていた世界ではなかった。あの時代は端末の代わりに携帯電話が普及していた───、そうか!! そういう事か。


「電話回線……」


「今回は100点だ。やはり天才というのはどこか変わっているな、普通は今の会話で『電話』という単語には行き着かない。むしろ私は研究者であるお前が過去の遺物である電話を知っている事に驚きだ」


 電話回線など使われなくてどれほどの時間が経っているか俺にも正確な所は分からん。前に母さんの部屋で見た事のある資料では、2020年頃に極僅かな非常用回線を残して民間の音声通信は全て衛星ネットワークに移行されたはずだ。それから約80年、確かに俺のような年齢の人間が電話を知っている事自体が大尉の言うように珍しい事だろう。


「本来なら何回か問答をするつもりだったのだが答えに辿りついたなら良い。現状としては通信班の人間が、旧モスクワ市街に張り巡らされている電話回線を使用して他の部隊との通信を試みている。状況は予想通りに推移しているからそんな心配そうな顔をするな。それよりも私の方からも聞きたい事がある」


「なんですか?」


「先程の発言の事だ。ノアで参加した種族間戦争とはなんだ?」


「詳しい事は母の許可がないと教えられませんが、そもそもノアの設立から説明しますと───」


 俺は大尉にノアの本当の姿を説明する。元々は避難場所を探していたがスケールが大きくなったという事や、箱根基地がノアの本社ではなく実際は異世界に繋がるゲートを守る為の要塞だという事も言葉を濁しながら教えた。

 まぁ、この辺はノアに正式に加入すれば嫌でも知ることになるから問題はないだろう。さらに突っ込んで異世界G-88での人間種以外の種族との交流、他種族同盟の話をすると大尉は難しい顔をしながら俺の言葉に耳を傾けてくれた。

 相変わらず管理棟の近くに着弾する砲撃を無視しながらする会話は、異常な状況に置かれた俺の心を静めるのも手伝ってくれので段々と落ち着きを取り戻す事もできた。恐らく大尉は俺を落ち着かせる為に問答や会話をしてくれているのだろう……。まったく、助けられているのは俺の方だな───。






----ユリヤ 視点----


「信じがたいな……」


 アラカワの話を聞き終わるのと同時に思わず独り言のように言葉を漏らしてしまった。そんな私の言葉を聞いても目の前にいる少年は不愉快そうな表情をする事も無く優しげに微笑んでいる。恐らく、今言った事は全て事実なのだろう。もし嘘をつくならもう少しまともな事を言うだろうし、なにより今のアラカワの落ち着きようがそれを証明している。戦場を経験していない人間が榴弾が周囲に降り注ぐ状況で冷静に話をできるはずはない、ならばこの少年のいう事は全て真実となるわけだ……。


「大尉、回線繋がりました」


 目を瞑って考えていると部下の一人が懐かしい形の電話機を机の上に設置した所だった。いかんな、今は目の前の戦いに集中しなければ……。気を取り直して通信班に命令を出して分隊の現状を報告させる。


「第1・第2分隊、敵視認せず。待機中」


「前哨狙撃班から連絡。敵パワースーツ中隊を確認、攻撃位置へ移動中」

 

狙撃班はもう直ぐ交戦開始か……、どうにか敵の注意をここから逸らす事さえ出来れば次の作戦に入れるのだがな。しかし第3分隊はどうした? なぜ連絡が入ってこない。


「第3分隊の状況を知らせろ!」


「待ってください、今繋がりました。第3分隊は敵のパワースーツと交戦中! 兵力は小隊規模の為、予定通り爆破地点1-3へと偽装撤退中」


 早速馬鹿が掛かったか……そのまま追っていけ、そこがお前らの終着点だ。パワースーツを通常の爆薬で破壊はできないが、地下鉄構内を爆破して瓦礫で押しつぶし行動不能に出来る事くらいなら幾らでもできる。とりあえずこの作戦が敵に見破られるまでに出来るだけ多くの敵兵力を削らないとジリ貧になる。今の段階で他に命令する事はヘリについてだな……。


「ヘリの用意をしておけ! 良いか、虎の子に見えるように配置するんだぞ? どうせ使わないのだから美味しいエサに見えるように偽装しておけよ。勿論周囲には爆薬をたっぷり置いておけ」


「了解!」


 よしよし……どうにかまだ戦場はコントロール出来ている、後はアラカワをどのタイミングで送り出すかだな。そういえばヤツは急に静かになったがどうしたのだ? 疑問に思い首を巡らせて探すと、駅の構内に落ちてたと思われるパンフレットを真剣に眺めている姿が目に止まった。


「どうした?」


「…………ハイジャンプ作戦、ドイツ第三帝国──。いや、まさかな」


「───、お前は何を言っている?」


 私の問いかけに振り返ったアラカワは、慌てた表情で質問してきた。


「大尉、『この世界』の合衆国は1940年代以降に南極大陸に軍を送っていますか? 公式、非公式どちららでも構いません!!」


「南極大陸にだと? ふむ、確か私の記憶が正しければ48年と51年に送っているはずだ。51年のは非公式だったと記憶している」


「規模は!?」


「詳しくは知らん。だが、空母多数を含む大兵力だと記録には載っていたな。それがどうかしたのか?」


「ちょっとだけまって下さい、まだ自分でも整理が出来ていません。もう一つ質問があります……。母さんは恐らく僕を救出する為に国連軍に要請を出しますが他国もノアに恩を売るために参加すると思います、その場合主力になるのは───」


「合衆国軍だな」


 アラカワは私が答えると目を瞑り何かを必死に考えている様子だ。その間も刻一刻と配下の部隊から連絡が入ってくる。状況はややこちらに有利と言ったところだろう、パワースーツ相手にここまで善戦していれば戦術の教科書にのってもおかしくはない。5分ほどたったころだろうか、アラカワが意を決した表情で口を開いた。


「大尉、撤退は出来ません。恐らく…・・・、いえ間違いなく殺されます」


「───どういうことだ?」


 思わず睨みながら質問した私に臆することなく、目の前の天才は淡々と理由を語り始めた。そして私は遂に気付かされる事になった……、目の前のコイツがなぜ『化け物』と呼ばれている理由を───。






 大変お待たせしました! 再び更新再開です(`・ω・´)


 コメント等を参考にして、続きのお話を大幅に改良しました。次回の更新予定は6月3日、隔日更新を目指して行きます!


 編集の操作方法が結構変わっていて、更新がもたついたのをお詫びいたします……。

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