終戦への道筋
どうもにゅんです! 前話で2章のあらすじを書いているので物語を忘れてしまっている方は流し読みしていただけると、直ぐに思い出せるかと思います。
----荒川功樹 視点----
医務室を出てから考えを纏める為に、自分の部屋で椅子に座りながら目を瞑っていると扉がノックされた。俺は『どうぞ』と椅子に座ったままの状態で扉の前にいるであろう相手に入室を許可する。
「失礼します」
部屋に入ってきたのは、表情を曇らせたクレアさんだった。なにかあったのか? 膝の上で丸くなっていたコンも幾分か不安そうな表情で俺とクレアさんを交互に見つめている。
「クレアさん、どうかしました?」
「はい、不確定ながらキャプス王国とリクル教国が『グール』の実戦投入に踏み切ったとの情報を入手しました。現在、諜報部が総力をあげて情報の正確性を確認していますが、この件について美紀さんがお話を伺いたいとの事です」
「分かりました。後で母さんの所に顔を出しておきます」
そう言ってから再び目を閉じて自分の世界で考え事を始めるが、クレアさんが部屋から出て行く気配が感じられない。目を開けて小首を傾げながら目線だけで『なにかありますか?』かと問いかける。
「あの、申し訳ありませんが……、なるべく早くお願いしたいのですが」
「クレア中佐! 僕は分かりましたと言いませんでしたか? 本当に急を要するのであれば、母さんから僕の端末に直通で連絡が入ります。考え事をしたいので独りにしてもらえませんか?」
「も、申し訳ありません! 失礼いたします」
意図せずに出た俺の強い言葉で、クレアさんは慌てたように部屋から退出していった。廊下を遠ざかっていくクレアさんの足音を聞きながら、両手で顔を覆いながら俺は溜息をついた。
一体なにをやっているんだ? 考えが纏まらないからといってクレアさんに八つ当たりをしてしまった。後からきちんと謝っておかないとな……。
「なぁ、コン」
「コン?」
膝の上で丸まっているコンに向かって、独り言を喋るかのように問いかけるとコンは『どうした?』というように返事をしてくれた。コイツなら他人に俺が悩んでいる内容を伝えたりはしないだろう、そう考えて正直に今考えている事をコンに話し始めた。
「ヨアヒムさんを保護しただろう? その時、思ったんだ。この戦争を続ける必要が本当にあるのかってさ……。ヨアヒムさんの奥さんやメルカヴァの兵士から連合に属している国々が亜人……僕はこの言い方自体が好きになれないけど、他種族の人たちをどんな風に扱っているかを聞いた。その話を聞いているうちにさ、この戦争の意味が分からなくなってきたんだよ」
一旦話しを区切ってコンの方をみると、コンは真剣な眼差しで俺を見つめながら身振りで続きを促してきた。
「もしこの戦争で僕達『多種族同盟軍』が勝利したとするだろ。その時、勝利者である僕達は敗北者の『人族連合軍』をどんな風に扱うと思う? 良くて劣等国民、最悪は奴隷だろうね。なら今のままの方が良くないか?
いまならまだ数が少ない他種族の一部が弾圧されているだけで済む。だけど戦後は今の数十倍の人族が弾圧される事になる、それなら……」
『それなら今ここで戦争を止めたほうが良い』……そう言おうとした時、コンが魔法を使って顔の前に文字を書いた。
『ご主人様は、その連鎖を止める為にこの戦争に参加したのではないですか? その為に魔族やエルフ族と協力したのでしょう』
その通りだが甘かった、俺は甘すぎたんだよ。数百年間も弾圧されてきた恨みはそう簡単に忘れたりは出来ない。ヨアヒムさんのようにケット・シー族を妻に迎えるような人間もいるが、大半の人間は人族以外は下級種族だと認識している。そして人間以外の種族は人間を下級だと見ている。
俺達が魔族やエルフ族と対等に付き合えているのは、『異世界』からこの世界に来訪したせいだろう。ヴィクトリアさん達からしたら純粋な『人間』ではないのだ。俺がそうコンに話すと再び文字が浮かび上がる。
『それでは、ここで諦めますか? お母様に言えば箱根基地に帰れますよ、後の問題は残ったノアの皆さんが解決してくれます。ですが解決した後のこの世界がご主人様が望んだ世界だとは限りませんがね』
「じゃあどうすれば良いんだよ! お前だって一緒に奥さんやメルカヴァの兵士達から話を聞いただろ!? 仮に、今までの状態なら完全な住み分けを行えばお互いに許容できたかもしれない。
だけどな、連合は『グール』を投入する事までやろうとしているんだ……、いやさっきのクレアさんの話が本当ならもう投入しているのかしれない。そんな愚行を犯した人間を他の種族が許すと思うのか!?」
怒鳴りながら溜まっていた鬱憤を喚き散らすと、コンはゆっくりと俺の顔の高さまで浮き上がり……尻尾を使って俺の横っ面を強烈に殴った。
『冷静になりなさい! 確かにご主人様はまだ若い学生かもしれませんが、ここは異世界で現在はノアの軍属であり将官として北方方面軍を指揮しているのですよ。自覚を持ちなさい』
「痛てぇな、トカゲ野郎! そもそも俺は将官なんてやりたくなかったんだよ。むしろ戦争自体に参加したく無かった! 俺の話を聞かない母さんのせいでこんな面倒な事に首を突っ込む羽目になったんだ! それなのになんでこの世界を救うみたいな事になってるんだよそんなの俺の知らないところで勝手にやってくれよ」
『では何故、方面軍を率いる時にお母様に直接連絡をしなかったのですか? 個人端末を使えばいくらでもお話が出来たでしょう。メールでもよかった筈です。
それをしなかったという事はご主人様の中でどうにかなると思ったからではないのですか? 本当に嫌だったらいくらでも方法があったのに、今になってから泣き言をいうのは止めなさい!』
クソ、クソ、クソ! そんな事は俺が一番分かっている。コンが言っている事は全部正しい……だけどこの世界の人間がここまで愚かだったとは予想外すぎるんだよ。なぜ自分達の首を絞めるような事までして俺達を排斥しようとするんだ、なんで手を取り合えないんだ。大馬鹿共が……。
なぜか溢れてくる涙を堪えられずに情けなく泣き始めた俺をコンは先程までとは違って優しく撫でてくれる。暫く泣いた後で顔を上げると、コンは首を傾げながら文字を浮かべた。
『落ち着きましたか?』
「あぁ、すまない。ありがとう」
俺の返答に満足したのか直ぐに文字を消したコンは、尻尾をゆらゆらさせて何かを考えている様子だったが再び文字を浮かべて問いかけてくる。
『ご主人様はどうしたいですか? いえ、この質問だと意味が伝わりませんね。ご主人様はこの世界をどんな世界にしたいのですか?』
「皆が笑える世界にしたい。せめて何か一つの大切なモノを守れるような世界にしたい」
餓鬼臭いと笑われるかもしれないが、俺はそんな世界が見てみたい。皆が笑って手を取り合えるような世界───、それはきっと幸せな世界だと思う。
『では、そんな世界を作りましょう。こんな所で立ち止まって部屋に引きこもっている時間はありませんよ』
「いや、だから僕の話を聞いていたのか? もう無理だろう、同盟と連合は決定的に───」
改めて現状を説明しようと口を開こうとした時にコンは笑うしかないような文章を浮かべてきた。
『何故無理なんですか? 史上最高の天才と言われるお母様がいて、最強の軍隊を率いるお父様もいます。魔族を統率する魔王ヴィクトリアとエルフの姫達、この世界で強大な力を持つドラゴン族の長であるマーベラスとリリンもいます。そして、その全員が一目置いているご主人様がいて実現不可能な事があると思いますか?
現にご主人様は今まで不可能だといわれた事を簡単にやり遂げたではないですか、母の数式を使用した平行世界の証明や月面遺跡の解放……世界中の人間が無理だと言っても貴方だけは成し遂げたのです。
偶然だったと言いますが偶然でも構いません、結果として成し遂げているのであれば今回も偶然で成し遂げればいいのです』
コンがいっている事は滅茶苦茶な意見だと思う。だけどコイツにそういわれると不思議と同盟と連合を和解させる事が出来そうに思えてきた。
なら今俺がすべきなのはグールの対処法を具体的に考える事だ、名前と生態からして間違いなく転生する前の世界で映画にもなっていた『ゾンビ』の筈だ。少しでも事を間違えると取り返しの付かない事になる。
「よし、母さん達にグールの対処について相談しに行こう! ある程度は僕に考えがあるけどな。ありがとうなコン、お前のおかげで気分を入れ替えられた」
「コン!」
俺の言葉にコンは嬉しそうに一声鳴くと、いつもの定位置である肩の上に乗っかり尻尾を俺の首に巻きつけて体を固定する。最近は成長期なのか少し重くなったコンの頭を撫でながら部屋を出ようとすると、コンは思い出したように尻尾を器用に使って魔法の文字を出現させた。
『そういえば前々から言おうと思っていたのですが、ワタシの事をトカゲとかトカゲ野郎といいますが……ワタシは生物学上は女性です。生まれてから間もない事を考えれば正しくは女の子ですね、ですのでせめてトカゲ娘にして下さい』
「なぁ、それって冗談だよな?」
『はぁ? どこからどう見たってワタシは立派なリトルレディーです。見て下さいよ、きめ細やかなこの白い鱗を! 肌触りだって最高でしょう』
今までコンと一緒に風呂に浸かっていたが、次に入る時はコンは別の人に洗ってもらおう……、母さんかクレアさんが良いな。そんな軽い現実逃避をしながら俺は母さんが待っているはずのCICに向かって歩き始めた。
----荒川美紀 視点----
アリスのCICで周辺地図を眺めながら次の戦略を立てていると、青い顔をしたクレアさんが部屋に戻ってきた。先程、功樹を呼びに行ってもらったのだが独りで戻ってきた様だ。何かあったのか? そんな疑問を浮かべながらクレアさんに質問する。
「どうかしたのかしら? 随分と顔色が悪いけど」
「い、いえ。その閣下に……、功樹君に怒鳴られてしまいまして。彼のあんな怖い表情を見た事がなかったので、それで少し」
クレアさんに向かって功樹が怒鳴った? 彼女がなにかあの子の気に障る事でも言ったのか? いや、だからと言って功樹はそのような事で怒鳴るなんてありえない。
功樹は温厚な性格だし、そもそも自分の感情を強く表に出したりはしないタイプだ。よく言えば控えめ、悪く言えば内向的といっても差し支えない性格だ。だからこそ友達の頼みを断り切れなかったりするのだが、そこはこれからの人生経験でどうにかなるだろう。
しかしそんな功樹が一体なにがあったのだろうか? 隣で端末を操作していた修一さんも疑問に思ったらしく、クレアさんに向かって問いかけている。
「クレアお前、功樹に何を言ったんだ? アイツは理由も無しに怒鳴るようなヤツじゃないぞ」
「私は、美紀さんが呼んでいる事を伝えただけですよ。ただいつもなら直ぐについてきてくれるのに、さっきは椅子に座ったままで分かりましたと言うだけで動こうとしてくれませんでした。それで、なるべく早く美紀さんの所に行って欲しいと言葉を付け足したら───」
「怒鳴られたという訳か」
修一さんの言葉にクレアさんは俯きながら小さく『はい……』と返事をしている。おかしい、やはりそんな事で功樹が怒鳴る筈がない。
「クレアさん、その時の功樹の様子はどうだったのかしら? なにかいつもと違ったりとかはなかった?」
私の質問にクレアさんは思い当たる節があるようで、直ぐに答えを返してくれた。
「机の間接照明だけで部屋の明かりを点けていませんでした。それに普段なら功樹君は暇な時間は本か撮り貯めたドキュメンタリーを見ていますが、ただ椅子に座って何かを考えている様子でした」
「それは……変だな。いや変っていうレベルじゃねぇぞ、功樹のヤツどうしちまったんだ」
修一さんの言うとおりだ、アリスの艦内に用意してある功樹の部屋は艦の中枢部にあるので窓がない。そんな部屋で明かりも点けずに考え事をして、その邪魔をしたクレアさんを怒鳴りつけるなんて普通ではない。一体、功樹になにがあったのだろう? 腕を組みながら考えていると、一段低くなっていてCIC要員が詰めている場所からディラン艦長が話し掛けてきた。
「上官の会話に割り込む失礼をお許し下さい。ですが、少し宜しいでしょうか?」
「何かあるのか?」
ディラン艦長の言葉に修一さんが煙草に火を点けながら返答する。
「はい。功樹君が帝都を攻略してアリスに戻ったのが5時間前。その時には功樹君の言動になんら異変はなかった、ここまでは宜しいですね?」
確かにその時は帰還してきた功樹を私も見たが何も異変は見あたらなかった。修一さんやクレアさんも同じなのだろう、頷いて艦長に先を促している。
「それならば、一つだけ心当たりがあります。功樹君は3時間ほど前にヨアヒム卿の奥様とメルカヴァ騎士の両名と面談しています。奥様は獣人族で功樹君が特に興味を示している種族なので特に疑問には思いませんでしたが、メルカヴァ王国の兵士との面会については多少引っかかる所があったので記憶していました」
王国の兵士との面談? その後の異変……。まさか───!?
「クレアさん、別室で待機しているカシス王女に連絡して功樹と面談した兵士を探して直ぐにつれてきて頂戴! もしその兵士が何かの任務についているというのなら出頭命令を出して構わないわ。急いで!」
私の予想が当たっているのならば、多少の強権を使ってでも事実を確認しなければならない。もし最悪の場合は功樹を箱根基地に強制的に送り返すしか方法ない。それがきっとあの子にも、この世界にも一番いい事だと思う。
10分程した頃だろうか、メルカヴァ王国の甲冑を身に着けた騎士が息を切らしてCICに入室してきた。その後ろには心配そうな表情のカシス王女も同行している。
「私に何か質問があるとクレア中佐から聞きましたが、なんでしょうか?」
「3時間前に功樹と面談したそうですね。その時に何を話したのか教えて下さい」
私の質問に騎士は直立不動のまま、簡潔に。そして予想していた中で最悪の回答をしてきた。
「はっ、ノアの方々がG-88と呼んでいるこの世界の一般常識。またそれに関係する我々、亜人種の扱われ方・権利等です。特に奴隷として扱われている同胞の話をしました」
「あ、貴方! その内容は決してコウキ様の耳に入れないようにと指示があったでしょう!? 王国とノアとの間で結ばれた同盟条約の中でも上位に書かれている内容なのよ。貴方がした行為は明確な条約違反よ!」
カシス王女は悲鳴にも似た声で騎士を非難している。それに対して騎士は『そんな指示は一切聞いていない』と、自分が意図せずに犯した致命的な失敗に対して顔を青くしながら言い訳をしている。
私達のようなしっかりとした情報管理システムを採用していないメルカヴァ王国ではこのような問題……、指示の遅延や不達が極まれに起こることがあるのだが、それにしてもこんな重要な内容で起きるなんて予想していなかった。それよりも今は───。
「クレアさん、パワースーツの格納庫に連絡して功樹のスーツ『サタナキア』の起動凍結処理を行なって頂戴。プログラム関係やシステム上の手続きでは駄目よ、あの子ならその位なら簡単に解除して起動させます。メインスラスターと操縦ユニットを物理的に降ろすように伝えて」
「了解しました」
「修一さん、悪いんだけど部下の人を完全武装させて待機させてくれない? 最悪、功樹は通常のノーマルタイプで連合軍に突撃しかねないわ」
「分かった。だが人数はどうする? 直ぐに出動可能なのは艦内警備を担当している陸戦隊10名だけだ」
「もし、私が本気で逃げる功樹を取り押さえるとしたら1個パワースーツ旅団と3個歩兵師団は欲しいわ。修一さんもそれぐらいの覚悟で望んだほうが良いわよ」
CICでレーダーを担当しているクルーが小声で『そんな大げさな』と言っているが、彼はアレを見た事がないから言えるのだ。
確かアレは箱根基地が本格稼動して直ぐの頃、スーツの実地演習場を使用できるようになった時の話だ。私と一緒に演習場を見学していた功樹が話の流れで一般部隊で使われている先行量産型のパワースーツを起動させ運動試験を行なった事があった。
装着したスーツの内部カメラから送られてくる功樹の表情はとても上機嫌で嬉しそうな顔をしていたのを覚えている。私もその場にいた関係者も、その映像をみながら微笑みながら試験を見守っていたのが数秒後に凍りつくことになった。
あの子はジャンプ用のスラスターしか搭載されていないスーツで『三次元機動』を行なったのだ。三角飛びの要領で場内に設置してある建物から空中に浮き上がり、ジャンプ用のスラスターを使用して更に加速し通常では考えられないほど高速で動き回った。その時の映像を修一さんに見せると、『この映像は誰にもみせるなよ。こんなもん見せたら大多数の装着者の自信とプライドをへし折る』と警告された。
修一さんの優秀さは妻である私が一番分かっている。そんな修一さんにそこまで言わせる功樹を取り押さえる可能性が出てきているなんて……。
「フフフッ、どうしようかしらね?」
あまりの事態に笑いがこぼれる。『功樹は聞き分けの良い子だからきっと話せば分かってくれる』そんな甘い考えが浮かんでは消える。どう考えても優しいあの子がこの世界の人類を許すとは思えない。
ふと、机に目を向けると修一さんが吸っている煙草が置いてあった。功樹を身ごもってからずっと止めていた煙草だが今は無性に吸いたくて堪らない───、偶然にも銘柄は私が好んで吸っていたのと同じだ。そっと手を伸ばして煙草のパッケージを漁るとまだ数本入っているのが分かったので一本を口に咥えて火をつける。
「不思議ね、美味しくないわ。こんな味だったかしら」
私の独り言に周りにいる全員がどう反応をして良いのか困っているのが分かる。そういえば私が煙草を吸って居たのを知っているのは修一さんだけだった、急に私が煙草を吸い出したら困惑するのも当然ね。
久しく感じていなかった心地よいニコチンの酩酊を感じながらそんな下らないこと考える。そのまま半分ほど煙草を灰にした時、唐突に扉が開き少しだけ目を腫らした功樹が入室してきた。泣いていたのかしら? そんな思いと共に煙草をもみ消して席から立ち上がると功樹は何かを決意した顔で私の方に歩いてくる。
「遅かったわね」
私の問いかけにも軽く頷くだけだ。皆が集まっている机の前まで来た功樹はそのまま全員の顔を眺めてから口を開いた。
「母さん……、頼みがあるんだ。力を貸して欲しい」
「何?」
空気が重い……。誰も喋らない、ただ設置してある機械の駆動音しか聞こえない。誰もが功樹の言葉を待っていると、目の前のわが子はしっかりとした信念を感じさせる目をしながら言った。
「グールの脅威が迫っている地域から民間人を救出したい。多種族同盟、人族連合に関わらず全ての種族を救出するのに力を貸して欲しい。これ以上の戦争は無意味だよ、すこしでも被害を少なくしよう」
功樹の言葉に部屋にいる全員が顔に笑みを浮かべる、私が思っていた以上にこの子は成長していたようだ。人類の愚行を知ってもそれを受け入れ、より良い未来を目指そうとしている。
「勿論よ、協力するわ! お母さん達に任せなさい。それで明確なプランはあるの?」
「ある。あるんだけど、ちょい母さん近い! あと煙草臭いから離れて、煙草臭いのは父さんだけで十分だよ」
物凄い嫌な顔をしながら私から離れる功樹の姿に軽いショックを受けながら思考をめぐらす。たしかにこの部屋だと作戦会議をするのは手狭だと思うし、それに他のメンバーも呼ばなければならない。
「クレアさん、10分後に会議室Aで作戦会議を開くから関係部署に連絡をお願い。私は口をゆすいでくるわ」
私の指示で動き出す皆を横目で見ながら、功樹に嫌がられる原因となった修一さんの中身が入っている煙草の箱を握りつぶしてゴミ箱へと放り込んだ。さてと急いで歯を磨いてこなければ会議に間に合わないわね、私は小走りで化粧室に急ぐ事にした。
24日に活動報告を更新しました。これからの予定等を書いているのでぜひ、ご覧下さい。




