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多種族同盟軍

短いですが、ここで切らないとどうしても次話と上手くつながらないのでご了承下さい。


それと、昨日は更新を忘れてしまい申し訳ありませんでした。言い訳はしません……GWなので寝てましたヾ(*´・ω・)ノ゛

----荒川功樹 視点----


 ヴィクトリアさんを連れてノア島に帰ってきた俺は、勝手に島から脱走して魔王領に侵入した事についてマッチョから盛大な拳骨を頂いた。頭を押さえながら蹲っていると今回の件の罰として3日間の営倉入りを命じられたが、ヴィクトリアさんとの交渉結果を考慮して1日間の自室謹慎処分で済んだ。

 部屋に入る前にコンへの報酬としてトマトや果物をPXで買ってきたのだが……、渡した果物を食べているコンを見て疑問に思う事がある。コイツは体長が40センチくらいしかないのに平気な様子でメロンを皮ごと齧っているのだ。


「コン?」


 自分の事をジッと見つめている俺に気付いたコンは紙に文字を書いて俺に見せてくる。


『あげませんよ?』


「いらねぇよ!」


 お前の食いかけなんているかよ。そうじゃなくて、俺が気になってるのは自分と同じくらいの質量がある物を食ってなんで平気なのかって事だよ、おかしいだろ!? そのメロンお前の胴体と同じくらいあるんだぞ。


「なぁコン、お前って食ったモンはどこに入ってるんだ?」


『食べたら直ぐに魔力に変換されて取り込まれます。ワタシが排泄をしないのはその為です』


 もはや手を使わずに尻尾で文字を書けるようになったコンはメロンを食べながら説明する。つまりコンは食事を取れば取るほど魔力が増えるのか、延々食わせ続ければ無限に魔力を増やせることが出来て『金塊』とか『宝石』を採取し放題になるという訳だ。

 母さんに頼んで極秘の裏ルートで流通させれないか? 上手くいったら俺の小遣いも増えるかも知れん。


『悪い事を考えていそうな顔をしてますが、ワタシにだって満腹感はありますから『無限の魔力』なんて不可能ですよ』


 コンは横目で俺を見ながら文字を書いている。くそ……、トカゲもどきの癖に俺の事を本当に良く観察してやがる。


「そんな事考えてねぇよ。変な事を書くなトカゲもどき」


「コン!? コン! グルゥ……」


 俺の一言に腹を立てたのかコンは小さく咆哮を上げて威嚇してきた、その姿に多少腰が引けたが今更引き下がれなくなった俺はコンに言い返す。そもそも空も飛べなくて炎も吐けない癖に何がドラゴンなんだよ、もっとこうヴィクトリアさんみたいに貫禄を醸し出したり氷霊族のメイドさんみたいに冷気を纏わせたり出来ないのかよ。

 そんな俺の言葉を聴いたコンは大事そうに抱えていたメロンを置いてから、怒りで尻尾を床にパタンパタンさせつつ文字を書いて見せてくる。


『ワタシが魔王に向かって吼えた時に魔王はハッキリと怯えていたでしょう!? あれはワタシの方が上位種だからなんです! 良いですか? ワタシはドラゴンですがドラゴン族ではありません、ワタシは『神族エンシェントドラゴン』です。だいたい普通の黒竜とか次元竜クラスが等価交換も無しに貴金属の錬金など出来る訳ないでしょうが!』


 絶対嘘だ。エンシェントドラゴンなんて最高に頭が良い種族だった筈、文字が書けるだけで言葉を話せないコンがそんな上位種な訳が無い。


「嘘つくな、じゃあなんでお前は言葉を話せないんだよ。そんな伝説級なら凄い魔法とか人間が使う言葉くらい簡単に習得するだろ」


 俺が言った瞬間、コンはそれまでとは違ってピンッと立たせていた尻尾と羽をションボリさせて文字を書き始めた。


『ワタシが生まれた時……、母上は既に滅んでいました。周囲には同じ種族の仲間達もおらず、幼竜だったワタシは周囲の外敵から身を守る為に長期の休眠状態になったのです。

 休眠状態から戻る為には膨大な魔力が必要になります、ワタシはいつか仲間が見つけてくれて魔力を注ぎ込んでくれると思っていました。ですが実際はご主人様に拾われて異世界で目を覚ましたのです』


 そうだ、忘れていたが休眠状態だった事を知らなかった俺がコンを異世界である地球に連れてきてしまったんだ。魔法が無い世界でコンに魔法を教えるような生物は当然いないし、ドラゴンの言葉を理解する生物もいないからコンは自力で文字を覚える羽目になった。

 改めて考えると全部俺の責任なんだよな。俺がコンに掛ける言葉を失って口をパクパクさせていると、コンは更に文字を書いて見せてくる。


『別に後悔してません、ご主人様もお母様もアリス様も皆が優しく育ててくれます。だからこのままで良いのです、このままが良いのです! でもワタシは凄いドラゴンなので忘れないで下さいね』


 書き終わってから再びメロン齧りだしたコンは先程の元気を取り戻したように見えた。なんとなく恥ずかしくなった俺はコンに聞こえるギリギリの声で『ありがとう』と言うと、目の前の偉大なドラゴンはフワリと尻尾で返事を返してくれた。





 自室謹慎処分なので端末や持ち込んでいる本などを触らずに1日間を過ごそうと思っていたのだが、やることが無いとこれほど時間の進みが遅いとは思っていなかった。余りにも暇なのでベッドの上で横になってぼうっとしていると、食事を終えたコンが腹の上に飛び乗ってきて丸くなったのが分かった。

 天井を見つめたまま右手でコンの頭を撫でていると廊下を歩く人数がやけに増えていることに気付く。体を起こして耳を澄ますと遠くでヘリのローターが回っている音も聞こえる、それも1機2機のような数ではなく数十機が離陸待機しているような雰囲気だ。


「なにかあったのか?」


「コン……」


 コンと顔を見合わせていると俺の部屋のロックが解除される音が響きわたり、息を切らせたクレアさんが怖い顔をしながら入ってきた。


「功樹君、貴方の謹慎処分は解除されたわ」


「どうしたんですか?」


「1時間前にキャプス王国を盟主とする『人族連合軍』がメルカヴァ王国に宣戦布告。ノアは安全保障条約に基づいてメルカヴァ王国側で参戦する事になったの、詳しい話は美紀さんがしてくれると思うから急いで準備して」


 俺が準備をしなければならない理由がまったくもって理解できないが、クレアさんに言われた通りに支給された白い軍服を身に纏い部屋を出る。コンも首から『Noa』と書かれたカードを下げながら俺の腕にしがみ付いて来たので一緒にクレアさんの後を追う事にした。

 地下にある指令センターに入ると、母さん・マッチョ・カシスさん・アドリエンヌさん・ヴィクトリアさんの5人が俺の事を待っていたようでテーブルに着席しながらこちらを見ていた。


「功樹、早くこちらにいらっしゃい」


 母さんの言葉に従って空いている席に座ると自室謹慎中だった俺に現在の状況を説明してくれた。


「クレアさんから簡単な説明は聞いたと思うけどキャプス王国がメルカヴァ王国に宣戦布告したわ。それに呼応して連合国のラーギレ公国・リクル教国・リンクドブル帝国もメルカヴァ王国に宣戦布告、『人族連合軍』として亜人種討伐を目標にしているの」


 馬鹿か? たった4カ国でこの世界にいる亜人達を本気で絶滅させれると思っているのか、途中で兵力と物資が底を突いて連合自体が崩壊するだろ。俺がその点を質問すると母さんは澄ました顔で答えてくる。


「いいえ4カ国だけではないのよ。周辺に点在している小国家や都市国家を併合して戦力を整えているから、正確には12カ国同盟ね」

 

 それは不味くないか!? なに澄ました顔で言ってるんだよ? 俺達ノアの最大兵力は8万が精一杯だった筈、それに王国の常備軍を動員したって10万ちょいが集まるかどうかって辺りだ。12カ国なんていったら50万以上の大軍で侵攻して来るに決まっている……、どうやって防衛線を張るんだよ。


「防衛線はどうするの? 持久戦になったら負け確定じゃん」


「防衛線? なにを言っているの? こちら側から攻撃をしかけるのよ。その為に功樹だってヴィクトリアさんに『帝国軍を貸してくれ』って言ったんでしょ」


 そんな事は言ってねぇよ! 俺は『ノアがこの世界で生きれるように力を貸して下さい』と頼んだだけで、そんな好戦的な事は一切言って無いから。何か勘違いをしている事を説明しようとするがそれより早く母さんは説明の続きを話し始めた。


「それで、今回の事態を重く受け止めた私達は和平会談を中止して軍事同盟の立ち上げを決定したの。ノア・メルカヴァ王国・ウルスナ帝国の3カ国は今後、『多種族同盟軍』として『人族連合軍』と戦う事になるわ」


 『戦う事になるわ』って何で人間と殺し合わないといけないんだよ、そもそもそんな事をしたくないから異世界に転移してきたのに本末転倒じゃないか。『殺す覚悟が』なんて寒い事は言わないが話し合いで解決できるなら戦争なんてしたくない、もう一度くらい連合軍と和平交渉の場を持ったほうが良いんじゃないか?


「母さん、僕は殺し合いなんてしたくない」


「大丈夫……戦争はするけど殺し合いはしないわよ、ちゃんと方法を考えてあるの。その為にこうちゃんも協力してね」

 

そう言って微笑む母さんは、優しく俺の頭を撫でてくれた───。





----ヴィクトリア 視点----



「大丈夫……戦争はするけど殺し合いはしないわよ、ちゃんと方法を考えてあるの。その為にこうちゃんも協力してね」


 ミキ殿はそう言ってコウキの頭を撫でておるが殺し合いをせずにどうやって連合軍を撃破するつもりじゃ? まさか降伏する訳でもあるまい、先程の会談で思い知ったがさすがにコウキの母親だけあってミキ殿は相当の策士だった。ここは一つ聞いてみる事にするか……。


「ミキ殿、すまないが妾には殺し合わずに解決する方法など見当もつかないのじゃが」


 妾の質問にミキ殿は大きな鏡型の魔法具に映像を写して説明を始めた。


「私達はBZガスを改良した『無力化ガス』の使用を考えています。ガスを吸い込んで昏倒したところを一時的に拘束して強制的に武装解除させる目論みです。また避けられない白兵戦についてはノアが提供する『スタンソード』を使用して下さい、スタンソードには斬りつけた相手に高圧電流を流して気絶させる効果があります。

 万が一それらの武器で鎮圧不可能な場合は殺傷武器の使用を認めますが使用した場合は直ぐに近くで展開しているノアの救急対応班にご連絡下さい。可能な限り……、否───絶対に死者を出さないでこの戦争を終結させます」


 確かに、異世界の技術と妾のような亜人達が力を合わせれば死者を出さずに戦争を終わらせる事が出来るかもしれない。だが……なぜそんな面倒な事をしなければならいのじゃ? 長きに渡り迫害され続けてきた妾達からすれば人間など滅ぼしてしまって構わない存在だ。異世界人のノアの面々も別にこの世界の人間達に思い入れもないだろう。

 妾の『連合を滅ぼす』という提案に王国の王女達も賛成とまではいかないが特に反対もするつもりはないようで、ミキ殿の判断を待っている。


「質問なんですが、なんで亜人族の皆さんは迫害されたんですか?」


「突然、人間たちが攻撃してきたのじゃ。それに反撃したら少数種族から徐々に制圧されて奴隷にされたのじゃ」


 黙って考えているミキ殿の代わりに質問してきたコウキに返答すると過去の記憶が蘇ってくる。まったく忌々しい人間達め、あのような野蛮な種族などやはり滅ぶべきなのだ。ミキ殿の返答次第では帝国だけでもそれを実行しようと考えていると、コウキは首を傾げながら再び問いかけてきた。


「本当に人間が『なんの理由も無く』攻撃してきたんですか? 吸血種族の方は人間の血を吸いませんでしたか? 妖精族の方達は人間の子供を攫っていませんか? 精霊族の方は人間に乗り移って悪戯をしませんでしたか?」


「なにを言いたいのじゃ」


「亜人の方達からすれば、生きる為やちょっとした悪戯のつもりでも人間にはそれが脅威に感じたと思います。1人では敵わないのなら集団で身を守るのが知性がある生物としての通常の判断です。

 滅ぼしたら『次は自分達の番かもしれない』と考えて別の大陸の人間が戦いを挑んできますよ、それでまた戦ってどちらかが滅びるまで続けるんですか? そんな無駄で馬鹿げた行いはもう終わりにして一歩先に進んでみる勇気はないですか」


 コウキの言葉を聞いて妾は気付いた。きっとこの異世界から来た少年は、妾達のような亜人族を導く為に神から遣わされた使者なのだと───。





 数千年後、ノアの存在が神話となっている時代では普段は自分の考えを曲げない筈である歴史学者達が揃って同じ見解に達した1つの事柄があった。


『この世界では暗黒期と呼ばれる亜人達が迫害を受けていた時代があった、しかしその暗黒期を終わらせた勇者達がいる……。

 聖女アドリエンヌ、賢者カシス、魔王ヴィクトリア、異世界の魔女ミキ、そして最大の功労者であるのにも関わらず残された文献には殆ど記述されていない───、魔神コウキ。この5人の勇者達が今でも続いている光明期を築いた事は間違いない』

今回はコンの正体と説明回でした。勘違い成分が薄くて申し訳ないです、次回は濃くなります。


数千年後のお話は『sahyoue様』よりアイデアを頂きました! ついに主人公は神話になりました。むしろここが今回の本編だと思います。


異世界編は後3~4話くらいで終了します。実は次話は作者的に結構面白いのではないか? と思っています。まだ一部を書き直している最中ですが『ロマン兵器』が勘違いと共に活躍するのでご期待下さい。

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[一言] 凄いことになってきたぞ
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