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ソルガル!!  作者: ファフニール
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1ソルガルへようこそ

こちらの作品は2009年頃arcadiaで連載していた美少女に憑依して戦う現実世界を舞台にしたMMORPGという頭の痛い内容です。

既に削除していたのですが、こんな作品でもまた読みたいと言ってくださる方もいらっしゃり、掲載していくことにしました。


ご意見ご感想などいただけますとうれしいです。

1ソルガルへようこそ



ダンボール箱を開けたとき、それが人生の転換点だったなんてそんな間抜けな話があるだろうか。

人生と言ったら少し大げさかもしれないけど、僕が生まれてからの14年間は、それはそれは平凡なものだった。

一般的な東京のサラリーマンの家庭に生まれ、母さんは専業主婦で、姉一人弟一人で、極端に仲がいいというわけではないけれど、顔も見たくないほど仲が悪いわけでもない。

高校受験は大変そうだけど、14歳でまだ中二の僕には、そんなの未来の話だ。

学校では人気者というわけではないけれど、いじめにあっているというわけでもない。

父さんは家具メーカーの営業で、スウェーデンに単身赴任になったときにはびびったし、家族みんなが大騒ぎだったけど、よく考えたら平日に顔を会わせることなんて一日に一時間もなかったんだから、実際に行ってしまえばこっちの会社に行ってるのとそんなに変わらない。

姉ちゃんは年が大分離れていて、神戸の大学に行ってしまったから、母さんは気を揉んでいるけど、たまに電話すると元気そうだし、結構楽しくやってるみたいだ。母さんには内緒だけど、彼氏も出来たらしい。僕?まだ彼女なんていたことないけど悪い?

じいちゃんは家庭菜園と猫とインターネットが大好きで、料理は母さんより上手だし、頼まなくてもお小遣いをくれるんだから、文句なんか言ったらバチがあたる。なんでもおばあちゃんは若くで死んじゃって男手一つで母さんを育てたんだって。

そういう、いたって平凡で、そしてきっと十分に幸福な僕の家に、ある日女の子が梱包された小包が郵送されてくるなんて、一体誰に想像できる?

僕の人生に鳴り物入りで入ってきたダンボールの箱は、僕の中二の夏休みをすっかり過激で非凡なものに変えてしまった。そしてきっと、僕のとても核心的な部分をすら、すっかり変えていってしまったんだと思う。

これは平凡な僕が、平凡でなくなってしまった、ある夏休みの記録だ。


「孝一、いるか?」

じいちゃんが僕の部屋に来たのは、夏休みを来週に控えた土曜日のことだった。

帰宅部の僕には特に用事のあてがあるわけでもなく、友達に誘われれば遊びに行こうかな、というくらいのなんでもない日の正午過ぎ。

「うん」と漫画をだらだら読みながら答えると、じいちゃんが僕の部屋のドアを開けた。

じいちゃんは僕が漫画を読んでいようと、母さんの様に険しく眉を寄せることなんてない。いつだってにこにこしているんだから。

「孝一、お前パソコン欲しがってたろ?」

僕がパソコンを欲しがっていたのは本当でとても切実なことだ。オンラインゲームが大好きな僕は、お小遣いのほとんどを接続料に捧げて、ゲーム機でMMORPGとかレースゲームとかをしている。

でもパソコンで接続するオンラインゲームの方がタイトルがいっぱいあってとても楽しそうだと言うことは、やけに露出度が高い女性キャラがきらきらした目でこっちを見つめる雑誌とかの広告を見ながら、いつも思っていたことだ。

「うん、とっても」僕がようやく漫画から顔を上げてそう言うと、じいちゃんはにっこりと笑って、すっと右手を僕に向ける。

「じいちゃんのお下がりだけど、お前にやるよ」

そう言ってやや大ぶりなノートパソコンを差し出すじいちゃんに、僕はあやうく抱きつくところだった。

椅子から転げんばかりに飛び上がった僕は、半ばひったくるようにじいちゃんの手からノートパソコンを受け取る。

型遅れで大きくて重くてセンスのかけらも感じられないが、インターネットに接続できるなら僕にとってはそれ以上望むことなんてない。

たぶん広告の女性キャラも顔負けなくらい目をきらきら輝かせてパソコンを抱きしめている僕に向かって、じいちゃんは満足そうに微笑んで、「じゃあLANケーブルをひいてきてやるからな」と言って階段を一階に降りていった。

僕のじいちゃんは実は神様かもしれない。


ということで自室にインターネット環境が整うという天にも昇るような幸運が舞い込んだ僕は、夏休みを有意義なものとする為に、この土日を情報収集に費やすことに決めた。

何せオンラインゲームは有料か、最初無料でもいずれ有料になるものがほとんどだ。お小遣いが限られている僕には無駄なゲームにお金を使う余裕はない。

かちかちとマウスをクリックしながら、検索サイトで色々なオンラインゲームやその評価サイトみたいのを検索する。やっぱり部屋にパソコンがあると楽だ。居間のパソコンではそうそう遊ばせてもらえないし。

それでわかったことはいろいろあった。

まず、有名なネットゲームはすでに上級者が幅を利かせている為に初心者が入りづらいと言う事。

次に広告におっぱいの大きい女性キャラを使って客寄せしているようなのは、たいてい面白くないらしいということだ。

そりゃあ、僕だって人並みにおっぱいに興味はある。嘘。すごくある。僕だって男だし。

でもそんな誘惑に負けてつまらないゲームに夏休みをつぎ込むなんて、そんなことになったらたまらない。

僕はフリーのメールアドレスを作ると、体験版があるようなサイトには片っ端から登録して内容を吟味していった。

いくつものタイトルを触りだけ遊んでみたけどいまいちしっくりこなくて、僕は次第に焦り始めていた。何に焦っていたかって、だんだん自分の判断に自信がなくなってきて、なんでもいいような気がしてきたからだ。

いけないいけないこれじゃだめだ、なんて思いながら何気なくメールボックスをチェックすると、見知らぬ差出人からメールが届いていた。

この頃にはすでに何十というサイトに登録していたから、僕はそれが、すでに登録をすませたどこかのサイトから来たメールだと思い気にも止めなかったが、その件名にちょっと引かれるものがあってマウスでクリックしてみた。

『新作オンラインRPG参加者募集中』

なんということない件名だけど、この時僕は新作タイトルを中心にゲームを探していたから、そのメールをチェックしないわけにはいかなかったんだ。

今思えば、もう少し慎重に考えていれば、そんなサイトにアクセスしたことなんてなかったってことに、気がつくことが出来たのかもしれないけど、後からはなんとでも言える。

URLをクリックして開かれたページはとてもシンプルで、まず僕はそれに好感を覚えた。ゲームの紹介ページはどれもごてごてしていて、僕は少しばかり辟易していたから。

白地に緑のラインで装飾されたページには、大きく『ソルガル!』というタイトルが浮かび上がっている。

僕はそのタイトルを気軽にクリックした。

それが不可思議な四十日間の始まりの扉とも知らずに。


ソルガル!へようこそ

ソルガル!は複数のプレイヤーで勝利を競い合うMMORPG(多人数同時参加型オンラインRPG)です。異世界からの侵略者に脅かされる世界で、さまざまなクエストをクリアし、『ルナ』と呼ばれるポイントを集めましょう。プレイヤー同士は時に協力し合い、時には対立することもあるでしょう。

いずれにしろ勝利者は一人。

もしあなたが勝利者となれば、きっとあらゆる願いが叶うことでしょう。


「ふぅん」と僕はひとり呟いていた。珍しいなと思ったからだ。勝利者は一人。そんなオンラインゲーム聞いたことがない。

オンラインゲームはメーカーにとって、なるべく多くの人に、いつまでも遊んでもらえるほうがありがたい。それだけ接続料が保障されるから。

だからたった一人だけが勝利者となるオンラインゲームなんて、そんなもの作るメーカーがいるなんて思わなかった。言葉通りなら、たった一人がクリアすると、それでそのゲームは終了してしまうのだろうから。

僕は怪訝に思いながらも、新作タイトルということで納得もしていた。

たしかに、ほかのメーカーと同じことをしても売れないもんね。

だからとりあえず疑問を振り切った僕は、その先の説明に、マウスをスクロールした。

「あらゆる願いが叶う」なんて、大きく出たなと思いながら。


あなたは選ばれたソルボーイズの一人として、クレセントガールズの身体を借りてクエストを攻略していかなくてはなりません。クレセントガールズは人間よりもとても強力なアンドロイドですが、恐ろしい侵略者たちの前ではさすがに劣勢です。

『ルナ』ポイントを貯めると『スキル』を習得することができます。『スキル』はクレセントガールズが起こす様々な奇跡の機能です。『スキル』を駆使することができれば、高難度のクエストをクリアすることもそう難しいことではないかもしれません。


ガールズというくらいだから女性キャラなのだろう。僕はそのキャラを使ってクエスト、言葉どおりならオンラインゲームでは実にありふれた冒険依頼を達成することで、ポイントを貯めていくらしい。いくら読んでもレベルの記述はないから、このゲームではキャラクターの基本性能はずっと変わらないみたいだ。僕はどっちかと言えばレベル上げがかったるいタイプなのでこういう設定はありがたい。工夫次第で強力な敵を倒すことができる、そういうゲームの方が好みなんだ。


『スキル』の種類は二千種類以上。そのすべてを習得できるわけではありませんから、どの『スキル』を優先的に覚えるかはよく考えましょう。

『スキル』は下位スキルと呼ばれるものから中位、上位と、木の枝の様に派生していきます。このスキルの派生を『系統』と呼び、六種類存在します。初めに覚えることが出来るのは各『系統』の下位スキルのみです。下位スキルをいくつか覚えると中位スキルが出現し、中位スキルをいくつか覚えると上位スキルが出現します。

一度に発動できる『スキル』は『スキルスロット』の数で異なりますが、はじめは一つだけです。クエストが進み、『スキルスロット』が増えると、複数の『スキル』の効果を重ね合わせた『複合スキル』が使用できます。

『スキル』の系統と初期の下位スキルは以下の通り。


攻撃スキル・・・『ソバット』敵単体にまわし蹴りを放つ

防御スキル・・・『ガード』敵の攻撃のダメージを軽減する

移動スキル・・・『瞬転5歩』一瞬間に5歩分移動する

発生スキル・・・『火炎弾』摂氏800度の火の玉を敵単体に撃ちだす

変化スキル・・・『硬度4』触れたものを鉄程度の硬さにする

知覚スキル・・・『索敵』周囲に存在する敵の数を把握する


なかなか面白そうだと僕は感じた。

レベル制でないのもいいし、スキルも面白そうだ。

組み合わせができるというのも工夫の余地があっていい。

その時、時刻が二時を回っていたこともあり、たぶんに判断能力を失っていた僕は、夏休みを費やすゲームとしてソルガルを選び、登録をした。

五十人くらいいる女性キャラの中から一番好みのタイプを選んで登録画面を進んでいくと、やがてサービス開始日が告げられた。

それは奇しくも夏休みの初日だった。

僕はその日が来ることを心待ちにしながら、ついに襲ってきたとんでもない眠気に逆らわずに、ベッドに転がって寝てしまったのだった。


ThankYou!WelcometoSolGirl!


じいちゃんからもらったノートパソコンの画面には、だから自動で電源が切れるまでその文句が浮かび上がっていたんだと思う。僕が寝入ってしまった後も。



「孝一、起きて孝一!」

明くる日曜日、僕は母さんに乱暴に起こされることになった。

断りもなく僕の部屋に入り肩を揺する母さん。

僕が眠い目をこすりながら時計を見ると時刻はまだ五時半を少し回ったくらいだった。僕じゃなくても文句を言いたくなると思う。

でものどのすぐ奥まで出掛かっていた不機嫌な言葉は結局空気に触れることなく消え去った。

「お姉ちゃんが倒れたの」

母の言葉のあまりの衝撃に。

神戸の大学に通う姉ちゃんは当然神戸に住んでいる。友人だという男性から、母さんに電話があったそうだ。僕はそれがたぶん彼氏だろうなと検討をつけた。

「お母さんは今から神戸に行くから。後のことはおじいちゃんに頼んだからね」

そう言って僕の髪をそっと撫でる母さんの目が涙ぐんでいた。

きっと僕もそうだったんだろう。

一緒についていくと言ったけど留守番をしとくように言われた。

僕はもう一週間だけ学校があることが酷く恨めしかった。

その日はじいちゃんの作ったご飯を食べ、昼に一度父さんから電話があった。父さんが海外にいることを心細いと思ったのはこの時が初めてだった。

夕方、母さんから電話があった。

「お姉ちゃん、目を覚まさないの」

泣きそうな母さんの声が震えていた。

姉ちゃんは意識不明の状態が続いているそうだ。

原因は、不明だった。


次の一週間は憂鬱で仕方なかった。ただでさえ夏休み前の一週間なんてそわそわして落ち着かないというのに、その間姉ちゃんは目を覚まさなかったのだ。

点滴を打っているんだと母さんには説明された。

命に別状はないらしい。ただ目を覚まさないらしい。

水曜日に一度帰ってきた母さんは、木曜日には再び神戸に向かった。アパートを借りて姉ちゃんの世話をするという。姉ちゃんを東京につれて帰ることができないのだから仕方がないが、僕も連れていってほしいと言ったら駄目だと言われた。

姉ちゃんが死んじゃったらどうするのと言ったら頬を叩かれた。

すぐ謝られたけど、母さんに叩かれたのはそれが生まれて初めてだった。


やがて夏休みが来たけれど、それは僕が想像していた楽しい時間ではなくなっていた。じいちゃんはしきりに大丈夫だからといってくれたけど、その言葉には何の根拠もなくてつらかった。僕が神様に本気でお願いをしたのは、この時が初めてだったと思う。

どうか、姉ちゃんを助けてください。

場違いな宅配便が届いたのは、そんな時で、じいちゃんは夕飯の買い物に出ていた。

「はい」

インターホンに応えて、僕は玄関に出た。

そこでは帽子をかぶったお兄さんが伝票を持って立っていた。

僕は判子を押した伝票と引き換えに、結構重いらしいダンボールの箱を受け取った。その送り主を見て「あ」と僕は思った。

ソルガルとそう書いてあったからだ。

姉ちゃんのことがあってすっかり忘れていたけど、今日はソルガルのサービス開始日なんだ。この日を待ちわびていたはずだったのに、僕にはすっかりそのつもりがなくなっていた。廊下に無造作に置かれたダンボールは、でも僕の事情などお構いなしらしい。

僕はちいさなため息を一つ吐くと、それを持ち上げようとしてあまりの重さに断念した。いったい何が入ってるんだ?

僕は初めてそれを怪訝に思う。

僕は今日がサービス開始日だとメールで読んだとき、当然メールか何かで、ソフトのダウンロードURLが送られてくるのだとばかり思っていた。

こうして小包が送られてくるなんて思いもしなかったんだ。

それというのもソルガルは試験的な運営の為か、完全無料をうたっていた。

企業が金にならないソフトの為に、こんな郵送物を送ってくるものだろうか。

とは言え、いつまでもこんなところにダンボール箱を放置しておくわけにもいかない。じいちゃんが帰ってくる前に片付けないと。

そう思った僕は思い切ってここで封を開けることにした。何が入っているか知らないけど、分割して持ち運ぶしかない。

きちんと貼られたガムテープを無造作に剥がすと、僕はダンボールの縁に手を掛けて開き、何気なくその中を覗き込んだ。

はじめに見えたのは白い太ももだった。それは紺のスカートに包まれていて、視線を移すと目を瞑った愛らしい横顔が見えた。

僕はそこら辺で、思い切り叫び声を上げていた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

だって考えてもみてほしい。

ダンボール箱の中にひざを抱えた女の子が入っていたら、誰だって叫ぶでしょう。

そう。ソルガルから送られてきたのは、なんと等身大の女の子だった。

僕はパニックに陥った。当たり前だ。

たしか僕はこの時、それが死体だと思ったのだ。

何か凶悪な事件があり、それに巻き込まれたのだと思った。言われない罪で警察に捕まるんだとか本気で想像した。事実は、それよりももっと奇妙だったけど。

僕はその場に尻餅をつき、目に涙すら浮かべてがたがた歯を鳴らしていた。

白状するが、直前にお手洗いに言ってなかったらとんでもないことになっていたかもしれない。それほど仰天した僕を尻目に、事態はますます不可解さをましていく。

白く長い指が、ダンボール箱の縁に掛けられた。

女の子が、ゆっくりと起き上がったのだ。

女の子を死体だと思っていた僕は目を見開いて後ずさった。僕は幽霊とか苦手なんだ。

起き上がった女の子はそんな情けない僕をその視線で捕らえ、胡乱な瞳で見据えた。たっぷり数秒の時間がたち、僕は生きた心地もしなかったが、女の子はにこりと花がほころぶような笑顔で言った。

「ソルガルへようこそ」

え?と僕は言ったと思う。

あんまり掠れた声だったから自分でも聞き取れなかったけど。

こんな時だけど、女の子は綺麗だった。

大きな瞳。

ふっくらした唇。

うっすらと色づいた頬。

肩口で切りそろえられた青い髪。

アニメや何かに出てきそうな、未来的なデザインのスカート丈の短い制服のような服装の女の子は、とても魅力的だったけど、どこかで見たことがあるような気がした。

女の子は左手にしているシンプルなデザインの腕時計を見ると少し眉を顰めて、そして宣言するようにこう言った。

「時間がありません。チュートリアルを始めましょう」

女の子はそういうと、いまだ立ち上がることもできない僕の方に歩いてきた。短いスカートが揺れて白いふとももが目に眩しい。よく見たら、ネクタイをしたシャツの布地を持ち上げるふくらみはかなりの起伏だ。

僕は情けない格好をしながら頬が赤く染まるのを止められなかった。

そして彼女は僕の肩をそっと掴んだ。

いい匂いがする。

僕がそう思った時には女の子の顔がめちゃくちゃ間近に迫っていて、ふっくらした感触が僕の唇に押し付けられていた。

そして僕の意識は暗転したのだった。



目が覚めたとき、いや、そう思ったとき、僕は廊下を見つめていた。

目の前に女の子はいなくなっていて、振り向くと空のダンボール箱がある。僕は狐に摘まれたような気持ちで、今起こったことが姉ちゃんが倒れて気が動転した僕の白昼夢だったのだと思い込みそうになるほどだった。

落ち着いてくると、体に違和感を感じた。

なんだか視線の高さが普段と違う感じがしたのだ。

僕は不思議に思って、下を向いてみた。

そしてそこにあるはずのない、ありえないものを見て顔を引きつらせた。

そこにはまるでグラビアアイドルみたいな胸の谷間が覘いていた。

「ちょ!?」

僕は思わず叫んだが、そんな自分の声に驚いた。

まるで女の子のような高い声だったからだ。

思わず確かめるように、僕の胸についている不可思議な物体を両手で掴む。

むにゅとした感覚が、手のひらと、そして僕の胸のあたりの双方に感じられた。

「こ、これって」

その時、僕の頭の中に、さっき聞いた女の子の声が響いた。それは今や僕の声でもあったけど。

『同期は無事に完了しましたね。それではチュートリアルを始めますが』

そこで頭の中の少女の声がいったん途切れる。

『母性の象徴としてマスターの様な思春期の少年が興味津々なのはわかりますが、いきなり鷲摑みはどうかと思われます』

その言葉に僕は真っ赤になって手を離した。

そう、離したのだ。僕が乗り移ったらしい女の子のおっぱいからその手を。

『私の名前はソフィ。太陽の子よ。私はあなたの分身たるクレセントガールです』

どこかで見たことがあるはずだ。ソフィ。それは一週間前に僕が登録した、ソルガルのキャラクターの名前だったのだから。

『さぁ。早くチュートリアルを終えましょう。クエストが始まる前に』


昔の作品って改めて読むと赤面物ですね。

少しでも楽しんでもらえましたら幸いです。

ご意見&ご感想お待ちしております。

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