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2 彼の日常

ーガタンゴトン

それは、授業終わり、大学の帰り。春休み明け初日の電車。

今日は授業が三限までしかなかったので早めに帰った。

人の少ない電車の座席に、宏幸は陰鬱そうな面持ちでスマホを眺めていた。

久々にツイッターを開くと、女の名前ばかり表示される。

まゆ、みか、ゆき、さくら、りお…

似たようなアイコンのユーザーが並び、じっとそれを眺める。

中でも1番艶やかな雰囲気で飾られたアイコンをタップする。

ー今からヤりません?

返信は、すぐに来た。

ーおっけ


池袋で小学校の教師をしていたとき以来、真面目に性行為をする相手を探したのは久しぶりだった。

いわゆる、体の関係というやつだ。

人間は1番好きな理想の人物と似ている人を無意識のうちに探すらしい。

しかし、彼の目的は違った。

ただ自暴自棄に性欲を発散させたいだけだった。

スマホをカバンの中にしまうと、立ち上がって吊り革にぶら下がる。

久しぶりに乗車したため、なんだか、居ても立っても居られない気分だった。


最寄駅に到着し、電車から降りると、徒歩五分の駅近マンションにたどり着く。

手っ取り早くエレベーターで二階まで上がると、いつもは滅多に見かけない隣人の大学生らしき人物と足早にすれ違った。

もしかしたら自分の大学の生徒かも知れないと思い、話しかけようかどうか迷ったが、宏幸は大人らしい太い声で挨拶する。

「こんにちは」

「…」

返事は返ってこなかった。別に、傷つきはしなかった。

そういうところもまた、大学生らしいといったところか、と受け入れられた。

部屋の鍵をあけてベランダに出ると、煙草を吸った。

彼の場合は大学の授業が終わった合間に吸うため、依存症気味だった。

いつの間にか煙草がないとやっていけない体質になっていた。

結花と別れてから1人になる時間が増え、性欲と食欲だけが溜まる一方だった。

だからこうして、何の心の関係もない女性と会うのは日常茶飯事だった。


宏幸の趣味はもう一つあった。それは、人気アニメのスマホゲームだ。スマホを横に傾けて操作する類のゲーム。よく、結花と一緒に(というか無理やり)やった。

それを暇つぶしに今からくる初めて会った女とプレイしようというのだ。

もちろん、結花のことは忘れていない。ただ合わなかっただけなのだ。嫌っても、苦手意識を持ったりもしていない。ただ、彼の恋心はいつの間にか消え失せ、会っても何とも思わなくなってしまった。

スマホを横に傾けるとRoading…の文字が浮かぶ。真っ黒い画面に彼の顔が映る。


ゲームをし、セックスをする。授業をする。食べて、寝る。こんな生活の繰り返しだった。

結花が目の前からいなくなった宏幸にとって、性行為ができるなら、顔だって、性格だって、どうでもよかった。

よく人前に立って話すときは緊張するから人を芋に例えなさい、と先生に言われるけれど、実際宏幸には人が芋に見えていたのかもしれない。


ピーンポーン

ドアを開けると、小綺麗に化粧をした、あまりパッとしない顔の女が立っていた。

まるで芋のようだ。


それからその女とゲームをし、ある程度交流を計った上で、心ここに在らずという感じの性行為をした。


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