06話 そして、星に神が、空に竜が、世界に人類が刻まれる。前編
初めてptを頂きました。本当にありがたいです。
今回は、作品の世界観を書き出し物なので、長くなったかもしれないです。
(さて、ジエルの授業も終わったし、次の準備でもするか)
机の引き出しをゴソゴソと探り、支給された教本を取り出す。
表紙には古びた建物や書物の写真が載ってある。
つまり教科は社会なのだろう。表紙が日本語じゃない言語で書かれているが、本の中身は普通に日本語みたいだ。
………解せぬ。
暫くすると、教室に一人の男性が入ってきた。目に布を巻き、煤まみれの本を手に持つ男。その背丈から見て彼は成人男性と思われる。
そういえば、あの目隠しを昨日見たことがある。
青と白色で彩られていてとても綺麗な品だと一目見て思っていたのだ。
「こんにちは、皆さん。本日の歴史の講師を務めるドゥーラ=カルマです。どうかよろしくお願いします」
彼は丁寧にお辞儀をすると、手に持っていた分厚い本を取り出して、僕らに尋ねてきた。
「初めに、質問なのですが、皆さんの世界には“神さま”は居るでしょうか?」
唐突な質問に自分は少し驚く。
「会ったことはありませんが、どこかにいるかもです!」
明るく応える天木さん。
しかし、それをハァと言いながら、アイリは否定してきた。
「宗教観を否定はしないわよ。けどそんな偶像存在する訳ないじゃない。世界は、数え切れないほどの、物理現象のみで作られてるの。……所詮、神なんて、誰かの物語なのよ」
アイリの発言は信仰の厚い人が聞いたら激怒するような物だ。
だが、彼女の不適切な意見に僕も同意見だった。
神とは信仰、そして願いのための偶像である。
信じる過程にこそ意味はあれど、本質的な信仰存在である『光』自体には意味がない。
『光』は降臨せず、人類の前には現れないからこそ価値があるのだと自分は思う。
もしも神などという物がいるならば、僕はきっと……………………何だっけ?
複雑過ぎる思考を使うとたまにボヤけてしまう。
アイリの答えを聞き、先生はなにかを理解したかの様に頷き、優しい声で語り始めた。
「なるほど、皆さんの世界では、ジエルさんから、聞いてたように、“神の否定”を行ったのですね。
しかし、私達の世界では、神さまは、確実に存在する、とされています。本日は、この世界の始まりの物語について教えようと思います」
彼はそう言って、黒ずんだ本を開き、魔術の世界の“在り方”を話し始めた。
ーーーー昔。そう、はるか昔。
時間が産声を上げるより前、色彩が溢れる前。
そんな遥か昔から宇宙は存在していた。
認めが難いほどの距離を持った世界があった。
旧く、永い距離を持って。
宇宙と呼ばれるべき古の空には暗黒の帷だけが満たされていた。
真空ですら無い、“絶対真空”とも呼べるような『無』に押しつぶされた世界がそこにあった。
『無』とやらに満たされているのか、そもそも、そんな物質さえないのか、
正直、そんな仮説は意味を持たない。
ただ、一つ、宇宙の原点がそこにはあった。
そこには当然、何もなく誰も存在するはずがない。
時間もないのでそもそも、その暗黒がどれほど長かったのかは計りかねない。
ーーーーしかし突如、平穏は崩れる。
概念も認知もない真っ黒な壁を何者かがこじ開けた。
輝きの星。又は神秘の卵とでも呼んでいいものが不遜にも世界を切り拓いた。
輝きはこの世界を正常なカタチに広げ始める。
と言ってもなにもない世界がテーマパークのように変化する訳ではない。じゃあ何が変わったというと、それは、“意味”である。
価値もなく、色彩を持てぬ虚無は宇宙開闢によって「黒」という“意味”を知った。
つまりは存在しないものが、空白に変化したのである。
これを人は空間、物間、またはスペースという。
次にカレはあらゆる星を生み出した。
純粋な端末、または重力に犯された岩石は空間に並べられ、銀河と呼ばれる。
星々は宇宙の距離を測るための証拠となった。
星の輝きと天体ガスは集まり、混ざって潰し合い、その理解不能な温度を捨て、劣化し、大地となった。
数多の星々が煌めき、重力という波によって支えられる。それを、“白き星”はそれを、ずっと眺めていた。
自分が創ったキレイな箱庭。
空間も時間もあるが意義はない。なにせ観測者が一人しかいない。
百億年時が進もうともそのたった一人が気にすることはないだろう。
…………しかし、原初の星はただ何も無い世界を、感情も無い自分を理解出来なかった。
美しすぎた箱庭を眺めるだけの時間を終えようと試みる。
こうして原初の星は、完全だった事を捨てた。永劫の世界を捨てた。
カレが起こせる権能をちぎり、“全能”と呼べる要素を徹底的に破り捨てていったのだ。
ーーーーそれこそが、『神』であった。
大いなる神は自分が捨てた“全能”の残骸の組み替えて、存在意義を与えてやった。
カレが創った存在は、人類からしたらまさに完璧な存在だっただろう。
まさに、崇めれる程度には。
しかし大いなる者から見たそれは、欠けていて不完全なモノだった。
だが、それを許容し、気付いたのだ。
…………不完全なものこそ美しいのだと。
大いなる者から生み出されたソレ……女神と後に呼ばれるモノは、神に語りかけた。
(何故、私をお創りになったのでしょうか?)
神は、ソレの持った物に気づいた。ーーそれが、別の宇宙でいう感情だと言う事にも理解した。
そのシステムに興味を持った。
だからこそ、神は自分の持っている力を再度、切り落とす。
そして、“女神”を真似てみることにしたのだ。
完璧な真似事。感情らしいものを手に入れて意志を返す。
(それはね、ボクは不完全な物が見たかったんだ。そう、ボクは君みたいな者を沢山見て見たい)
“女神”はカレの言葉を聞くと、
(ならば、大地に生命を築いてみてはどうでしょう?)と提案した。
大いなる存在はそれを面白いと思い、実行してみたのだ。
………神は、なんの、こだわりも無く、我々の星を作った。
分かりやすくいうと我々はたまたま選ばれたのである。
宇宙というキャンバスに一滴の星の力が落とされる。
星の雫は、落下中に、十四粒に弾け飛んだ。十四粒の雫の中に、意識が芽生えた。
微睡の存在たちは自分を造った者を認識する。
彼等はは産まれてすぐ、大いなる存在に憧れた。
…………しかし、神の御姿は自分たちには理解できないものだった。
諦めなかった。何とかしてその姿を理解しようと考えた。
ーーーー翼を持つ蛇。
ーーーー巨大な星型の生物。
ーーーー神々しい霧。
あらゆる奇跡の形容を行い、神を物質的な形に落とそうとした。
……そうすれば、自らもソレに近づけると。結果、彼らは一つの肉体に辿り着く。
その姿こそ、有翼の蛇であった。
彼らは、自分に、役割を付けた。こうして、十四柱の竜は星に降り立った。
それは星の容量を埋めた始原の翼。
こうして第一霊長たる『竜』はこの星を統べる存在となったのだ。
だが、十四柱の真竜が同時に存在出来るほど、星は全てを受け入れなかった。
彼らは星の覇権を握る為、自らの存在を証明する為戦いあった。
争いはたった七日間で収束した。
だが、永遠とも呼べる時間で繰り返された地獄とも、天国とも呼べるような闘争であった。
結果、この世の物理現象を削り出す事となる。
ーーーーそして、最後に残った、聖虹竜、核熱竜、海楼竜、天磁竜が、この世界を統治し始めた。
しかし当然、竜が争いあった被害は甚大だった。
嵐は起こり、天は割れて、自然が大地を飲み込む。終末のような世界がそこにあった。
星が今にも破裂しそうになり、神は星を抑え込む存在が必要だと考える。
それこそが、“あの”黒い流星だった。役割を得た第二の星が星に落ちる。
その流星は地上に着地するな否や『星』そのものと融合する。
この星を保護する、『星災自動防御機構』。
世界を守るモノの誕生によって初めて世界は安定したのだ。
読んで下さりありがとうございました。
次回は後編です。