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 04話 結局、魔術ってなに?

今回は天木凪輝ちゃん(ヒロイン)視点でのスタートです。

 

 私は天木凪輝(あまきなき)。高校二年生だ。

 

 私の人生は普通のものだった。

 自分は誰かの望むように生きてきた。親が優等生であれと言ったから成績優秀であり、友が気配りをするべきだと言ったからいらないところまで気を回す人間となっている。

 

 そのことが悪だとは思わなかった。自分でも、誰にでも優しい天木凪輝を気に入っていただろう。

 でも、寝る前になると毎日心の奥から声が鳴る。


「いつまで、他人の人形になっているのだ」


 あぁ、違う私はそんなんじゃない。そう否定するが、この言葉が消えた夜など一度も無かった。

 今年に入ってからは、内なる呪言は常に心で囁いている。

 

 言葉で押さえ込んできた親、悪意の連鎖でしか協調出来ない友。そんな彼らと共に生きることに耐えられなかった。

 

 だが、人間関係は一度作られると、変えられない。

 たとえば、高校デビューという言葉がある。

 昔の自分を捨て去り、新たな自分を演じることだ。

 しかし、転校でもしない限り演じる前の自分を知っている人もいるだろう。

 それと同じ。形成され切った人間関係は、そうそう変わる事などないのだ。

……それこそ、別の世界に行くでもしない限りは。

 

 私はある計画を企てた。

 親はいつも、夜遅くまで働いていた。だから書類に判子(ハンコ)や必要な情報を書くなんて簡単に出来る。

 私は無断で一つの書類にサインした。

 思えば親に刃向かったのはこれが初めてだった。

 まあ、その初めが世界規模の“家出”だったのだが。

 

 

 誰にも言わずに魔法のような世界に行く日。空港には同じくらいの男の子が(うずくま)ってた。

 なんとなく心配だったので声を掛けてみることにしたのだ。

「大丈夫ですか?」

 そう聞くと、彼はこちらの目をしっかりと見て返事を返してくれた。

 それが、どんなに嬉しかったか。

 些細な事だ。

 普段から私を見るものなどいなかった。彼らの瞳には自分の事しか写っていなかった。

 悪意を持って私を操ろうとする見透く欲が。

 だが、私ははっきりと男の子は“私”を見たのだ。その時初めて、宝坂叶一に興味を抱く。

 

 これが叶一(きょういち)君との出会いだった。

 

 ***


「じゃあ、まずは魔術は何で出来ているかを話していくね」

 ジエル先生は白亜(チョーク)を指で摘み、黒板をなぞりだす。

「さて、質問です!まずは魔術を構成する要素。何だと思う?」

 与えられた疑問。

 答えは分からないが、創作物(フィクション)紛いのものを司るのは、なんとか力とかそんな名前だろう。

「魔力ですかね?」

 因幡さんがハイッと手を挙げて発言する。

 すると、ジエル先生は両手で腕で丸を作る。正解の合図ということだろう。

「魔術はいろんな種類があるが基本、どんな魔術もエネルギーを使い発動する。そのエネルギーとなるのが、『(quinte)(ssence)』だ。」


 私はふと隣を見ると、叶一君が目を輝かせながら聞いていた。

 幼い子供のような笑みにどくり、心臓が鼓動する。

 

(カワイイ…っていけないちゃんと授業聞かなきゃ‼︎)


……急いで顔を前に向けた。

 

「 クインテッセンス。すなわち、真髄の名を持ったエネルギー。魔術の核であり、燃料にも変化する肉眼では見えない小さな物質だ」

 

「……それって、原子みたいなもの?」

 里香(りか)ちゃんが先生に質問した。彼女は中学二年生でこの世界に来たらしい。


「おっ!良い例えだね。そう、魔力は原子みたいなちっちゃな()なんだ。

 さっき、私の指の周囲が燃えたのは、魔力の薄い膜を張って、魔力を乱反射させると熱運動が大きくなったからなんだ。

……つまり、私は、魔力を燃料に焚べて、(熱エネルギー)に変換させたんだ。」

 

 そう言いながら、ジエル先生は、黒板に三つの大きい円とその真ん中に小さな円を書いた。

「そう魔術において重要なのは、魔力。

 そんな魔力は更に細かく見ていくと、魔素(エーテル)聖粒子(ホーリーアイテル)で構成されている。

 魔素(エーテル)は魔術のエネルギーそのもの、純粋なエネルギーだ。

 コレが三つあり、その中心に一つの聖粒子(ホーリーアイテル)が支えてる。

 魔力を操作できるのは聖粒子(ホーリーアイテル)があるからなんだ。」

 

 因幡さんは首を傾げて。

 「そもそも魔素(エーテル)って何ですか?何故、魔素はエネルギーを持っているんですか?」

 と聞いた来た。


 (確かに、そういう物って思えば、理屈を理解するのは、簡単だけど、知らない知識をそう簡単には飲み込めない)

 私がそう思っていると、ジエル先生が苦笑いしながら、

「確かに、全く知らない、物を『こうですよ』って言っても、理解し難いからね。

 今君たちにして貰ってるのは自分の常識(あたりまえ)とは、全く違う、常識(あたりまえ)を学ぶっていう

 大変な事だからね。

 ……う〜んじゃあ、『魔素とは何か?』これをできるだけ簡単に説明してみるよ」


「一回自分の常識を崩してみようか。君たちの星にもある光はあるよね。

 じゃあ…、()()()()()()()()()でしょう?」


「うーん、分からないなーー」

 私は、声を漏らしていた。分かる人はいるかと、辺りを見渡した。

  皆んなが悩み顔だ。


 しかしそんな中アイリちゃんは、ニヤッとしながら、

 「そんなの知ってるわよ光子って呼ばれてる、粒子でしょ。」

 と言った。

 

私は、「アイリちゃんすご〜い!やっぱり賢いんだね」

  と感嘆の声を漏らした。

 

すると、アイリちゃんは、「べっ別にこのくらい知ってるわよ!じっ常識でしょ‼︎」と言いプイと体を逸らした。

……照れてるのかな。

 

 ジエル先生も笑いながら、口を開く。

「うん、正解だよ! 流石はリーダーだ。

 光は電磁波を放出する光子で作られる。これが光がエネルギーを内包してる理由の一つだね。

 勘のいい人なら気づいたかもしれないが、魔素(エーテル)の正体は大量の電磁波を放出する、粒子なんだ。

 実質、()()()()()()()()()()()()、と言って良いかも。

  だから今、君たちの世界(化学世界)では、電気で魔術を再現する実験をしてるんだって」


…………ん? 何で向こうの研究なんて知ってるのかという疑問が思い浮かぶが、それを尋ねるより彼は早く立ち上がる。

 

「あっ、時間だ。

 じゃあ今日の授業はここで終わり。明日は魔術の種類について説明するからね」

 

 就業の鐘と共に帰っていった。

 

 

 

 


Q化学世界って何?

「銃と化学の世界」の略。要するに我々の世界(と見せかけただけの似た世界)。


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