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 02話 波乱の王室にて

前回の続きです。


「ちょっとアンタら遅いわよ! 皆様を待たせてるじゃない!」


 華奢な女の子はこちらを睨み叫んできた。……誰だろう?


「君は誰?」

 率直で簡素に疑問を少女に投げかける。


「何でアンタたちに名前を教えないといけないのよ! けど、しょうが無いから教えてあげる。

 私はアンタたちと違って一般枠じゃないの。

 国から正式に選ばれた使節団のリーダー、鍵山アイリよ!」


 アイリと名乗った少女は、彼女の持つ金色のツインテールの所為(せい)か、後ろで苦笑いを浮かべる老人に気づいてなかった。

 ゆっくりと口を開く、古老。その声は若々しく、目隠しでもしてみようものならきっと二十代後半と答えてしまうだろう。


「あー、えっと、話し始めて良い?」


「あっ、すいません! すいません!」


 彼女は今の自分が男の進行を妨げていると理解すると、ペコペコ頭を下げた。


「やぁ、『銃と化学の世界に生きる者達』よ。よくぞこの世界に参った。私はこの国、ゲンシュデュー・アゲートの国王、ヨセフ・ペタティラ・アゲートだ。貴方達をこの世界と共に歓迎しよう」

 

 王は威厳のある声で僕たちに告げた。

 重厚感のある扉が開くみたいな、威厳のある声。

 それは彼が本物の王様だと思わせるのに十分な印だった。


 「ありがとうございます。あなた方との文化交流をとても楽しみにしておりました。ここでの生活やコミュニケーションを通してこの世界の事を知っていきたいと思います」


 アイリは彼の呼び掛けに丁寧に応える。


 ーーーー驚いた、もっと乱雑な子だと勝手にイメージしてしまった。誰彼当たりが強いと思ってしまったが、とても真面目な子なだけなのだろうか。


「アンタ達も頭下げなさいよ!」


……そんな事無いかも。


***


「さて、堅苦しい話ばっかりではつまらないだろうし、何か質問はあるかな? ちょっとした事でも良いよ」

  ヨセフ王はさっきまでの張りのある声ではなく、優しい声でおっしゃった。恐らく、これが王様の()の性格だろうか。


「じゃあ、何で僕たちの世界を『銃と化学の世界』って呼んだんですか?」

 

 身長が高い少年、確か名簿に載ってた名前だと……そうだ、因幡(いなば)優斗(ゆうと)は躊躇も無く質問する。


 「ふむ。確か、それは……」


 「それはね、世界同士を繋ぐ時、二つの世界を区別する名称が決まっていなかったんだ。だから互いの文化性質を参考にしてね、君たちの世界を『銃と化学の世界』、こちらの世界を『剣と魔法の世界』と呼ぶようにしたらしい。とはいえ、まだ仮の名だがね」

 

 少年の疑問に答えたのは王ではなかった。老いを少しも感じぬどころか逆に若い声。そう、まさに僕と同じ位の歳の声が背後から聞こえた。

 

 後ろを振り向くと一人の少年が立っている。

 

 …………そう少年だ。

 

 僕たちしか子供がいるはずがない場所にそいつはいた。少年と言っても自分より少し背が高いが、それでも誤差の範囲くらい。彼は相当な立場の人物がいるにも関わらず平気な顔をしてこちらに向かったと思いきや、そのまま通りすぎて、ヨセフ王の側で立ち止まる。


 髪は歳に見合わない真っ白な白髪で、まるで翡翠の様に緑掛かっていた。

 翡翠という宝石は本来、無色透明な石で成分によって緑や白色になる。氷の如き白さを持つ翡翠を氷翡翠(アイスジェダイト)というが、彼の髪はまさしくその領域だろう。僕はその氷をこんな子供が持っている事に違和感を覚える。


 まぁ、髪色でどうのこうの決めつけるのは最近では差別的、らしいので僕はその違和感をしまって置くことにした。

 

「全く、相変わらずだね、キミは。人の言葉を取らないでくれよ。はぁ、まあいいか。丁度いいし」

 ヨセフ王はため息をつくと、一つ咳払いをして仕切り直す。

 

「最後に、皆さんの今後の予定を伝えよう。この交換使節団はお互いの文化や技術、生活などを深め合う事に比重を置いている。よって皆さんにはルーンテール学園の臨時クラスに入学し魔術やこの国の歴史を知って頂きたい。その為にそこでのんびりしているそこの奴に来て頂いた。……本当は良くないけどね」

 

 「やあ、こんにちは、少年少女。私は後ろにいる雑な紹介を寄越してきた王様から魔術やこの世界の常識等を教えることになった、“ジエル”と言う者だ。本業は()()()。よろしくね」


  やけに馴れ馴れしい口上を述べてジエルはお辞儀を一つする。

 『何故に王様に対して気安いんだコイツ』と考えていると、一つの声が頭の中で反響した。



(それはね少年。私がヨセフ王と友達だからさ!)



…………ナヌッ! コイツ、今直接脳内に語りかけやがった!


「宝坂くん、どうしたの?」

 天木(あまき)さんが心配そうに声をかけてくれた。……優しい。


「えーと、なんかジエルさんに、心読まれた」


「アンタたちうるさいわよ!」 


 アイリは怒って、叫んだ。……酷くね?


 それをジエルは愉快そうに眺めて、笑う。


「魔術の中でも珍しい、読心魔術ってヤツだ。ごめんね。みんな魔術を信じて無さそうだったから、こんな事も出来るんだよって、したかったんだ」


(そんな事で他人の心を読むのかよ。ジエルって人は)


「でも確かに私は魔術をまだ見てないからまだそこまで信じてないわよ。ただの化学や機械モドキじゃないの?」

 

 アイリは躊躇も無く、ずけずけと思った事を言ってきた。


「あはは、確かにそう思うかもね。まあ、見た事ないならそう言うのも無理ないかも」

 

 ジエルは彼女に返事をしながら、


「なら、明日から始まる授業の初回の内容は“魔術とは何か?” からかな?」

 

 上の空とばかりに独り言を呟き、そのままどこかへ帰る。

 アイリはフンッと息を鳴らし、僕らに話しかけてきた。

 

「じゃあ、話も終わった事だし帰りましょ。王様が個室を用意してくれたから、各自そこに向かって。」

 

 促されるまま僕はボストンバックを持ち、王様が用意してくれた個室に向かう。

 外を見ると、もう夕暮れになっていた。僕は旅の疲れもあり、寝る準備を済ませるとドカッっとふわふわなベットに倒れ、瞼を閉じた。

 ゆっくり、ゆっくりと視界が暗くなってゆく。眠気が夢を呼んできた。

 こうして異世界生活一日目は幕を下ろした。


 



      

 


《簡単人物紹介》



宝坂叶一(ほうさかきょういち)  ・主人公 

      ・魔法使いをかつて夢見た、優しい高校二年生 

      ・苦手だと思った人は心の中でナチュラルに呼び捨てするタイプ

天木凪輝(あまきなき)  ・ヒロイン的な少女

      ・ショートカットでKAWAI、高校二年生

      ・困ってそうな人はなるべく声を掛けるタイプ(助けられるかは置いとき)


鍵山(かぎやま)アイリ ・ツインテールトゲトゲ天才少女

      ・高校一年だが飛び級などを行い国から推薦枠として魔術世界に来た

      ・今の所主人公、ヒロインを差し置いてセリフが一番多いツイン娘


因幡優斗(いなばゆうと)  ・高校三年生

      


中学生くらいの背丈の少女 ・中学三年生

             


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