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(未完成)おれら育休サバイバー 〜育休ライジング

引越会社に勤める営業主任、本田幸村が主人公。 第二子を誕生を巡る育休問題に、支店長の片腕と言われる本田は対立し、敵対視する。 元トップ営業で、仕事がバリバリにできるパワハラ支店長、剛田に挑む。 育休は無事に勝ち取れるのか。仕事と家庭とのバランス、両立に悩む父親を巡る、愛と家庭と仕事の物語。

信念を貫く本田幸村にあなたは涙する。

【序章にしてクライマックス】

◯育休問題勃発!前代未聞の本田幸村の育休申請


「なんだ、これは?お前は本気で言っているのか?

これを見たら、幹部や社長は何て言うかわかるか、お前?お前を辞めさせるぞ」

 と、日本引越センター静岡支店、支店長の剛田は、社員からは「瞬間湯沸かし器」、「ケトル」と揶揄されている。いつものようにキレた。いや、いつも以上にキレた。


 日本引越センター静岡支店の営業課と事務課の事務所は、2階にある。学校の教室2つ分くらいの広さだ。1番奧にある支店長のデスクを間に、パワハラ支店長の剛田と営業主任の本田幸村が対峙している。


「それに、お前なんだ育休って?お前、仕事やる気ないのか?奥さんが育休取れば十分だろう。なんで男が育休取るのか意味がわかんねーよ。舐めているのか?」



「私は本気です、支店長。

 本気だから育休を申請しているんです。辞めさせたいならやってみたらよいんですよ。その代わりに誰が売上を立てるんでしょうか?

 第二子の子どもが生まれるんです。誰が家族と子どもを守るんですか?会社が守ってくれるんですか?家族を守るのは、俺しかいないんですよ。わかりますか?本田幸村という父親は、私しかいないです。


 この【育児休業申請書】に私の全ての気持ちと、なぜ育休を取りたいのかを書きました。育休申請が無理なら、今日、いや、今すぐ辞めますよ。」

 と、本田幸村は切り返した。


「お前、営業主任の立場でありながら、お前は仕事に対して、責任感はないのか?育休とか、この会社では前代未聞だ。それに前例がない。

 辞めたいなら辞めちまえ。仕事に対してやる気のない奴なんか、いらねぇーんだよ。」と、剛田支店長はいつものように罵倒した。


「前例がないから何だと言うのですか。私が前例を作るだけです。

 いつも都合よく、責任だの、責任感だの、よく言いますが、この際言わせてもらいますが、責任転嫁も甚だしい。営業個人に責任を追及、転嫁するのは、腹ただしいし、到底納得できるものではありません。」


 普段は、部下に慕われ優しいと評判の本田幸村は、まるで別人のように、冷静にかつ的確に意見をし、静かなる怒りと、なおかつ揺るぎない覇気を、後輩社員一同感じてしまう。

 本田の静かなる怒りは止まらない。


「育休すら取れない会社には未来はありません。会社に忠誠を尽くし、社長とか幹部から言われたことは、全ておっしゃる通りですとか、毎日深夜まで、滅私奉公して働くのはあなた方ぐらいで、我々社員、特に私には到底、理解できないです。  

 なぜなら、会社は守ってくれない。所詮、あなたも私も、働く駒の一部に過ぎない。」


「上司に向かって、なんだその口の聞き方はっ!!なぁ、てめぇはよぉ!!」

 剛田店長から胸ぐらをつかまれそうな勢いだ。やれるものならやってみろ、俺には切り札がある。と心の中で言った。


「お前には、とにかく失望した。

 将来、幹部候補と言われたお前が、その程度のやつだったとはな。家庭が大事なのはわかるが、仕事に対してもっと責任を持て。社会人失格だな。

 とにかく、この育休とやら、訳のわからん紙は俺が預かる。社長にはとても言えるはずがない。育休取りたいなら日本で1番の売上を取ってから言えや、バカヤロー」


「そもそも宛先は、あなたではなく社長宛です。

 それでは、日本で1番になったら育休は取れるんですか?じゃあ、うちの会社では1人しか育休取得できないんですね。それに、責任、責任んて、どんだけ責任っていう言葉好きなんですか、あなた方は。くだらない。」


 本田幸村は普段、剛田支店長には反論をしたこがない。いや、むしろこの会社では上司に反論や意見を言うのはご法度である。本田幸村はつづく。


「私には失うものがない。得てして、育休取得したとしても、できなかったとしても、この会社から去ろうとも、私には失うものがない。支店長、何故かわかりますか?」


「わかるはずがねぇよ、そんなもん。

 そもそも、わかりたくもねぇよ。お前の育休とやらは。むしろ奇跡的に育休を取れても、会社を辞めても、お前は失うことばっかりだろうが。何言ってんだ、てめぇは。馬鹿なのかよ。てめぇの賢い頭で考えれば、一目瞭然だろうが」

 と、剛田支店長はキレた。剛田はつづく。


「それに、仮に、っていうかそんなことはあり得ないが、お前が仮にだ、仮に育休で一ヶ月休んでる間の営業の穴埋はどうすんだよっ!!

 仲間に2倍見積行かせるのか?他の社員を犠牲にして、ただでさえ人がいないのに、1番のベテランのお前においそれとバカンス取らせるわけもいかないんだよ。育休でハワイ旅行にでも行くのか?」


 本田は呆れ果てつつ、怒りをにじませる。

「育休は休みではありませんし、コロナやインフルエンザのように突然休みを告げるのと理由が違いますますよね。一ヶ月以上より前に、育休申請してますし、むしろ半年以上前から出産日はある程度わかっているんですから、これほど計画が立てやすい欠員はないと私は思いますけどね。

 私が支店長だったら、快く育休を取らせてやりたいと思います。あとは私が上に掛合えばよいだけのことで。

 今のこのご時世、育休が取れない会社には新卒は敬遠しますよ。新卒男子の約8割は育休を取りたいとアンケート調査がありますし。

 新卒が入っても、配属ガチャでいきなり遠方に飛ばされ、一人暮らしを強いられ、無駄に家賃を払わないといけないわけです。 

 案の定、すぐに辞めますよね。3年以内に辞めた新卒が何人いますか、支店長!答えてください。」



「お前は、なんだ?あのドラマ、半沢直樹にでも影響受けたのか?俺に土下座でもさせたい魂胆か。

 新卒が辞めるのは、あいつらに気合と根性がないだけだろうが。最近のZ世代だかさとり世代だか、知らねぇけど、すぐ辞めるのは根性がねぇやつらばっかで話にならねぇな。お前も新卒の教育担当もやってらぁ、わかるだろうが」


「剛田支店長、残念ながら今は、令和です。昭和、平成、令和と2つも時代が変わったんですよ。支店長の昭和時代とは、まるで違う価値観なんです。高度経済成長していた時代とはわけが違う。

 いっぱい働いても、いっぱい売上をやっても、給料は上がらない。ボーナスも大して上がらない。あなた方のいた時代とは違う。

 気合と根性がないわけじゃあない。彼ら新卒は石の上にも3年という価値観もないのかもしれないし、3年も待ってられないんですよ。時間と機会損失になるから」


「たかが主任程度のやつが、生意気におれに説教しやがって。許せねぇな。

 さっき、お前、育休とれても取れなくても会社辞めても、失うものがないってほざいてたのはなんだ、言ってみろ。聞いてやる。」

 完全に勝利を確信した剛田支店長である。


「育休を取れば、夫婦ともに同じスタートラインに立つことができる。家事育児はもはやこの時代夫婦協働が普通だし、当たり前です。家事育児をすればするほど夫婦の関係は良いと調査があります。母親の愛情曲線です。育休で、よい夫婦関係と安定した家庭を築くことができる。

 それに対して、育休が取れなくても、会社を辞めても、これ以上のブラック企業はないので、底からはあとは上がるしかありません。ブラック企業を辞めることで、得れる方が多いんです。

 さらに、ブラック企業の実態を実体験したことは、今はマイナスだが、不本意ながらも私には長い人生の中で、プラスに作用する。」




<途中追加予定のため空白>




「長居は無用なようですね。剛田支店長。結論だけ聞かせてください。私の育休申請を認めてくれますか?それても拒否しますか?」


「育休は認めない。それがおれの答えだ。」

「本当にそれでいいんですね?剛田支店長。」

「育休は無理だ。残念だったな」

「あとから後悔するのはあなただ、支店長。

 それでは、今までお世話になりました。退職届、今日付けで今書いて提出します。あなたに拒否権はありません。辞めちまえといったのはあなたですから。以上。」 


 またたく間に、デスクにある備品や荷物など、片付け始め、何百枚とある名刺を自らの手で、本田幸村はシュレッダーにかけた。

 あっけにとられる剛田支店長と事務社員たちであった。全て本田幸村の計画通りになったのだ。しかし、これで本田の計画は終わりではない。本田幸村の計画は今始まったのである。


(※序章はまだ作成途中のため、随時追加します※)



本田幸村からの育休申請書(後に語り継がれる本田状)と、電光石火と急転直下の退職届の2つの紙が、後に大波乱を巻き起こすことになる。








「支店長、社長からお電話です。」と受付から言われた。

「社長から?人事部長には本田の退職のことは報告したんだが、まさかそのことか。いやまさかな」


「剛田くん、人事部長から本田くんが辞めたと聞いた。どういうことなのかね?人事をはじめ、大問題だ。仔細を説明せよ。」


「申し訳ありません。社長。本田が今日付けで辞めたいと言いまして。」

「あの本田くんが思いつきで辞めるとは思えん。私に嘘や誤魔化しは通用せぬ。仔細を説明せよと言っている」


「やはり貴様が辞めさせたのではないか。違うかっ!」


「なぜ私に育休申請のことを言わなかったのだ。説明せよ。」


「まだ本田くんには意向を聞いてないが、彼は次の人事で、取締役事業本部長になる計画だったんだぞ。ましては、剛田支店長の上司になる予定だったんだぞ。我々の事業計画が頓挫した。その罪は重い。」


「申し訳ありません。社長、恐れ入りますが、本田が取締役事業本部長ですか?初耳です。それもなぜ…。」


「本田主任とは、初めて合ったのが最終選考の面談だった。彼は面談の最後に何といったと思うか?」

「わかりません」

 

 「私を採用しないと後悔しますよ。まだ御社で入社するかは決めていません。最後に2つ質問があります。人を大切にする会社と聞きましたが、何を持って人を大切にするのか具体的に教えてください。

 もう一つは、男性社員で育休は何人取得しましたか?そして、なぜ育休取得者がゼロなのか」を鋭く突っ込まれたんだ。逆面接されたのは、本田くんが初めてだ」


「わしは度肝を抜かれた。あのときから本田くんは異彩を放っていた。志望動機は、人事課長と一緒に働きたいと思える人と出会ったからだそうだ。

 会社で何を目指すのかと、聞くと彼は、「ナンバーワンにも社長も目指しません」と言いのけた。

「会社の事業に携わりたい」と言った。それでは経営者や幹部を目指すのかと聞くと、「違います。社員でも会社の事業、運営に携わることができますから。結果的に、会社の中枢ということになるのかもしれません。」と本田くん言ったんだ。


 そして、入社1年目にして異例の「幹部候補者研修」に抜擢され、支店長やマネージャーが多い中、一営業社員で新人が参加したのは、剛田支店長も知っておろう。




 彼は、研修の最後になんと彼が構想している事業計画を提案してきたんだ。我々が抱えている現状を冷静に的確に分析されて、私を含め、執行役員も脱帽したのだ。企業批判ではなく、建設的な前向きな提案だった。支店長でさえ、そんなことをしないのに、本田くんは平然とやってのけだのだ。まるで、我々を試しているかのようだった。




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 私は引越会社最大手と言われる、日本引越センター、静岡支店に所属する営業主任の32歳で1児の父、本田幸村だ。

 家族以外には誰にも言っていないが、2回流産をしているため、長男の出産に立ち会えたときの、感動は2倍以上で、俺を父親にさせてくれた。流産したときは非常に辛かった。

 妻から、励ましてよとか、「私ばっかり辛い思いをして、こんなにショックなのに、何か言ってよ」と、問い詰められたときは一番辛かった。どうすれば励ましになるのか、これを言ったら傷がつくのではないだろうかと、言葉を選び、考えれば考えれるほど、なんて励ませばよいのか、余計に言葉がでなかった。

 

 あのときの絶望の淵にいたときと比べたら、長男が生まれたときは、心のそこから嬉しく、感動に、涙した。頭出てきたとき、はじめておぎゃーと声を聞いたとき、はじめて指を握ってくれたとき、子どもの誕生日がこんなに特別な記念日になるとは、子どもが生まれてからわかった気がする。




 引越業界は競争が激しい。引越見積サイトに引越見積依頼のボタンをクリックするや否や、一瞬で引越会社数社から一斉にフリーダイヤルから電話がかかってくる。決まり文句は、「近くに回っている営業がいますので、一時間以内にお見積りに伺います」だ。他社と同時あるいは同席での、相見積もりもあり、あと数分後にA社、1時間後にB社、2時間後にC社というように、競争が激化している。中には客になりきって成約になった営業が、他社に見積キャンセルをするくらいなのはよくある話。


(つづく)



※この作品はフィクションです。

※まだ未完成です。随時、ストーリーの追加を随所に 

 行います。


※あらすじ、あとがきを読んでいただき、


 ◯本田幸村は育休は取れたのかどうか、

 ◯なぜ、反対されるとわかっていながらも、ブラッ

  ク企業のパワハラ支店長に育休申請をするのか

 ◯なぜ本田は取締役事業本部長に抜擢されたのか


是非、楽しみにしていただけたらなと思います。

「本田幸村取締役 事業本部長、就任おめでとうございます」と、営業主任に就任した本田の1番弟子、竹澤から言われた。

 会社史上初の最年少の取締役であり、会社初の育休を申請した本田は、社員からも本社の連中からも、有名である。本田幸村、取締役事業本部長は早速、人事や教育部所にメスを入れた。


 ①男性社員の育休申請を全面的にバックアップ 

 ②男性の育休取得率100%の達成

 ③育休一ヶ月以上の奨励

 ④育休による欠員をサポートした社員に手当を出す

 ⑤管理職、主任以上の階級に育ボス研修を必修とする

 ⑥労働組合との連携と強化

 ⑦全国転勤の廃止

 ⑧働き方改革


 など、事業展開を徹底させた。


 男性社員の育休取得率は、100%となり、新聞やメディアや就職サイトなど、取材が絶えない。

 新卒の応募社員も中途採用も殺到し、人員も定着している。応募を断るので忙しいくらいだ。

 


「慇懃無礼じゃないか?竹澤くん(笑)でも、ありがとう。ところで竹澤くん、育休どうだった?」


「育休を取らせてもらって、本当によかったです。家事も育休中は、ほぼ自分がやって、妻にはなるべくゆっくりできるようにしました。おかげで、妻とは付き合ってるときと変わらず、関係も良好ですよ。」


「先輩、いや本田取締役、まだなんて呼べばよいかわかりません。話がいっぱい溜まってますから、また飲みにいきましょう。」

「子どもが小さいのに飲みに行って大丈夫なのかな?

じゃあ、まずランチ今日いくか。おれも久々に話したいと思っていたところだよ。

 育休は全てきっかけにすぎないってこと、よくわかったかな?おれも、君も、この会社もさ。

育休が全てではない。育休をきっかけにこの会社は変わったんだ。いや、会社は変わらざるを得ないんだよ。」


「まさに、本田取締役、先輩の発した育休申請書いわゆる本田状が全てを動かしたんですよね。先輩のおかげです。ありがとうございます。」


「おれの育休申請は、本田状って言われているのか(笑)

 育休申請はきっかけにすぎないんだよ。

 おれたちは育休サバイバーなんだ。

 立ち上がれ、おれたち。若者よ。掴み取れ、育休と本当の幸せを。」


「まさに、育休ライジングですね。本田先輩」


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