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我らが木陰荘へ歩く道
木曜は授業が少ない。早々に帰る道は、当然のように渉くんと同じ。
「進藤くん、今日はお昼どうするの?」
「え、んー……どっか食べに行こうかな」
「ふーん、そうなんだ」
いかにも誘いたそうな表情をしてる。でも一歩踏み出せないのか、目線を電柱にやったり、雲にやったり、忙しそうにしている。それはそうだろう。だってこれまで一度も、二人だけでご飯を食べたことなんてないのだから。
あぁ、この、求められそうになっている瞬間がたまらない。鳥肌が立つような、独特の気分。
それにしても、今日の一限はひやひやしたな。付き合ってるのかな、だって。私たちの関係はそういうものじゃないのに。いずれそういう展開があるとしたって、今はこの曖昧な、一線を引いた関係を楽しみたい。
「私は、今日家かな。昨日の残りもあるし」
「そっか」
ふふ、露骨に落ち込んでるな。あぁ、とっても気分がいい。