ショタコンロリババア対策会議1
「とりあえず、すずめさんは本当に危険だと思う」
喫茶店なんてほとんど初めてでそわそわしていたら、小鷹がそう切り出した。すずめ……鷺森すずめは我らが大家、ショタコンロリババアの名前である。
「やっぱり?僕もそう思うんだけど、どうしたものかと」
小鷹は思案顔でカフェラテをひとくち。重要な会議だけど、目の前のひとつひとつの動きが気になって、心が落ち着かない。ホットコーヒーの暖かさがぼんやりと手を伝って、心の中で深呼吸をする。気がつけば、ぽーっとコップの中のゆらゆらを眺めていた。
「……進藤くん、聞いてる?」
「ご、ごめん。もっかい言って」
「あのさ、私たちだけじゃなくて、大人の人にも聞いた方がいいんじゃない?今更だけど」
確かにそうだ。だけど……
「木陰荘の大人って、例えば誰?」
「それは……皆森さんとか」
「女子高生にお金渡してる怪しいひきこもりおじさんだよ?」
「……進藤くんって皆森さんと仲良いのに、すごい辛辣なときあるよね」
「個人的な評価と、社会的な評価は別だから……。それより、相原さんは?」
相原さんの名前を聞いて、小鷹はきゅっと眉をひそめた。そしてきっぱりと続ける。
「相原さんは絶対やめた方がいい」
「どうして?めっちゃ紳士的というか、ザ・しっかりした大人だと思うけど」
「いやいやいや。さっきのも見てたでしょ?絶対何か企んでたよ」
さっきのというと、相原さんの部屋から、様子のおかしい大家さんが出てきたことだろうか。確かに、これがショタコンロリババア対策会議である以上、敵性小型生物と接触の疑いがある相原さんを安易に巻き込むのは危険かもしれない。それにあの小型生物は、大家としての絶対的な権力(推定)を持つ。相原さんが何か毒されているということも考えられる。
それに、小鷹は以前から相原さんを警戒しているようだった。僕が知らない何かがあるのかもしれない。
「うーん。他に大人といったら……」
美人で背の高いパーフェクトな、しかし極めて残念な頭脳の木陰荘の姉さんが思い浮かぶ。
「ほ、ほら。美咲さんは夜勤あるし、日中も仕事か寝てるし」
何も言われてないのに、言い訳みたいな言葉が出た。
「そうだね。忙しいだろうし、ちょっと頼りづらいかも」
小鷹が人の悪口を言うところを見たことがないけど、その目は確かに泳いでいた。それも仕方ない。美咲さんはとても心優しい人だけど、うっかりで隣人の部屋の扉を破壊するウルトラ脳筋なのだから。
「でもそうすると、あとは大家さんくらいだし……」
「……」
木陰荘の大人たち、終わってます。