プロローグ
僕はストーカーである。小学生の頃に出会った一つ年下の女の子を、実に十二年も追いかけ続けている。彼女が年下だと進路を追いかけられないので、高校入学を一年遅らせようとした。頭の良い彼女の志望校と同じ高校に進学するために、さらに一年浪人してしまったが、追いかけるにはむしろ好都合だろう。どんな進路を選択するか、遠回しに探る必要が無くなった。
彼女は合理的で論理的な賢い女性だ。だけど察しが悪い。僕の本心に気づくことなく、こうして長年「腐れ縁」として付き合ってくれているから。僕はその偶然に甘んじて、幸せな日々を送っている。
私にはストーカーがいる。年上なのに小さい頃から私の後ろを着いてきて、でも決して隣に並ぼうとしない。
そんな奇妙で、気持ちの悪い後輩を、私は心の底から愛している。一度彼を振り切ろうと少し偏差値の高い高校に進学したが、彼は一年遅れながらもついてきた。大学はもっと難しいところに入学したが、今度は一年遅れのままついてきた。今思えば、それらは振り切ろうとしたのではなくて、無茶苦茶になりながら私だけのために頑張ってついてくる姿を見たかったのだ。
私は実家がそこまで太くない彼のために、あえて古くさい、安いが人気のないアパートに入居した。案の定、一年遅れて彼が同じアパート、木陰荘に入居したのがつい先月のことである。