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あなたに・・・・を

よろしくお願いします。

「カーペットの上でひざまづいて、紫のなった唇でぜえ〜ぜえ〜掠れた声しか出せなくて苦しんでいたんだよ」


 一孝さんはぎゅっと目を瞑っている。


「えっ?誰。どうなったの」


 彼は静かに目を開けて、私をみてくる。


「えっ! 私」


 自分を指差してアワアワしてしまいました。私には覚えがないんです。プールではしゃぎ過ぎて、家に帰って熱が出たことはあったような。

一孝さんの指が私の唇を抑える。


「無理に思い出さなくて良いからね。多少でも笑顔でいてくれるなら。俺も嬉しいよ」

「えっ、そんなにだったの?」

「だから、俺は本を読んだりして知識を頭に叩き込んだんだよ。もう、あんなに苦しむ顔なんて見たくないって」


 彼の顔が微かに微笑む。


「一孝さん、私…」


 私は自分の手を握り、彼を思わず見つめてしまう。 


でも、


   ビン


「痛!」


 あろうことが、一孝さんは私のお額を指で小突き、


「まっ、今回はカンナさんのお役に立ててよかったよ。美鳥には何もなくてホッとしてる」


 ってニッコリしてくるんですよ。


   もう、ずるいですよ。


「2人に遅れるよ。行こうか」


 いつの間にか2人は流れに任せて先に行ってしまっている。一孝さんも流れに逆らわすにスィーと歩いていってしまう。

でも、私は水の中で走る。流れに沿っても抵抗がすごいの。走りづらかった。それでも一孝さんに追いついて、


「えいっ」


 後ろから首に腕を回してしがみついたの。お腹を胸を一孝さんに合わせる。おぶさりに行きました。

 一孝さんは驚いて体を捻るけど、外れるもんか。足を彼の体にまとわり付かせ、くっついてやるんだ。


「美鳥、背中に柔らかいものが当たっているんだけど」

「当ててるの!。私の感謝と大好きと」


 思いっきりギュとしがみついて彼の耳の側に近づけて、


「愛してる」


 を聞かせてあげた。

 

 彼の耳が真っ赤に染まってきた。


 私だって頬が熱い。耳だって熱いの。

私の熱を伝えたくて一孝さんの後頭部に私の額を押し付けて、グリグリしてあげた。


「ちょっと、ちょっと美鳥、こそばゆいから、それ止めてください」

「やだって」

「ヤダモン」




 でも、でも、でも、ちょうど押し付けたときに薄く目が開いて見てしまった。首筋にある長い手術跡を……


「一孝さん、この傷跡って…」

「ごめん、嫌なもの見せたかな。ラッシュガードでも着れば良かったね。ごめん」


 一孝さんが手を後ろに回して首を隠そうとする。


「違う」


私は頭を振った。違う、違う。


「違う。これって手術の跡なんでしょう」

「そう、首の骨を折ったときに切った跡だよ」


 彼の声が沈んだ。

ぼんのくぼから首の付け根を超えて続いていくピンクの肉の盛り上がり、長いのが2本。短いのか8つ近くあり、中くらいのも4本ぐらいありました。


「見ても気持ちいいものじゃないだろ。俺から直接見れないんだよね。配慮足りなかったね」


 私は頭を振り続ける。


「違う、違う、違う、違う」


 彼は、振り返り、私を見ようとするのがわかったけど、


「この、ピンクの線があるからこそ、私は、今、貴方と話ができるの。わかる?」


 私は、頭を振るのをやめて、一孝さんの背にしがみ付く

 

 彼の耳の後ろに唇を近づけるの。


「この線があるおかげで、貴方の胸の鼓動を聞くことができる。貴方の背中に抱きつけるよ。貴方の腕を抱いて、甘えることができるのよ。そして」


 私は、ぼんのくぼに顔を寄せる。


   ❤︎


 一孝さんさえ知らない。お医者さん以外誰も知らない。一孝さんの傷。いえ、勲章にくちづけを。世界で唯一のものに初めてのくちづけをした。これで貴方は私のものなのよ。


「みっ、美鳥。何をしたんだい。首筋に柔らかい感触があったけど」

「うん、私が一孝さんの初めてをもらったんです」

「えっ、どういうこと?」


 今度は一孝さんがオロオロする。再び肩を左右に捻って、私を見ようとするの。ふふ


   でも、ダメよ。


 私はもう一度、そこに唇をつけて、ツゥッ。


「ちょっと痛いよ。何をした?」


 ピンクの小さい鬱血跡を残したの。これでこの手術跡は、私のもの。今から、そしてずっと唇をつけてあげる。今は、その最初の時。


「一孝さん、私は、このピンクの線が好きになりました。私も激しいですから覚悟してね」

「ちょっと、訳わかんないんだけど」

「ふふ、いーの」


 一孝さん、貴方には見えないけど私は、傷跡に頬擦りをしています。



「美鳥、何、風見さんいじめてるの。彼、困ってるよ」

「ごめん、もう少し幸せに浸らせて」


 あまりに、遅くて痺れをきたしたのだろう。先に行ってしまっていたミッチが戻ってきて抗議してきたの。


「もうすこしで波のプールで大波が始まるんだから、ここを出ていかないと間に合わなくなるの」

「えっ、そんな時間経ったの? 一孝さん。お願い。このままー私を連れてって」 


 彼の耳元に唇を寄せて頼んでみる。


「流石にそれは……きついかなぁ」


「私が重いとでも…乙女になんて言葉いわせるんですかあ」

「違うよ。幾つになってもおんぶかって笑われないか?」

「ゔっ、それもそうかも」

「て、ことで。よっ」

「キャン」


 一孝さんが手を後ろに回して指先で脇腹を突いてきたの。甘い刺激が脇腹から上がってきて、しがみついていた手足を緩めてしまう。

 そのまま、足が降りてしまって一孝さんの背から降りてしまう。 


   あ〜ぁ


「じゃあ、もう一回行ってみようか」


 ミッチの掛け声に私たちは流れるプールを出て、2階に上がり、波のあるプールへ。

ありがとうございました

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