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3(ララ視点)

読んでいただき、ありがとうございます。


※今回もララ視点です。設定は変わらずゆるいので、気楽に読んで下さい。


※2022.12.27にシリルとクライブの台詞を追加しました。

(投稿してすぐに編集したつもりが出来ていませんでした。すみません)

中庭での断罪イベントが始まる。


最初はうまくいっていた。

しかしセドリックが現れ、『レティシアがいじめるのは僕だけだ』という訳のわからない発言により、断罪イベントはおかしな方向へと展開していく。


(どうして私がレティシアの犬になりたいの?え?セドリックはもう犬だったの?それより犬って何?)

(どうして、いじめイベントが私の自作自演だってバレたの?)

(セドリックは攻略対象者でしょう?それなのに、ヒロインの私が好きじゃないってどういうこと?)


数々の疑問が脳内に沸き起こり、そのどれもが理解出来ず、気付けば私は無言でその場に座り込み、立ち去るレティシアとセドリックを見送ることしかできなかった。


そして、セドリックによって暴かれた私の自作自演の証拠は学園長の元へと提出され、私は学園長室に呼び出されることとなった。



◇◇◇◇◇◇



学園長室の執務机、その革張りの椅子に腰掛けているのは、銀髪を後ろに撫でつけ、ルビーのような赤い瞳をこちらに向ける三十代前半の美丈夫、この学園の学園長アルバートだ。

その射抜くような冷たい眼差しは、まさに支配者という言葉に相応しいものだった。


私はそんな彼の視線から逃れるように、俯いたまま両手をもじもじとさせながら立っている。


実はこのアルバートも『君に傅く』の攻略対象者だ。

ただし、普通の攻略対象者とは違い、他の四人の攻略対象者全ての好感度をMAXまで上げることでやっと登場する、隠れ攻略対象者だった。


(まさか、こんな形で会うことになるなんて……)


実は彼の攻略も私は狙っており、その為に個別ルートには入らずに四人の攻略対象者全員と行動を共にし、好感度を上げていた。


アルバートは学園長という立場だが、四大公爵家の内の一つ、ミュラー家の当主でもある。


貴族の子息令嬢達が通う学園なのだ。

そのトップである学園長が生徒より爵位が低いと、問題が起きた時に困ることとなる。

だから、王族に次いで地位の高い四大公爵家のいずれかが歴代の学園長に就任している。


ちなみにセドリックも四大公爵家の内の一つ、バートランド公爵家の子息ではあるが、まだ正式に跡目を継いではおらず学生でもあるので、攻略対象者達の中ではアルバートが一番の権力者だった。


(ううっ、視線が冷たい……)


さすが、大人でドS担当の隠れ攻略対象者。彼の視線に晒されるだけで心臓がドキドキして煩いくらいだ。


しかし、そんな私の気持ちなんて全く知らないアルバートが、平坦な声で淡々と告げる。


「バートランド君が提出してくれた、君に関する報告書は読ませてもらった。そしてこちらでも調査をした。実際に嫌がらせを受けていた点は同情する。その件の加害者にも罰を与えることを約束しよう。しかし、君が自作自演で他の生徒も巻き込んで、カルデーラ嬢に罪を擦り付けようとしたことは看過できない。これでは、君に嫌がらせをした者達と何ら変わりない」


全く反論のしようもないド正論で叱られた。

隠れキャラとはいえ、攻略対象者には変わりないのだからと潤んだ瞳で媚を売ってみたが、冷えた目で睨まれただけだった。


「もう次は無いぞ」


そんな言葉と共に、私には一週間の停学処分と反省文が課せられた。

こうして私は親指の爪を噛みながら、こんなはずじゃなかったと、一人廊下を歩くはめになったのだった。



◇◇◇◇◇◇



一週間後、気持ちを新たに私は学園へと登校する。


停学中に私は考えを改めた。

もう、逆ハーは諦めようと。

レティシアとセドリックの仲を割くのは難しそうだし、なによりも、自分のことを犬だとか嬉しそうに言うセドリックの意味がわからない。


(ゲームのセドリックはどこに行ったのよ!ちょっと強引な俺様なところが格好良かったのに!)


それもこれもきっとレティシアのせいだ。

もうセドリックのことは忘れて、これからは残りの三人との恋愛を楽しもう。


そう思っていたのに……。


「あれ?エドガーはどうしたの?」


昼休み。

いつもは攻略対象者の四人と共に昼食をとっていたのに、今日はクライブとシリルしか来ていない。

セドリックはもう来ないだろうことは予想がついていたが、エドガーはどうしたのだろう?


「ああ、エドガーは、その、謝罪に行ったようです」

「謝罪?」

「先日の冤罪の件でレティシアに……」

「え?」


私から視線を逸らし、言いづらそうにしながらもクライブが教えてくれた。


先日の冤罪の件とは、未遂で終わった断罪イベントのことだろう。

それにしても謝罪とは?

私は一週間の停学処分を受けたが、彼等は私の自作自演を知らなかったとして、厳重注意だけだったはずだ。

この一週間の間にレティシアに謝罪をする機会がなかったのだろうか?


腑に落ちない気持ちのまま食堂に向かうと、そこでよく知る声が聞こえてきた。


「エドガー!なんでまたレティシアに会いに来てるんだよ?」

「会いに来ているのではない。謝罪をしに来ているのだ」

「だから、なんで毎日毎日謝罪に来るんだよ!レティシアは謝罪を受け入れたんだから、もういいだろ?」

「いや、それでは俺の気が済まないのだ」

「はあ?」


セドリックとエドガーが立ったまま激しい言い争いをしている。

そんな二人の側でレティシアは一人席に着き、素知らぬ顔で昼食を食べている。

すると、エドガーがレティシアに近付く。

すかさず、セドリックがそれを阻止しようとするが、レティシアが無言で左手を挙げてセドリックに『待て』のジェスチャーをする。


「レティシア、これを。謝罪の印に受け取って欲しい」

「まあ、素敵な花束ねエドガー。あなたが選んだの?」

「ああ。その、君に似合うと思って……」


その様子をセドリックが今にも飛びかかりそうな、鬼の形相をしながらも黙って見つめている。

レティシアの『待て』のジェスチャーが続いており、セドリックは我慢しているようだ。


「でも……これじゃあ、受け取れないわ」

「えっ?その、花は嫌いだろうか?なら、別の物を」

「そうじゃないわ。謝罪の品をあなたは私より高い位置から渡すの?」


座って食事をしているレティシアに、立ったまま花束を渡そうとしたエドガー。


「これは失礼をした」


エドガーはレティシアの言葉に従い、その場に跪く。


「もっと低く」


レティシアの言葉にさらに身体を縮め込むエドガー。


「もっとよ」


元々背が高く、たくましい身体をしているエドガーは苦しそうだ。

そんなエドガーをとても愛しげにレティシアは見つめている。


「いいわよ」


レティシアの声に、エドガーはその苦しげな姿勢のまま、花束を差し出した。


「ありがとうエドガー。あなたも花束もとっても素敵だわ」


そう言った後、そっと頬を撫でられたエドガーは、その瞳を潤ませてレティシアを見上げた。


「おい!もう謝罪は済んだだろ?これから僕とレティシアの昼食の時間だ。邪魔するな!」


『待て』を解除され、レティシアに優しく頭を撫でられたセドリックがエドガーに強い口調で迫る。


「それに花束なんか邪魔になるような物持って来るなよ!家に送ればいいだろ?」

「直接渡したかった」

「はあ?」

「では、俺も昼食をとろう」

「勝手にしろ。……おい、なんでレティシアの隣に座る?」

「食堂の席は自由だ」


再び激しい口論になった二人をレティシアは楽しげに眺めている。


(な、なんなのよ、これ。どうしてエドガーがレティシアに……)


理解が追い付かない。


「ねぇ、エドガーったらどうしちゃったのかしら?」


私がそう言って、クライブとシリルに同意を求めるように振り返る。

すると、二人は顔を赤らめ、熱っぽい視線をレティシア達に向けていた。


「クライブ?シリル?」

「あ、ああ。本当にエドガーはどうしてしまったのでしょうね」

「そうだよね。あんなだらしない顔しちゃってさ」

「………」


なぜだか嫌な予感しかしない。


私はクライブとシリルの意識をレティシアから引き離す為に、なんとか彼等の気を引こうとした。

と、そこで気付いてしまったのだ。


(どうやって気を引けばいいんだろう……)


今まではゲームのヒロインであるララの行動をなぞればそれで良かった。

だけどもう好感度を上げる為のイベントは全て終わってしまった。その集大成である断罪イベントも失敗だった。

だから、この後のヒロインであるララの行動が私にはわからない。


そうして私がモタモタしている間に、その悪い予感は見事に的中してしまう。

まずはシリルがレティシアの元へ通うようになった。


「彼女のような人には今まで出会ったことがないよ。彼女の側は刺激的で退屈しないんだぁ」

「……」


頬を真っ赤に染め、そう呟くシリルを見て思う。

彼は、元平民の貴族らしくないララの行動に新鮮さを感じ「君と居ると退屈しないよ」とつい最近まで言っていたはずなのに……。


そして最後の砦であったクライブまでもがレティシアの元へと通い出す。


「まさか私のことをあんな風に褒めてくれる人が居るとは思いませんでした」

「……」


メガネの奥の瞳を潤ませて、少し照れたようにそう呟くクライブを見て思う。

彼は幼い頃から賢く優秀で、褒められることに慣れていた。

だからこそ「勉強が出来ることが本当に賢いとは思わないわ」と言ってのけたララに興味を覚えたはずではなかったか?褒められて喜んでるよね?


(どうしたらいいの?このままじゃ……)


レティシアに群がる四人を見つめながら、私は考え続ける。


(私の攻略対象者なのに……。そうだわ!)


レティシアに対抗できる人物が居ることに気付いた私は、すぐさま行動へと移すことに決めた。

なんとか書けました!

次話はレティシア視点に戻ります。

なるべく明日か、明後日には投稿する予定です。


よろしくお願い致します。


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