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2(ララ視点)

読んでいただきありがとうございます。

連載版は全部で4話程度で終わる予定です。


※このお話はララ視点となります。連載版も変わらず、ゆるい設定ですので、気楽に読んで下さい。

※誤字脱字報告いつもありがとうございます。助かっております。

(なんで、なんで!一体なんでこんなことになっちゃったのよ!)


学園長室から退室した私は、気付かぬうちに右手の親指の爪を噛みながら廊下を一人で歩いていた。


(私がヒロインのはずなのに!)


心の中でそう歯噛みする。

そう、ここは乙女ゲーム『君に(かしず)く』の世界で、私はそのゲームのヒロインのはずだった。


何故そんなことがわかるのかというと、それは私が転生者だからだ。

前世では、漫画やゲームが大好きな冴えない女子大学生だった。


だからこの世界に転生し、自分がヒロインのララであると気付いた時は、天にも昇る心地だった。

だって、あの画面の中のイケメン達と実際に恋愛ができるのだから。


平民として暮らしていたララが、実は男爵家の娘であることがわかり、ゲームの舞台となるこの学園に編入するところから物語は始まる。


攻略対象者は、四人。


短く刈り上げた藍色の髪に黒い瞳、背が高く筋骨隆々で実直な騎士団長の息子エドガー。


長い深緑の髪を一つに束ね、銀縁の眼鏡をかけた秀才で宰相の息子クライブ。


背が低くオレンジの髪に焦げ茶色の瞳、女の子のようにかわいい顔立ちの神官長の息子シリル。


そして、金髪に明るい空色の瞳、ちょっと強引で俺様な公爵家の息子セドリック。


この四人のイケメン攻略対象者たちと、ヒロインであるララが様々なイベントで交流し、好感度を上げながら、楽しい学園生活を送っていくのだ。


私は彼等に出会える日を待ち続けた。



◇◇◇◇◇◇



やはりというかゲームの設定通りに、ある日男爵家の遣いという男性が我が家を訪ねて来て、私はホラーク男爵家の娘であることが発覚した。

あれよあれよという間に、私は男爵令嬢として貴族達が通う学園へと編入が決まった。


待ちに待ったゲーム開始。

私は期待に胸を膨らませながらも、ゲームのヒロイン通りの行動をする。

エドガーにも、クライブにも、シリルにも無事に出会うことが出来た。

ゲームで見た通りの姿と声と台詞に、私は心の中で歓声を上げていた。


そして四人目の攻略対象者、セドリックとの出会いのイベントが始まる。

と、ここで、ゲームと違う展開に首を傾げることとなった。


(どうして、レティシアが出て来ないの?)


セドリックとの出会いイベントでは、彼の婚約者であり、このゲームの悪役令嬢であるレティシアが出てきて、ララとセドリックとの会話に割って入るはずなのだ。

それなのに、最後までレティシアが現れることはなく、普通にセドリックとの会話は終了してしまう。


初めてのゲームとの展開の違いに焦った私は、立ち去ろうとするセドリックを引き止め、婚約者のレティシアについて聞いてみた。


「僕の婚約者?ああ、それならちょうどあそこに」


セドリックの視線の先には、中庭のベンチで一人ぽつんと本を読む、三つ編みおさげの赤髪に分厚いメガネをかけた地味な女子生徒がいた。


「あ、あの方がセドリック様の婚約者ですか?」

「そうだよ」

「あの方のお名前って?」

「レティシア・カルデーラだけど……」


(ああああ、あれがレティシア?あんな地味なのが悪役令嬢レティシア?)


ゲームでは、ウェーブがかった長い赤髪に少しツリ目気味な翡翠色の瞳、色気も自信もたっぷりな美しい令嬢だったはずだ。

それなのに、実際の彼女は見る影もない。


「どうしてあんな格好してるのよ……」


思わず呟いてしまった声をセドリックに聞かれているとは思いもせず、私は悪役令嬢レティシアについて調べることに決めた。



◇◇◇◇◇◇



数日かけてレティシアについて調べてみたところ、見た目以外にもゲームのレティシアとはあまりにもかけ離れていることが発覚した。


ゲームのレティシアには取り巻きの女子生徒達が複数人おり、その取り巻き達を使ってララをいじめていた。

しかし今のレティシアは取り巻きどころか、親しい友人も作らず、だいたいいつも一人で過ごしている。


それに、婚約者であるセドリックとの仲も、ゲームでは嫌がるセドリックにレティシアが付き纏っていたのだが、二人は良好な婚約関係のようだった。


(おかしい……。こんなにもゲームと違うだなんて、おかし過ぎる)


レティシア以外はゲーム通りなのだ。

だからこそ、レティシアだけが違うことが気にかかる。


(何なの?バグなの?それとも……)


私はある可能性に辿り着く。

悪役令嬢レティシアは私と同じ転生者ではないのか?

だから、悪役令嬢らしくない格好や行動をして、断罪から逃れようとしているのではないか?


(きっとそうだわ!それなら辻褄が合うもの)


そうすると、私にとっては困った事態になってしまう。

このゲームの攻略対象者とのイベントは、ほとんどがレティシアの嫌がらせによるものなのだ。

彼女からの嫌がらせによって起こる事件を共に解決したり、時には慰めてもらったり、そんなことをしていくうちに攻略対象者との好感度は上がっていく。

つまり、レティシアが私をいじめなければ、攻略対象者の好感度を上げることができないのだ。


(どうしよう……)


断罪から逃れようとしている今のレティシアが、ゲーム通りに私をいじめるとは考えにくい。

しかし、いじめられなければ私はイケメン達と恋愛ができない。


悩みに悩み抜いた私は一つの妙案を思い付く。

そうだ、レティシアが動かないのならば、私自身がレティシアの代わりに動けばいいのだと……。



◇◇◇◇◇◇



私はせっせとゲーム通りのイベントを起こした。


ある時は自分の教科書を破り、またある時は制服のスカートを自分でインクで汚し、母から贈られた大切なネックレスを自分で隠して攻略対象者達と共に探したりもした。


最初こそセドリックだけはゲーム通りではなかったが、結果的に他の攻略対象者と同じように、いつも私の側にセドリックは居るようになった。

自作自演とはいえ、ゲーム通りのイベントが起きたことで攻略対象者としての役割を果たしてくれていた。

おかげで私も心置きなく、イケメン達と交流し好感度を上げていく。


(ふふっ、楽しー!やっぱりヒロインは最高ね。悪役令嬢が仕事しなくても、なんとかなるもんだわ)


攻略対象者達も、イベントを起こすごとに私に好意を寄せ、悪役令嬢レティシアへの憎悪を募らせていく。

セドリックなんかは、私がレティシアの悪行を告げるたびに、私を励ましたり気遣う言葉をかけてくれる。

しかし、婚約者という立場のせいか、レティシアに対する憎悪を口に出すことはなかった。


(でも表情はゲームと同じなのよね)


ゲームのセドリックは、レティシアが現れ纏わりつかれるたびに眉間にシワを寄せ、不機嫌な表情をしていた。

私がレティシアの悪行を告げると、その時と同じ表情をするのだ。

つまり、口には出さないがレティシアに怒りを感じているということだ。


(まあ、なんとかシナリオ通りに進んでるわね)


しかし、ここでまた予定外の出来事が起こってしまう。


「もう、我慢ならん」

「これ以上レティシアの悪行を見逃す訳にはいきませんね」

「ねえ、もうレティシアをやっつけちゃおうよ」


断罪イベント直前の台詞を攻略対象者達が口にする。


どうやら、思っていたよりもハイペースで自作自演のイベントを起こしてしまったみたいで、卒業パーティーで起こるはずのレティシア断罪イベントが前倒しになってしまったようだ。


「み、みんな、ちょっと待って。私なら平気だから」


そう言って止めてみたが、攻略対象者達は聞く耳を持ってはくれない。


(ど、どうしよう?止めたほうがいいよね?でも……)


今でも、卒業パーティーでも、レティシアの断罪イベントに変わりはない。

他の自作自演のイベントだって時期は違っても、きちんとイベントとして成立したのだから、断罪イベントだって大丈夫なはずだ。


(まあ、早いか遅いかだけの違いだし、断罪って言ってもレティシア死ぬ訳じゃないし)


レティシアは断罪された後、貴族籍を剥奪されて平民となるのだ。

前世の記憶持ちならば、平民でも生きて行けるだろう。


そう考えた私は結局、攻略対象者達と共に早めの断罪イベントを起こすことに決めた。

風邪ひきました。

なるべく明日には投稿予定ですが、ちょっと時間が遅くなるかもしれません。

冬休みが始まってしまう……。

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