十六章 殴り返すぞ?はいで答えろ。
西支部より、武装集団が向かってくる。
間違いない、リュウガの身柄を拘束するための戦力だろう。
「ランハーンのドアホが……血迷いよったかッ」
リュウガは畳を踏み付けるように立ち上がると、神棚に納めていた薙刀を取った。
「スミレ!お前さんは客人を"裏口"から脱出させい!その後で、西支部に侵入してコテツを捜して連れて来い!」
「トウゴウ様はどちらへ!?」
薙刀を手に取ったリュウガを見て、スミレは跪くことも忘れて立ち上がる。
「ワシは東支部のギルドマスターや。ケツ捲って逃げるわけにゃいかんのや」
「ですが……」
喰い下がるスミレに、リュウガは彼女の頭をそっと撫でる。
「なぁに、お前さんがいっちょ前になるまでは死ねるかい。そいつが、コテツとの男の約束やからな」
行け、と目で伝える。
ほんの少しの迷いの後、スミレは頷いて一礼し、一真達三人に向き直る。
「お三方、こちらへ」
彼女の催促に、三人は後を付いていく。
それを見送ってから、リュウガは薙刀を片手に集会所の正面口から出る。
リュウガの周りを、東支部のコントラクター達が武装して付き従う。
「すまんなお前ら、こんなしょーもないガキの喧嘩に付き合わせて」
短く謝罪の言葉を口にするリュウガだが、コントラクター達は皆得意げに笑う。
「いいっこなしですぜ、首領」
「ランハーンのアホなんぞ、軽く捻り潰してやりますよ」
「久々の喧嘩だ、思いっきり暴れましょうや」
口々に戦意を見せ、ランハーンへの悪口を言う。
リュウガは頼もしさにニヤリと口の端を曲げる。
集会所を出てすぐの場所で、ランハーンとその彼に付き従う西支部のコントラクター達が殺意を向けて待っていた。
「これはこれはトウゴウマスター。コテツマスター暗殺の件で、自首しにでも来ましたかな?」
下卑な笑みを浮かべるランハーンだが、リュウガはそれを真っ向から切り捨てる。
「そらこっちの台詞じゃボケェ。何の権限もあらへんおどれがこのワシを拘束するってな、立派な反逆罪や。それを知らんとは言わせへんぞ、ランハーン」
睨み付けるリュウガに、ランハーンは不快そうに目を細める。
「……では、カズマ・カンダの受け渡しにも応じないと?」
「応じるわけあらへんやろが。おどれらがけしかけたしょーもない横槍のケツ拭きしてくれた恩を、仇で返す言うんかい。義理不義理の分別すら付かんくなりよったか。哀れやのぅ、ランハーン」
心底から見下すリュウガの言葉に、ランハーンはギリリと歯軋りする。
「交渉は決裂だな……やれ!」
彼の指示によって、西支部のコントラクターが一斉に武器を構えて突撃する。
「この首、簡単にゃくれてやらんぞ。覚悟せぇや!」
リュウガが薙刀を振り回してみせると、東支部のコントラクター達もまた迎え撃つ。
一方、スミレの手引きによって集会所の"裏口"から外へ出る一真、ユニ、ラズベルの三人。
ふと、正面口の方が騒がしくなる。
「始まっちゃったみたいね」
ラズベルは、抗争が始まったと見た。
「わたしはこれから西支部を調べに向かいます。カズマ様達は、このままヘイムダルへ」
スミレは西の町の方へ視線を向ける。
このままヘイムダルへ、と言うことは、今の内に逃げろと言っているのだ。
「待ってくれスミレちゃん」
しかし、一真はそれを良しとしなかった。
「確かにこれはソンバハルの問題だから、余所者の俺達には関係無いのかもしれない。でも、今こうして争いが起きてしまったなら、それを見過ごすなんて出来ない。……だから、手伝わせてほしい」
「うんうん、私もカズくんと同じだよ」
一真の言葉にユニも同調する。
「ま、このまま黙って帰ったら父さんに大目玉を食らうし、あたしも手伝ってやるとしますか」
仕方無いわね、と言うラズベルだが、本心から渋々と言うわけではなさそうだ。
「いえ、ですが、お客様を面倒事に巻き込むわけには……」
言い澱むスミレだが、一真は優しく微笑みかけた。
「こう言う時はお互い様だ。一人で無理しないで、素直に手伝ってもらっていいんだよ」
「あ、あの、その……」
一真の言葉とその気遣いに戸惑うスミレ。
それを一歩後ろから見ているユニとラズベルと言えば。
「(うわー、出たよ。カズくんの『天然トラップ』。誰にだってあぁいうことしちゃうんだから、見てる方としてはやきもきしちゃうよ……)」
「(あちゃぁ、こりゃあのスミレとか言う娘もコロッとオチたかもねぇ……計算じゃなくて素でやってるんだから怖い男だわ、カズマ)」
声にこそ出ていないが、好き勝手なことを言う二人。
「で、では……頼っても良いと言うことでしょうか?」
戸惑いながらも確認をするスミレ。
一真の答えは当然、
「もちろんだ」
一悶着(?)を終えてから、早足で西支部へと向かう四人。
西支部の集会所の屋敷は、やはり武装した門番がいる。
強引な正面突破は時間がかかるし、騒ぎを聞きつけられて増援を呼ばれる可能性もある。
ではどうするのかと言うと。
「ラズベル様。ここから弓を射て、門の前に落ちるようにお願いします」
「ん?……あぁ、なるほどね。了解よ」
スミレの進言に、その意図を読み取ったらしいラズベルは背中のラックから弓を抜き、放物線を描くように矢を放った。
ヒュゥンッ、と言う風切り音と共に、ラズベルの矢が門番の目につくところへ突き刺さった。
門番二人はそれに気付いて、訝しむように矢を凝視し――た瞬間には既に意識を刈り取られていた。
気絶して倒れる門番の背後には、いつの間にか回り込んでいたスミレが、手刀を構えていた。
ラズベルが矢を放つことで門番の注意を向けさせ、その隙に背後へ忍び寄り当身を喰らわせたのだ。
「さ、今の内に」
気絶させた門番を手早く縛り上げて門の脇に転がしておき、四人は屋敷へ進入する。
中にはまるで人がおらず、がらんどうそのものだ。
ランハーンの手下は全て、抗争のために追従していったのだろう。
一真達にとってはその方が都合が良い。余計な争いをしなくて済むのだから。
「こちらです」
スミレが屋敷の奥にある、地下へと続く階段を見つける。
ここが、違反者を拘束する留置所――と言うよりは牢屋だろう。
陽の光が差さないため、備え付けてあるランプの灯りを頼りに階下へ降りていく。
コツ、コツ、コツ……と足音が石壁に反響して、どこか不気味に響く。
地下へと降り立つと、ランプの灯り越しに鉄格子が見える。
鉄格子はいくつかあるようだが、そのどれにも誰もいない。
「いないな……もしかしてハズレか?」
一真は注意深く鉄格子の中を見やるが、やはり空のままだ。
「いないと分かれば長居は無用よ、急いでトウゴウギルドマスターに加勢しに行くわよ」
早々に見切りをつけようとするラズベルだが、ふとユニが何かに気付く。
「ねぇスミレちゃん、こっち照らして」
「どうされましたか、ユニ様」
ユニの声に、スミレがランプの灯りを近付ける。
すると、ユニの足元に棺桶が転がっているではないか。
「……ッ!?」
スミレは恐る恐る棺桶を開けようとするが、それをユニに止められる。
しゃがみ込み、棺桶に手を付ける。
「……この棺桶、多分眠りの魔術が使われてるっぽい。ちょっと解いてみるね」
そう言うなり、ユニは周囲に緑色の魔法陣を展開し、詠唱を開始する。
「――覚醒の刻よ、彼の者の明日のために、永き眠りを祓い給え――『リズヴェーリオ』」
ユニの手のひらから緑色の光が発され、それが棺桶を包み込む。
すると、ゴトゴトと棺桶が揺れ動いた。
ひとりでに棺桶の蓋がどかされ、その中身が現れた。
「…………、…………ンンッ、あなたが、どなたかは知らないが……私を目覚めさせてくれたこと、感謝する」
現れたのは、まさに寝起きたばかりの青年。
スミレと同じ黒色の髪はボサボサで目元には目脂がこびりつき、まだ意識がはっきりしていないのか、棺桶の縁に手を置きながら立ち上がる。
「お兄様ぁっ!」
すると、スミレがその青年に飛び付いた。
「……ぉ、おぉ、スミレか?」
「よ、良かったですっ、行方不明になったと聞いて、心配で心配で……ッ」
「あぁ、すまないな。私としたことが……」
青年に抱き着いてすすり泣くスミレを見て、一真、ユニ、ラズベルは声を揃えた。
「「「お兄様!?」」」
「あっ」
ふと我に返ったように、スミレは青年から離れて跪いてみせる。
「ご、ご無事で何よりです、お兄さ……コテツ様」
「無理に取り繕うとするんじゃない、スミレ」
青年は咳払いして、一真達三人に向き直って深々と頭を下げる。
「ベンチャーズギルド・ソンバハル西支部代表の、『コテツ・サイオンジ』だ。……どうやら私は眠らされ、閉じ込められていたようだが、あなた方のおかげで助かった。ありがとう」
「お兄様、寝起きのところ申し訳ありませんが、早急に東支部へご同行を願います」
顔を上げたコテツに、スミレはこれまでの経緯を掻い摘んで話す。
コテツ不在の今、ランハーンがギルドマスター代理として横暴な統治を行っており、コテツの不在をリュウガによる暗殺だとでっち上げ、それを理由に今まさに東西の抗争が起きていると。
「……なるほど、ランハーンの奴が。そう言うことなら分かった、すぐに東支部へ向かい抗争をやめさせなくては」
コテツは一真達三人に目を向ける。
「すまないが、あなた方三人も証人として来てほしい」
「ここまで来たんだ、最後まで付き合いますよ」
一真が力強く頷き、ユニとラズベルも続いて頷く。
ソンバハル東西の抗争は未だ続いていた。
東と西、双方とで多くの負傷者と少なくない死者を出しており、もはや抗争は泥沼化していた。
その光景を眺めながら、ランハーンは舌打ちする。
「ちっ、まだ抵抗するってのか……」
「まぁどの道時間の問題。じっくりすり潰してやればいいでしょう」
ランハーンの傍に立つ、側近の男は余裕綽々で言う。
「ところでだ『ディニアル』、カズマ・カンダとか言うガキは、結局どうするつもりだ?」
ランハーンからディニアルと呼ばれた側近の男は、『深く澱んだ目』を向けながら低く笑った。
「あのガキは少しばかり目障りでしてね……『前々から私の計画を邪魔している』んですよ」
「……そうかい」
個人的な怨みか、とランハーンは興味なさげに吐き捨てる。
「まぁいい、これで俺はソンバハルのトップに立てる。そうすりゃ、金も女も選り取り見取……」
ふと突然、シン……と騒ぎが収まった。
「双方とも矛先を引け。ソンバハル西支部ギルドマスター、コテツ・サイオンジの名において命ずる。今すぐ争いをやめろ」
東と西の間に立って堂々と告げるコテツ。
それを見聞きして、リュウガは薙刀を下ろして駆け寄った。
「おぉっ、コテツ!行方不明やの暗殺されたやの、気が気でなかったでぇ!」
「申し訳ない、リュウガマスター。少しばかり西支部の留置所で眠っていてな。積もる話はあるだろうが、後にしてくれ」
「うむ、そうやな。聞いたなお前ら!喧嘩は終わりや!怪我人から優先して集会所に連れてけや!」
リュウガからも停戦を告げられ、あちこちから「うす」だの「あいよ」と言う威勢の良い返事が返ってくる。
「さて……"落とし前"をつけるとするか」
リュウガ・トウゴウと、コテツ・サイオンジ。
東西のギルドマスターが揃った今、ランハーンに発言権は無い。
二人のギルドマスターと、一真、ユニ、ラズベル、スミレの合計六人が、ランハーンとディニアルの前に立つ。
「な、な、なんであんたが、ここに……!?」
いるはずのない人物を目の当たりにし、ランハーンはあからさまに動揺する。
「何を世迷言を言っているのだランハーン。私はこの町のギルドマスターの一人だぞ?諍いが起これば止めるのは当然のことだ」
にこやかな微笑を浮かべて見せるコテツだが、
その次の瞬間には怒りに満ちた目でランハーンを睨みつける。
「……欲に目が眩んだか知らんが、お前には失望したぞ。私を眠らせて動けないのを良い事に、随分好き勝手をしてくれたそうだな?」
「お、俺は!あんたが不在の西支部を守ろうとして!」
苦し紛れに言い返そうとするランハーンだが、それはリュウガに切って捨てられる。
「ほなコテツが西支部の留置所に、わざわざ眠りの魔術の掛かった棺桶で眠っとったんは何でや?ついでに何故にワシがコテツ暗殺の濡れ衣を押し付けられにゃならんのや?ちょーーーーーっと、オイタが過ぎるんとちゃうか?」
「ぐ、ぬ……」
もはや言い訳のしようがなく、ランハーンは唸る。
「ランハーン殿、こりゃまずい。一発逆転の機はあるが、ここはひとまず退散だ」
すると、ディニアルは懐からこぶし大の玉を取り出して、コテツの前に投げ付け――眩い光を撒き散らした。
思わず腕で顔を庇う一堂だが、閃光の後すぐに煙幕が撒き散らされ、視界が灰色一色になってしまう。
「逃がすわけないでしょうがッ!」
即座に弓を抜いたラズベルは、自分の正面へ向けて矢を放つ。
矢は煙幕の向こう側に消え――何のリアクションもないことに、舌打ちする。
「……ちっ、外れたわね」
やがて煙幕が晴れれば、凄惨な光景が広がる。
東西の抗争の犠牲者だ。
「ランハーンのドアホをとっちめたい所やが、こりゃちょっとほっとけんな」
リュウガは薙刀を下ろす。
「うむ、まずは負傷者の手当て、それと……犠牲者の人数、その名前も確認しなくてはな」
コテツも、そのように判断を下す。
ランハーンの追撃よりも、体勢の立て直しが先だと。
だがその両者に、スミレが進言する。
「コテツ様、ランハーンの追撃の任、わたしにお任せを」
副支部長すら付けずについに呼び捨てにするスミレ。
「いや、お前一人に任せるわけには……」
コテツは言い渋るが、そこへ一真も一歩前に出る。
「スミレちゃん一人が不安なら、俺達も手伝います。それなら大丈夫ですね?」
「しかしだな……」
なおも消極的なコテツに、リュウガが諭してやった。
「妹が心配なんは分かる。でも、兄貴ならそこは信じてやれや」
それに、とリュウガは西支部の方を見やる。
「いくらランハーンがボンクラや言うても、金回りと影響力だけはいっちょ前や。後々で余計なことさせへん方がえぇやろ?」
暗に「さっさと始末するべきだ」と言っているようなものだ。
ほんの数秒の躊躇、コテツはスミレに向き直った。
「汚れ仕事を押し付けたくはないが……任せたぞ、スミレ」
「はっ、身命を賭して!」
ギルドマスターからの命を受けて、スミレはその場で畏まって了承する。
一方で、西支部の屋敷に逃げ延びてきたランハーンとディニアル、そして僅かばかりのランハーンの手下が数名だけ。
ランハーンは大慌てで手下達に命令を飛ばしている。
「金目の物をありったけ詰め込め!ここもすぐに押さえられるぞ!その前に出来るだけ遠くに逃げるんだよ!」
現金や宝石、金塊と言った貴重品を鞄や麻袋に放り込んでいく中、ランハーンはディニアルを非難するように睨む。
「こんなはずじゃなかっただろうが!なんであんな簡単にコテツの奴が見つかってるんだよ!?」
「うーむ、向こうにも勘のいい奴がいたようですな。……さすが、"前世持ち"は違う」
「暢気なこと言ってる場合か!責任っ、責任を……」
責任を取れと言いかけた時、荒々しい音と共に襖が突き破られ、手下達は放たれた矢やクナイに手足を刺されて呻き、
「ちょっくら寝ときなさいな」
「ごめんねー、あとでちゃんと治してあげるか、らっ!」
ラズベルに蹴り飛ばされ、またはユニの大鎌の柄に殴られて気絶させられる。
気絶した者からクナイを抜き取り、短刀の切っ先を向けるスミレと、その隣に立ってカタナブレードを構える一真。
「もうおしまいだ、大人しくしろ」
「ここまでです、ランハーン」
一歩ずつ、ランハーンとディニアルの距離を詰めていく二人。
「こ、この、ガキどもがっ、叩き斬ってやらぁ!」
怒り狂ったランハーンは腰の青龍刀を抜いて、一真に斬り掛かってくる。
しかしその動きは素人そのものだ、一真は余裕を持ってその青龍刀を受け流す。
空振りした青龍刀の腹をカタナブレードで叩き、ランハーンの手からこぼさせる。
唯一の武器を失って動揺するランハーン、そこへスミレが飛び込んで、短刀の切っ先を目玉の先に突き付けた。
「往生際が悪いです。今降参してコテツ様に泣き付けば、追放くらいで済むでしょうね」
心底から侮蔑し、見下してみせるスミレ。
「な、が、がっ、くっ……」
もう完全に勝負は決まったと言うのに、ランハーンはまだ喚く。
「ディ、ディニアル!何ボサっとしてんだっ、早く俺を助けろ!」
「…………」
しかし、ディニアルはただ呆れたようにランハーンを見ているだけ。
「て、てめぇ!旗色が悪くなったからって裏切るのか!儲け話を持って来たからてめぇを登用してやったんだぞ!コテツの奴を押さえたのも、東の奴らに横槍を入れたのも、わざわざトウゴウの奴に濡れ衣を着せてドンパチを起こしたのも、カズマ・カンダとか言うガキを引き渡せとか言うのも、全部てめぇがそうしろって言うから!俺は!」
「黙っていろ、クズが」
「え、は?」
直後、何かを察したスミレはその場から飛び下がった。
その0.5秒後、ランハーンは自分の視界に紅い何かが飛び散るのを見た。
それが、自分の血だと言うことに終ぞ気付くことなく、その生を終えてしまった。
どさりとランハーンが畳の上に横たわると、ディニアルはその死体を隅の方へ蹴り飛ばした。
その手に、血液が滴る禍々しく毒々しい剣を持って。
「なっ、お前……ッ!」
一真はカタナブレードを構え直して強く警戒する。
ラズベルもすぐさま弓の弦に矢をつがえ、ユニとスミレもそれぞれサイズと短刀を握り直して身構える。
「やれやれ、せっかくお前をハメ殺してやろうと思ったのに……クズはしょせんクズでしかないな」
「俺の身柄を引き渡せって言ったのはお前か!何が目的だ!?」
ただのいちコントラクターでしかない一真は、この男が何故自分を狙うのか分からない。
「何が目的だ、だと?」
怒りを見せる一真に対し、ディニアルはそれ以上の怒りと、憎しみを込めて返した。
「それは!この"オレ"の台詞だ!お前が!お前と言う存在が!オレの全てを!横から掻っ攫っていったんだろうがッ!!」
「な、何、を……っ?」
その激しい憎悪を前に、一真は気圧される。
「……ふ、まぁいい機会だ。ここでお前を始末してやるのも悪くない」
ディニアルは魔剣を構え直して、一真達と対峙する。
「オレが得るべきだったはずのもの……返してもらおうか、カズマ・カンダ!!」
と言うわけで十六章でした。
ヤ○ザの抗争、コテツ様はスミレちゃんのお兄様、ついに主人公と黒幕(?)が対面、の3本で、キメました。