十一章 勝利の美酒を……って酒は飲めないからな。
ゴーレム撃破の吉報と共に一真達がベースキャンプに戻ってくれば、キャンプ内は安堵に包まれた。
「ラズ、そのゴーレムとやらを撃破したのは、確かなのだな?」
イダスは、それを撃退と誤認したのではないかと懸念を挙げるものの、ラズベルは力強く頷く。
「あいつ……カズマがゴーレムの息の根をキッチリ止めてくれたからね。動かなくなったあとは、ただの瓦礫になったから、また勝手に動き出すことはないはずよ」
「そうか。いや、お前達が無事で何よりだ。……すまんが、ユスティーナマスターを呼んできてくれ。礼を言いたい」
「うん」
ラズベルは一度天幕から出ると、すぐにカトリアと、ついでに一真も連れて戻ってきた。
「ユスティーナマスター、此度の貴女方のご助力、エスターテを代表して礼を言わせていただきたい。本当に、助かり申した」
「いえ、我々は人道的な介入を行ったに過ぎません。お礼を言われるほどのことは、何も」
「社交的な挨拶など、それこそ過ぎた言葉。エスターテの代表としても、自分個人の私情も含めた上で、本当に感謝しておるのです」
イダスを含むエスターテの人間にとっては、多くの人命と財産を守った恩人だ。
形式や社交などを抜きにしても、感謝してもしきれないと言う。
「ところで、君がカズマ君か?」
ふと、イダスの視線がカトリアの一歩後ろにいる一真に向けられる。
「あ、はい。俺がカズマ・カンダです」
自分に何の用かと一真は姿勢を正す。
「ラズからゴーレムとの戦闘のことは聞いた。君のおかげで奴を打倒することが出来た、とな」
「いやそんな、俺は……ラズベルさんやカトリアさんのように矢面に立つようなことはしてません。ただ、自分に出来そうなこと必死にやっていただけです」
少なくとも一真にとっては、攻撃魔術でゴーレムにダメージを与えていたわけでもなければ、ユニのようにサポートに徹していたわけでもない、ただゴーレムが隙を見せたところに近付いて一撃を与えたに過ぎない。
そう言って自分を過小評価しがちにする一真の頭を、ラズベルがワシャワシャと乱雑に撫でてやる。
「なーに言ってんの。あんたがゴーレムに一発かまして見せたから、みんな諦めなかった。もっとこう、「ゴーレムを倒したのは俺だー!」って偉そうにふんぞり返ってりゃいいのよ」
「そ、それはさすがに……」
いくらなんでも自己評価が過大過ぎやしないだろうかと一真は思うものの、少なくとも自分がゴーレム撃破に貢献出来たのは間違いないはずである。
「はっはっはっ、プリマヴェラの若者は謙虚で正直ですな」
「彼が特別謙虚で正直なだけですよ」
イダスが声を上げて笑うの見て、カトリアも優しく微笑む。
ベースキャンプの撤収作業を完了させた頃には既に昼過ぎで、そこから総員でエスターテの町に帰還した頃には、日が傾き始めた頃だった。
足の速い馬一頭を伝令に使い走らせたおかげで、エスターテの町はひとまずの緊急事態を解かれ、英雄達の凱旋を待ち侘びてくれていた。
カトリアとイダス、二人のギルドマスターが、武装をした上で町民達の前に立ち、緊急事態の解除を宣言する。
「我々エスターテの民は、幾度となく危機に曝されてきた。そして今回、未曾有の脅威が現れ、これまでにない苦境に立たされた。だが、我々は一人で戦っていたのではない!我らが盟友、プリマヴェラの勇士達は手を差し伸べてくれて、そして力を貸してくれた!」
「私どもプリマヴェラと、あなた方エスターテ。環境、文化は異なれど、私達が力を合わせたことで、未曾有の脅威は打倒されました!もう一度、声にしましょう。私達は、明日を勝ち取ることができたのです!」
「皆にも分かるはずだ。彼らプリマヴェラの者達は、決して余所者などではないことを!ならば私は誓おう!いつかの未来にプリマヴェラが危機に陥った時、どこの誰よりも 先に駆け付け、彼らを守る盾となり、邪悪を滅する矛となることを!」
「ならば私も誓いましょう。再びエスターテの前に脅威が現れたなら、盟友として、隣人として、共に手を取り合い力を合わせることを!」
イダスは大剣を、カトリアはブレードランスを、互いに交差させるように空へと掲げてみせる。
形式張っていると言えばその通りだが、魔物の脅威が打倒されたことによる安心が、二人の宣誓を真摯なものにさせる。
そして、町全体を揺るがす歓声が響き渡った。
「皆も気が気でなかっただろう。だが、憂いは絶たれた!さぁ、交易も仕切り直しといこうではないか!」
イダスの号令と共に、エスターテの町民達は一斉に定期便の馬車へ押し寄せた。
食料と水は昨日の内に全て買い取られたものの、そうでない交易品はまだまだ残っている。
おかげでプリマヴェラの商人達は嬉しい悲鳴を上げながら、次々に交易品を売りさばいていく。
日が暮れても交易は続き、いつしか各所で飲み物や食べ物が振る舞われるようになり、交易がもはや宴のようになりつつあった。
ゴーレムとの戦いで負傷した者達までもが松葉杖を突きながら宴に参加し、集会所内はコントラクター達の酒宴の席となった。
主役はもちろん、ゴーレムを撃破してみせた一真達とラズベルだ。
「最優秀賞はもちろんお前だ、カズマ!」
グラスを片手にそう宣うのはソルだ。
「お、俺ですか?しかも最優秀賞って……」
席の中心に立たされる一真。
「ゴーレムの腕をぶった斬ってみせて、しかも確実に息の根を止めたのはお前だ。この勝利は、カズマがいてくれたからこそだ!」
ソルが頷くのに便乗するのはラズベル。
「そうそう。さっきも言ったけどね、今日くらいはチヤホヤされときなさい。そーらみんな!あたしらの新たな最終兵器の誕生だ!盛大に祝っちゃいなさい!」
「「「「「イエェェェーイ!!」」」」」
皆が皆、自分の持つグラスを一真の持つグラスに小気味良くぶつけていく。
「ちょっちょっ、一人ずつ、一人ずつで!」
しかしそんな一真はお構いなしである。
「やるじゃねぇか!もういっぱしのコントラクターだな!」
「今朝寝惚けてた奴はどこにいった?ん、こいつだったか!」
「ちくしょーっ、俺だってお前くらいの頃はなぁ!」
「あ、あはは、ありがとうございます……」
「カズくんカズくんっ、かんぱーいっ♪」
苦笑しながらされるがままの一真を、ラズベルとカトリアは少しだけ離れた席から眺めている。
「昨日、考えも無しに砂漠に飛び出した奴とは思えないねぇ」
ラズベルから見た昨日までの一真は、「危なっかしいルーキー」でしかなかった。
だが今日に、ゴーレムとの戦いを通したことで、間違いなく最初の時とは印象が変わった。
危なっかしいのはまだ変わらないが、ここぞという時の機転や思い切りの良さ。
自分にはない、持てそうもない長所を確かに備えた少年だと。
「えぇ。確かにカズマくんは突っ走りがちですが……ラズベルさん、知っていますか?」
「ん、何がだい?」
「彼、コントラクターになったばかりだと言うのに、キラーベアに一矢報いて帰ってきた人ですよ?」
「ハァッ!?キラーベアって言えば、そこそこ危険な奴じゃないの?それを、なりたてのペーペーが?」
「私ももちろん驚きました。後で確認してみましたが、確かにキラーベアと交戦したらしくて」
「そりゃまたとんでもないことを……」
あんな頼りなさげな面構えのどこにそんな根性があるのかとラズベルは嘆息をついた。
「いやいやっ、俺まだ未成年ですから!酒はダメですから!」
思い切り飲めと周りから勧められる一真は、まだまだ落ち着けそうになかった。
交易と言う名の宴会を終えた翌日。
交易そのものは終了したが、急遽駆り出されることになったコントラクター達の休息のために、プリマヴェラへの帰還は一日だけ延期された。
多くの者が酒酔いのために惰眠を貪っている日中、一真は一人で集会所へ向かっていた。
実は昨夜、客室へ戻る前にエスターテの受付嬢から「カズマ・カンダ様宛にお手紙が届いています」と告げられたため、翌朝に受け取ると伝え、その手紙の受け取りに行くのだ。
集会所に入ると、顔を覚えていてくれた受付嬢はすぐに封筒を取り出してくれた。
「おはようございます。昨日の手紙、受け取りに来ました」
「お待ちしておりました、こちらをどうぞ」
差し出される封筒を受け取り、一真は一旦席に座る。
差出人の欄を見れば、『リーラ・レラージェ』と記載されている。
「(リーラから?)」
はてさて何が書かれているのかと封を切り、手紙の内容を目に通してみる。
「……こっちはのんきにお土産買ってる場合じゃなかったっての」
きっとリーラの想像の中では、商隊やエスターテの町を守るために、魔物相手に大立ち回りを演じている自分がいるのだろう。
魔物相手に大立ち回りを演じた、と言えば確かにその通りなのだが、恐らく彼女はゴーレムと死闘を繰り広げていたことなど知らずにこれを送ってくれたのだ。
「なに、彼女からのラブレター?」
「違いますよ、よく世話になってる宿屋の……ってうわっ!?」
気配もなくいきなり横から、制服姿のラズベルが話しかけてきたので、一真は今更ながら驚いてたじろぐ。
「いや、驚くタイミング遅くない?」
「あ、お、おはようございますラズベルさん。ってか今、めっちゃ普通に入ってきましたよね。違和感無さすぎて」
心臓に悪い、と一真は溜息をつく。
「うんおはよう。で、宿屋の恋人ちゃんがなんだって?」
「だから恋人じゃなくて、ただ単にお世話になってるだけですよ。……一応、返信しとかないと」
一真は一旦手紙を置いておき、受付嬢から便箋とペンを借りようと話しかける。
それを尻目に、ラズベルは手紙の文面を読む。
「(……どう見てもラブレターじゃないの。こりゃこのリーラちゃんは苦労しそうねぇ)」
明確な好意が綴られているわけではない。
だが、お土産とやらに言及していたり、怪我や病気の心配もしている辺り、一真にどんな想いを抱いているかなど、ありありと想像出来るような内容だった。
一真が戻ってくる前に席を離れ、ラズベルは業務に戻った。
リーラへの手紙の返信を書き、ギルドにプリマヴェラへ届けてもらうよう手配してから、一真は町のバザーへ駆り出した。
昨日まではそれどころではなかったのだが、今日になってようやく落ち着いた時間が作れたので、そのリーラへのお土産を買いに行くのだ。
リーラは「わたしと女将さんの二人で分けっこできる食べ物」をリクエストしてくれた。
ならば、個包装タイプのお菓子の箱詰辺りがいいだろうと思い浮かべていた一真であったが。
「(ここ、ファンタジー世界なんだよなぁ……)」
前世の日本の観光地のような、『お土産コーナー』があるかどうか分からないのだ。
プリマヴェラは風光明媚な町なので、そう言った観光客狙いの品も揃っていたが、エスターテではどうだろうか。
極端な気温差、目に見えるのは砂の海ばかり、見所があるとすれば砂丘遺跡の遺跡かもしれないが、(口には出しにくいが)とても観光には向いた地とは言えない。
とりあえずは見て回ろう、と一真はバザーを見て回る。
……が、思いの外目的は早急に果たせてしまった。
最初に目を付けた、石造りの店に入ったそこがまさかの土産屋だったのだ。
店主に、「比較的日持ちがしやすく、個包装のお菓子などは無いか」と訊ねたところ、それならこれはどうかと、ちょうど一真がイメージしていた感じの、クッキーの箱詰めだったので、開封さえしなければ日持ちもしそうだ。
迷わずにそれを購入してから、他にも何か良いものがあればと思ってバザーを巡る。
ふとその中で、見慣れた金髪と白金色のリボンが翻るのが見えた。
見紛うことはない、カトリアだ。今はギルドの制服でもコントラクター用の装備でもない、私服を着ているようだ。
何をしているのかと言えば、店をやっているらしい天幕の前で商品を熱心に見ているようだ。
何を見ているのかと思い、一真はカトリアとその店に近付いてみる。
その店の品揃えは、どうやら子どもの玩具などを取り扱っているようで、木で作られた手のひらサイズの馬車や、魔物のスライムそっくりなぬいぐるみが並んでいるのが見える。
すると、カトリアはそのスライムのぬいぐるみ――黄色と焦げ茶色の二色で作られているところ、砂漠に棲むスライムの亜種『デザートスライム』か――を手に取り、
――ぱぁっと顔を綻ばせて頬擦りを始めた。
「!?」
一真はその様子を見て驚愕する。
いつも涼やかな微笑を崩さない、大人の余裕とはこう言うものでございと言わんばかりの取り繕った表情しか見えなかったカトリアの、あの嬉しそうな顔。
思い返して見れば、カトリアはまだ十代半ばの、少女と言っても過言ではない年齢だ。
ならばぬいぐるみのひとつで笑顔をこぼすくらいは普通のはずだが、ギルドマスターと言う格位がそんな"普通"のことを見えなくさせていた。
「(ちょっおまっ……なんだあの顔反則だろ!?可愛すぎか!?)」
あまりの衝撃に思わず後退ろうとして、
「え、へ?」
足音を耳にしたのか、カトリアが振り向いた。
綻んだ顔のままで。
「あ」
が、一真と目が合った瞬間、目が点になる。
「…………えーっと、カトリアさん?き、奇遇、デスネ?」
なんとか言葉を紡いだ一真だが、最後の辺りなんかイントネーションがおかしくなっている。
「あ、あ、か、カズ、マく、……」
あがががと顎を震わせるカトリア。
しかしさすがはSSランクのコントラクターと言うべき(?)か、すぐに咳払いをひとつ挟んでから一瞬で微笑の仮面を被って見せる。
「んんっ……あら、奇遇ですねカズマくん。あなたも買い物でしょうか?」
「いや、カトリアさん。そんなあからさまに取り繕わなくても」
「………………見ましたよね?」
「ごめんなさい見ました。そのスライムのぬいぐるみに……」
「〜〜〜〜〜ッッッッッ!!」
けれどその微笑の仮面は一瞬にして破られ、これ以上にないほどに顔が真っ赤になっていき、
踵を返したと思った時には一瞬でその場から凄まじい速度で逃げ出し、砦の中へ消えてしまった。
「ちょ、あの、カトリアさ……!?」
辺りに残るのは、カトリアが消え去った時に舞い上がった砂煙だけ。
「惜しかったな、あんちゃん」
何が惜しかったのか、店主からはそんなことを言われた。
まさかこうなるとは思っていなかった。
後でカトリアとどう顔を合わせたものかと悩んでいると、
砦の中に逃げ込んだはずのカトリアが、半分だけ顔を覗かせて、こちらの様子を覗っている。
しかも、隠れているつもりなのか、一真から見ても丸見えなのにそこから動こうとしない。
「(……なに可愛いことしてるんだあの人は)」
恐らく、一真が店の前から立ち去ったあとでもう一度立ち寄るのだろう。
だとしたら、と一真は懐から財布を取り出して店主に向き直る。
「すいません、そのデザートスライム、ひとつください」
「はいよ。……一応、中身が見えないようにしてやるかい?」
「お願いします」
こう言うことに気を利かせられる辺りこの店主、なかなかに人が出来ている。
しっかりと口が閉じる紙袋に入れてもらい、それを手に一真はカトリアが隠れている所へ向かう。
「あの、カトリアさん?さっきからずっと見えてますからね?」
「ひゃっ!?」
ここまで距離を詰めてからようやく気付いたのか、カトリアは声を裏返して驚く。
「何というかその、驚かしてすいませんでした。お詫びってわけじゃないですが、これ、受け取ってください」
「え?」
一真が差し出した紙袋を前に、カトリアは瞬きを繰り返す。
「見ていたとは思いますけど、さっきのぬいぐるみです。欲しかったんですよね?」
「そ、それは、その……」
しどろもどろになるカトリア。
これがあの、昨夜に堂々たる宣誓を掲げてみせたプリマヴェラのギルドマスター、カトリア・ユスティーナだと、誰が信じるだろうか。
「……。……せ、せっかくですから、受け取っておきましょう。カズマくんがわざわざ買ってくれたものですし」
それでもやはりギルドマスターとしての顔を取り繕いながら受け取るところ、カトリアらしいとも言えるか。
ともかく、一真からそのデザートスライムのぬいぐるみの入った紙袋を受け取り、「では、ごきげんよう」と一礼するなり、足早に立ち去って行った。
「(なんか、意外過ぎる一面を見た気がする……)」
いつもより心做しか嬉しそうに揺れ靡くカトリアの金髪とリボンを、一真はぼんやりと見送っていた。
そうしてカトリアを見送った後。
明日の明け方に定期便がプリマヴェラへ向けて帰還進路を取るので、その前に出来るだけこのエスターテの町を見て回ろうと思い、一真は一人で町を見て回っている。
今はバザーで買った食べ物を昼食としてつまみながら、日陰になる場所で休憩しているところだ。
咀嚼したおにぎりやサンドイッチなどを、水筒の水で流し込んでいく。
町の中と言えど、暑さに慣れてきたと言えど、やはり身体は水分を求めてくる。
「ふー……」
ぼんやりとバザーを眺めてみる。
閑静としていた一昨日とは打って変わったような賑やかさだ。
砂漠と言う劣悪な環境の中でも、喜びを捨てようとせずに互いを支え合う……これが、エスターテの本来の姿なのだろう。
「……ん?」
ふと、何かの気配に気付いた。
砦の壁に足を掛けて立っている、一羽のカラスが一真を見ていた。一真の昼食を狙っているのだろうか。
「なんだよ、お前にはやらないからな」
相手がスズメならパンくずの欠片くらいはやっていたかもしれないが、前世の日本でのカラスは平気でゴミを荒らしたりする害鳥なので、一真は嫌悪感を見せつつ「あっちいけ」と手を振る。
そうしてカラスに背を向けるように踵を返して、
「……こんな砂漠にカラスなんているっけ?」
不意に、その存在の違和感に気付く。
振り向いてみれば、そこにはもうカラスの姿はない。エサをくれないと思ったのだろうか。
なんか変だな、と呟きながらも一真は昼食を続ける。
その一真を見ていたカラスはと言うと。
エスターテの砦から飛び立ち、ある程度離れた位置にあるオアシスに降り立つと、
――全身から妖しい輝きを放ち、その姿が鳥型からヒトのソレに変わっていく。
美しさと野性味、相反する二つを兼ね備えた漆黒の髪を持った青年のように見える。
だがその目は深く澱み、おぞましささえある凄みを感じさせる。
「カズマ・カンダ……」
見ていた。
砂丘遺跡で無差別破壊を行わせていたゴーレムの腕を切断し、仲間との連携で息の根を止めたあの少年。
「……あいつだ。あのガキがッ!」
間違いない。
あのカズマと言う少年こそが、この世界の因果関係を崩す者だ。
「あいつをこの世から消せばっ、今度こそ……ッ!」
深く澱んだその目は、絶望と欲望と、憎悪に塗れていた。
と言うわけで十一章でした。
ゴーレム戦も終わり、みんなでワイワイ
リーラちゃんへの返信と、カトリアの意外すぎる一面
何やら一真に恨みを抱く黒幕?らしき存在の出現
の三本でお送りしました。