第6話 二人のはじめての出会い
「俺が決めたんだよ。アリサを婚約者にするというのは、俺自身の意思によるものだった」
アレク様の言葉だけれど、わたしは信じられなかった。
そんなわけがない。
わたしとアレク様が婚約したのは12歳のときだ。
あくまで王家と公爵家のあいだの、家と家の取り決めだったはず。アレク様の考えが影響するはずがない。
わたしの内心を見透かしたように、アレク様は続けて言う。
「もちろん、すべてが俺の意思で決まったわけじゃないさ。でも、間違いなく、俺はアリサを選んだんだよ。本来だったら、エレナさんが俺の婚約者になるはずだった」
「エレナが、アレク様の婚約者に?」
自分で口にしてから、それは全然おかしくないことに気づく。むしろエレナの方がお父様たちからは愛されていたし、未来の王妃にふさわしい華やかさもあった。
エレナはアレク様よりやや年下だけど、男性よりも女性が年下であるほうが、貴族の結婚では好まれる傾向がある。
つまり、同い年のわたしよりもエレナの方が適任なんだ。
なら、エレナではなく、わたしがアレク様の婚約者になった理由は?
「それが俺の意思だったんだよ。だから、俺はアリサを選んだと言った」
「そういうことだったんですね。……でも、わからないことが二つあります」
一つは、なぜアレク様がわたしを婚約者に選んだのか? 12歳のとき、どうしてエレナではなく、わたしを選んだんだろう?
もう一つは、それがアレク様にとって、わたしへの借りになる理由だった。王太子の婚約者は、名誉ある地位だ。未来の王妃に選ぶことが、どうしてわたしに対する借りになるんだろう?
わたしがそう言うと、アレク様は寂しそうに微笑んだ。
「12歳のとき、王城で大規模なパーティがあっただろう?」
「国王陛下へのご挨拶の儀式ですね」
この国の貴族の子女は、10歳から12歳のあいだに、王都を訪れ、そして国王の謁見を受ける決まりだ。
この謁見の儀式は3年に一度行われる。
それにあわせて、王家の主催で大規模なパーティが開かれる。10歳から12歳の貴族の息子や娘たちとその親達が招待される。
そこに12歳のわたしと10歳のエレナもいた。
もう6年も前のことだから、そのときのことははっきりとは思い出せない。
ただ、そこには、アレク様、そしてミハイル殿下もいたはずだ。
アレク様は顔を赤くしていた。
きっと部屋の蒸気のせいだけれど……その表情には恥じらいの色もあった。
「そのとき、俺はアリサに会っているんだよ」
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