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ゲームの世界


閉じ込められている?


電車から降りようとする睦月の手を掴み、私はもう一周しようと提案した。時間を見ると今は16:40だ。確か、私と日奈子が私の家に着いた時は16時ごろ。東京駅から新最上まで折り返しは1時間以上かかるはずなのに、おかしい。


16:41 新最上駅出発

16:44 最上駅到着、同時刻出発


最上駅を出発すると、トンネルに入る。トンネルに入ると、一瞬車内が暗くなり乗っていた人が全員いなくなる。


「ほらな」


睦月はつぶやいた。

私は睦月の手を強く握った。最初びっくりしたように私を見たが、睦月の顔はだんだん険しくなる。


「痛いって!強い強い!」

「寝ないと思って」

「加減を知れ!馬鹿力!」


私は強く握ると、睦月も強く握り返した。痛い。馬鹿力はどっちだ。


睦月に強く握られている、痛いのに、また急に眠気が襲ってくる。私の意識は急に途絶えた。



**********



「次は新最上、新最上」


また車内アナウンスで私は起きた。ハッとして、ケータイで時間の確認をする。


16:54


最上駅を出てから10分しか経っていない。そんなはずはない。


「睦月」

私は睦月の方を見た。睦月も目が覚めていたようだ。


睦月は重い腰を上げて私を引き連れて電車から降りで、またホームのベンチに一緒に座った。


「俺たちはこの小さな()()()()()()()()()()んだ」

「それが秘密?」

「それもあるが、おかしいと思わないか?普通の世界は時間を戻せる事なんてできない」

「そうだけど…」


でも実際には戻っている、この世界の神様の京太郎がそう言ってもいる。


「でも考えてみろ、この世界がもし仮想の空間だったら?」

「仮想の空間?」

「時間が巻き戻るのはセーブとロードの繰り返し、仮想空間は最上市までしか作られていないから、出ることができない。日奈子のことを好きになるよう強制せれている候補者たち」


「睦月、この世界がゲームだって言いたいの?」


睦月がゲームヲタクなのは知っているが、まさか現実と区別がつかなくなっているのか?でも、睦月の言う通り時間が戻るのも変だし、最上市から出られないのもおかしい。


「そうだ、日奈子を主人公としたゲームだ。その世界に俺たちは現実世界から憑依している」


こんなに、リアルに肌に感じているのにここは仮想の空間で、ゲームの世界。時間が戻るのは、セーブ地点までロードしているから?



「俺は、現実世界から京太郎に連れてこられた。日奈子と恋愛を成就させるよう言われている」


睦月も?京太郎にそう言われているの!?


「私も、京太郎に憑依させられたらしいの」

「らしい?あぁ、そうか。お前記憶ないんだよな」


その言い草は…!


「睦月は記憶があるの?」

「ある」


「現実世界の睦月って」

「楪睦月。日奈子の幼馴染だ」

「それは…この世界でしょ?」

「現実でも同じ名前だ。俺も、日奈子も、お前も」


はぁ!?私も!?睦月は現実世界の私を知っているの?

って言うか…


「なんで記憶ないの私だけ!?」

「お前だけじゃない、日奈子もない。京太郎に消されている。まぁ、京太郎にとって都合悪かったんだろうな」


「睦月と京太郎はどんな関係なの?」

「近所の兄貴」


あ、この世界の神様と睦月はかなり親しい仲なのですね。


「俺と、巴と、日奈子は幼馴染。日奈子と京太郎は、兄弟だ」


睦月は衝撃的な真実を言った。

は?日奈子と京太郎が兄弟?


「何、じゃぁ京太郎は自分の妹の恋愛を成就させようとしているシスコンなの!?」

「あいつは現実世界でも重度のシスコンだった」

「そ、そうなの」


じゃぁ現実世界から京太郎はこの世界に干渉しているってことか。イケメン天気予報士として。


「現実世界の睦月と日奈子ってこんな感じなの?」

「そうだな」

「現実世界の睦月も日奈子が好きなの?」

「なっ!!!」


睦月は顔を赤くしている。あ、これは図星か、やっぱり好きだったのか。


「正直言うとわからない。この世界の強制で好きなっているのか、元から好きだったのか」

「そっか、好きなのは認めるんだ」

「あぁ」


睦月は顔を隠すように、そっぽを向いた。


「現実の私ってどんなのだったの?」

「…………めちゃめちゃモテてた。運動がアホみたいにできて、狡猾で、人に本心を見せない。幼馴染の俺たちにも」


私は全然狡猾じゃないし、モテないし、本心丸わかりの動物だ。まるで反対だ。運動ができるのは一緒だけど。


「本当に私?」

「現実の剛田巴の話だ」

「へぇ」


「でもお前と、現実の巴は違うみたいだな」


赤い顔を冷ました、睦月はこっちを見て微笑んだ。



「俺はあいつが嫌いだ。一周前で日奈子を傷つけたのもあいつだった」


ドクッと、胸がなった。もし、私はと言う存在が記憶を失っただけの剛田巴で、日奈子を傷つけるようなことがあったらどうしよう。


「どうやって、前の私は日奈子を傷つけたの?」

「………日奈子の恋心をズタズタに引き裂いて、彼女の自尊心さえも失わせた」


ん?恋心?やはり恋敵か何かなのか?


「日奈子の好きだった人って?」

「一周前の剛田巴だ」


!?!?


「私と日奈子がそう言う関係だった!?」

「だから一周前の剛田巴って言っただろう。……そもそも、お前と一周前の剛田巴には性格以外で決定的な違いがある」


「それって………」



()()()()()()()()()だった」



ええええええ!

そりゃ違いますよ。私、女って自覚して生まれましたもの。


なんか剛田巴って名前は男っぽいなとは思ったけど。運動できて喧嘩強いって言う特徴も男っぽいと思ったけど。


「一周前は男で、今は女になったってこと?」

「そう言うことだ」


「絶対、睦月の言う剛田巴じゃないよ、だって記憶はないけど私女の自覚あるもん」

「とりあえず、お前の言うことを信じるよ、巴」


とりあえず、ね。まだ信用しきっていないってことか。

でも、この世界のことを知れたことは大きな収穫だった。


そして京太郎は私に隠し事をしていることもわかった。京太郎は、この世界についてこんな風に説明していないし、現実世界の話も私にはしてくれなかった。


睦月の言っていることで嘘はないと感じた。


私も睦月のことを信用しきるわけではないが、信じてみようと思う。そして同時に、京太郎のことも信用しきってはいけない。



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