伝説となりつつあった夢の新技術は人類を救えるのか?復活の日
タイトルは……無理やりです……すいません。
博士と長官ものを書いてみました。3部作の一つ目です。
「ばっかもーん、また失敗か?」
総白髪頭の科学技術庁長官は、老博士を怒鳴りつけた。
「無理だと申し上げていたでしょ、核融合は伝説並の夢の技術ですからね。」
目をむく長官に博士はしたり顔で答える。
「人類の!いや太陽系の危機なんだぞ!
太陽がなくなったら地球上は極寒にさらされ、あらゆる生物が死滅してしまうぞ!太陽の余命宣告から早百年。人類は一致団結して代替エネルギー源を求め、それが核融合なのだろ?
地球連邦が発足して全頭脳が集結して取り組んでいるのに、なぜ完成しない?猶予は後10年なのだぞ!」
長官は口角泡を飛ばして迫る。
「発生するエネルギーが、強大すぎて制御しきれないのです。プラズマを発生させ閉じ込める計画が、数秒から数十秒が限界です。短時間だけ発電したところで、どうにもなりません。」
「代替え案の移民計画も、宇宙船は完成したが飛ばないぞ!地球上のあらゆる資材を使い果たして建造したというのにだ!」
「あまりに巨大な宇宙船故に強力な推進力が必要となり、動力源に核融合技術が不可欠なのですが核融合が完成しないから、宇宙船も飛ばない……当たり前ですよね?」
「海水から核融合用の3重水素を収集するのに、地球上の全化石燃料を使い果たしてしまったのだぞ!最早自然エネルギー以外ないのだぞ!」
「地下へでも潜りますかね?」
「全人類を入れる地下空間がどこにある?まさか君だけシェルター掘って逃げ込むつもりか?」
「それこそ核融合技術ですよ。制御できない炉心は爆弾と同じですから、地中深く埋めれば大穴が開きます。地球の核に打ち込めば、小さな太陽が出来るかも知れません。」
「馬鹿な……地球を太陽にしてしまったなら、どこに住むのだ?」
「火星あたりですか?」
「宇宙船は?能天気な奴だな……いや、待て……おいっ!太陽も核融合なのだろ?集めた3重水素を太陽に打ち込めば、太陽は復活せぬか?」
「ふうむ……やってみる価値はありますね。小型の宇宙船なら飛ばせますからね。」
かくして太陽へ水爆を打ち込む計画が実行され、太陽はその寿命を百年程延ばした。
「だが……百年後はどうなる?核融合技術が確立されておるのか?」
「ダメでも自然界の同位体分布は一定なので海洋もいずれ復活し、3重水素が出現するはずです。」
博士は自信満々で答える。
「ダメなら百年後にまた打ち込むのか?問題の先送りなだけだろ?」
長官は深くため息をついた。
「大丈夫、我々はいませんから。」