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ハタラカナイハウス 家を追い出されてから〜ハーレムまで

作者: 澪雪

実に発狂していますから、不愉快な面がありましても暖かい眼で見守ってください。

 最終学籍高校生、引き篭もり歴二ヶ月。

 親の脛も齧れなくなり、無理やり追い出された哀れなニート。

 趣味はゲーム。故にゲーム三昧。結局、高校三年生になっても将来に夢は空欄。ネタにする為に「ブリーダー」って書いてみた。動物を育てる方じゃない。フリーターだと見栄えが悪いから、ブリーダーにしたまでだ。


 努力をして来なかった奴の末路は二択だと思っている。

 一、社畜。

 二、ニート。

 大学に進学して四年時間を稼いで親の脛を齧るか、高校でお疲れ様でしたされるか。受験なんてものは、一年捨てて四倍にするだけの時間稼ぎゲー。一部真っ当な人間がいるけど、そういうのは東大とか名門に行く。社畜アンドニート候補とは無縁だ。


 金がない。

 ニートとして追い出された俺は、親の最後の慈悲と十万円貰った。家があればまだしも、無自宅無職無食には少な過ぎる所持金。


「一体どうすりゃいいんだよ」


 公園でぼーっとしてる若いのいるだろ、あれって俺たち心の友だ。やることがないんじゃない、人生に絶望している。

 空は青いよ顔も青いよ。

 しばらくはネットカフェって行きたいけど、なんか休業していた。自粛って奴らしい。そう言えばウイルス蔓延中だったっけ。そんな中で追い出されたんか。死んでも御構い無しだな。


 外出自粛例の中、公園で遊ぶ子供たち。それを見守る母親。

 これが天国と地獄か。

 金が尽きるまで生き延びて、金が尽きたら死んで。


 よーし、異世界転生か!


 まぁな、それ以前に死ぬの怖いんだよな。異世界あるって言われても、過程で死ぬの怖い。親に怒られてっ時に死のう思って首吊り計画したけど、非定型……足が着いてても死ねる死に方じゃかなり苦しいらしい。定型……足が着く方は、今時の家じゃ場所がない。あと、ロープ買うのも勇気いる。ホームセンターにロープだけ買いに来る奴って明らかにおかしいだろう。作業員服とかならまだしも、私服でねぇ。


 餓死って一番辛いらしいよ。


 金がなくなって路上で職務質問されてそのままあっそうで終わって空腹で倒れて死ぬ。最終的に行き着きそうだが水無で一週間近く、有で三ヶ月以上掛かる場合もあるんだと。首吊りと違って苦しい時間も多いし臭いもする。生殺しってこういうこと。


 刑務所に入るか。最後にパーッと痴漢でもして捕まるか! どうせ出来っこないけど勇気ないし!

 とりあえず、どっか泊まれるところ探して金尽きるまで生きてよう!


 路頭に迷ってから、数ヶ月。

 冷蔵庫ないから毎日コンビニ行ってたら顔馴染みになった。服も洗ってないから生ゴミ扱いされる。営業スマイルすらない。

 自粛終わってからネットカフェが解放されて泊まった。金が凄まじいスピードで尽きた。快適だったけど、明らかにホームレスと盛り上がったのは覚えている。可愛い女の子が家出してたりはしない。オッサンとの会話しかなかった。


 ネットカフェさえ追い出されて、食費もなくて、現在。

 俺は、あるチラシを見た。


 あなたの生活保証します。働かず好きなことだけやっていてください。

 入居条件:推薦者のみ


 推薦者かぁ。親の推薦とかかな? 捜索隊も来ないし、完全に見捨てられた俺には関係ないな。

 そんな死んだ男の目の俺に、


「興味はおありで?」


 美女が話しかけてきた。

 コミュ障が会話できると思うなよ? オッサンホームレスと一般人と話すのじゃわけが違うしなおかつ俺クラスでぼっちだったし女の子と話す機会なかったし。

 だが俺は冷静だ。至ってテンパったりして声を裏にしたりはしない。黙秘権。黙り込む!

 首を縦にブンブン振った。イエス、ウィーキャン!


「そうですか。ご自宅は?」


 横に振った。ノー、ウィーキャン!


「最終学歴は?」


 この後の質問にも、首を縦に振るなり横に振るなりで答えた。学歴も首だけで会話が成立した。

 ああ、ふざけてんな。

 俺だったら途中で話すのやめている。美女はグイグイ来るが。これがコミュニケーションの差なんだろう。喋れる奴は相手が誰だろうと話せる。それが異性だと、変に興味あるんじゃないかって舞い上がさせられる。


 気が付けば最後の質問だった。


「入りたいですか? 言葉でお願いします」


 最後は首振りが通じないとのことだ。

 ここまで話された俺だぞ。もう恐れることは何もない。


「ははははい、はいりたいでしぅ!」


 完璧な返事を最後に、俺は意識を失った。


 ーーーーーーーーーー


 ここはどこだ!

 まさかアレは異世界からの勧誘!?

 最初からそんな気分になっちゃうのはやばい奴かもしれない。冷静に考えよう。


 ここは何で出来ていますか? ーー木ですね。田舎の家でよく見ます。

 周りに二次元でしかいないような、猫耳っ子などはいますか? ーーいませんね。誰もいませんね。

 何かわかる範囲で教えてください。


 ーー鞭と刃物と、血の痕跡っぽいのがあります。


「きゃあああああああああ!」


 女の子のだ! でも悲鳴だ!


「やめて。それだけは」


 嫌な予感しかしない! 異世界っていうか拷問部屋? まさか拷問部屋施設に入れられたの?

 これ血だよな。刃物で? 鞭打ちで?

 ファンタジーはファンタジーでもグロテスクファンタジーは御免だ! 逃げなければ!


 アイテム

 ニートは何も持っていなかった!


 何も出来ねえ鍵も閉まってるぅ!

 叫んだらダメだ。気付かれたら殺される。拷問される。考えろ、俺は特に知識もないが行動力もないが情報を引き出せるコミュ力もないが考えろ! 一人で脱出する方法があるはずだ。


 周りを見渡す。

 刃物を取る。


「ささささ、出てきやがれ。ここ、殺されっまえに、や、やってやる!」


 人を殺すべく開発されたキッチンナイフ。人殺し歴ゼロの俺でも、死ぬ気で掛かればやれるはずだ。死にたいとは思ったことはあったよ? でもさ、痛いのが嫌で死ねなかったわけで。拷問とか絶対痛いだろ爪剥がされてギャーだろ。他にも酷い目にあってるんだ。俺もやられるに決まっている。


 やるぞ。

 さあ、こい!


 辿々しく刃物を構えて待った。


「そっち行ったぞ! 追え!」

「無理無理!」


 上の階から足音と声。どちらも男の声じゃない。看守と捕まった俺みたいなのが逃走劇を繰り広げているのだろうか。悪いが俺は仲間主義じゃない。自分さえ良ければのニートだ。異世界で最強の力とかあれば頑張るけど無力ニートは逃げるのだ。


 かちゃっ。


 鍵が開いて。


 きゅーううう。


 ドアが禍々しく開く。

 震える腕に力を込めて、その手の刃に一撃を蓄える。

 3

 2

 1


「うおおおおお! スキル《最後だと思って全力で襲い掛かる雑魚の自爆技》!」


 もう見ない何も見ない。

 ただ、刃物を前に突き進む。


「えっ」


 向こうは大人しく寝ているとでも思ったのだろう。まさか俺が反撃に出てくるとは、思ってもいないはず。

 その時、鋭利な刃物が突き刺したのを感じた。

 押し込もうとするが、足が滑ってからだから倒れて力が出ない。


 嗚呼、オガタのオワタ。


 死んだな。そう思った。

 拘束されていたぶられて、死ぬんだな。


「や、やった。新人っぽい人がやったぞ!」


 女の子の声だ。どうやら新人が俺を拷問に掛けるらしい。


「誰だか知らないが凄い。私たちの天敵をこうも貫くなんて」


 その新人が俺であったなら、幸せだったであろう。女の子に褒められるんだぜ? なんだって嬉しいじゃないか。


「おーい、みんなー! Gは死んだ。新人が倒したぞー!」


 歓声は上がらない。俺のことだろうかGって。

 あれ、倒されたんだよな。まだ意識あるぞ生きているぞ。

 目の前に足っぽいのが見える。女の子か? 最後に顔くらい見て死のう。拷問部屋より女の子を見て死んだ方が天国で幸せになれそうだ。


 …………。

 G。

 悍ましい翼を時にはためかせ、人が油断している間に飛び掛かってくる肉食獣。

 ありとあらゆる食物を喰らい、それは人の物であろうが御構い無し。

 意外と体が大きくすばしっこいことから、人は害意を持ってこう呼ぶ。

 Gキブリ、と。


 刃物の先に刺さったG。どういう経緯だこれは。

 よくわからんが、人生で初めてあの恐怖の大王Gを殺した。

 たしか、新人が殺したって言ってた。

 Gは一匹見たら何匹もいる。他の? にしては声が近い。

 そうだ、女の子だ。

 顔を上げて、最後を看取ってくれる人を探す。

 足先から舐めるように見上げていく。あ、スカートじゃないんだ。パンチラに失望しながらも、あ、巨乳だ。Gはないカップに見とれながらもやっぱり顔、あ、かわゆす。

 可愛い女の子は、こっちを見ていた。尊敬の眼差しで見ていた。


 でも俺は騙されない!


 学校で俺に向かって挨拶しながら走っていると思ったら真後ろの奴だった。よくあることだ悲しみ。

 後ろを確認! 右よーし、左よーし。

 ……いない。

 じゃあ霊体的なアレか! 霊感ないから見えないなそりゃあ!


「大丈夫?」


 手が差し伸べられる。俺、に見えているが俺の目の前にいる幽霊かもしれない。見えないんだからな、期待しちゃいけない。人生誰にも手など差し伸べられなかった俺にあるはずが、な、いい!


 頭のてっぺんを、細い指先が触れた。


 失神しそうだった。

 スカートならなお失神しそうだった姿勢。パンチラは叶わずして、俺の意識は持っていかれるのであった。



 ーーーーーーーーーー



【一号室の住人】



 Gキブリスレイヤーとなった俺。どちらかと言えばGブリンの方が良かったが。

 どうやら新人として、この家に住むことになったらしい。無職から女の子と同棲とは如何なる昇進か。

 いや、ちょっと違う。

 この家の住人は例の女の子を除いても数人いるのだが、そして俺以外全員女の子という至高のシェアハウスなのだが、誰一人部屋を出てこない。誰一人、というのはおかしいか。一人だけ、時々出てくる女の子がいる。例の女の子である。


 恐らく、年齢は同じか一個下。

 可愛い、以上。クラスの中に一人いるアイドル的容姿。

 その女の子が色々教えてくれた。

 この家では食事からゲームまで何でもあり、欲しい物は支給額以内ならネットショッピングで購入して良い。俺の所持金はまだ増えていないが時期ポイントとして配布されるとか。

 また、ルールもある。シェアハウスなのだから当たり前か。

 一、働かないこと。

 二、就活しないこと。

 三、他人が嫌がることはしないこと。

 なんだこれ、学級目標か。

 一と二は腐っているが、重要なのは三だ。三の関係上、引っ越しの挨拶などはNG。それぞれが勝手に過ごすシェアハウス。あくまで施設のみのシェア。

 コミュ障で人と関わりたくないゲームばっかりやりたい派の俺には打って付けだが、可愛い女の子と同棲しながらってのはモヤモヤする。一人くらい、仲良くしたい。


 とまぁ、色々割愛して俺の部屋を紹介しよう。

 エアコンテレビ空気清浄機からスマートポン! なんでもござれでありまっせ。夏なのにエアコンプラスコタツなんてのも出来まっせ。

 何せ、電気代水道光熱費ゼロ。家賃食費ゼロ。ニートでなくても羨む環境だろう。

 さて、なぜ選ばれたとかそういうのは正直どうでも良い。

 一人くらい、仲良くしたい。


 女の子と一緒に並んでゲームをしたり。

 女の子と一緒におふr……まだ早いな、手を繋いだり……も早いな、話すことから始めたり。

 女の子と一緒に、一緒に。


 とにかく、ゲーム等はいつでも出来る。しかし第一印象が決まってしまうと、なかなかイメージチェンジが難しいのだ。ここにはあの女の子以外、特に部屋から出て来ず邪魔はない。リーダー格の男委員長もいなければ嫉妬深いモブもいない。

 やりたい放題ヒャッホーウだ!


 というわけで、何かあったら声を掛けての一号室にやって来ました。中からカチャカチャ音がするところを見ると、誰かしら中にいることはわかる。

 誰かしら。可能性としては女の子である。よほどのことはない限り女の子がいる。


 ハァ、ハァ。


 玄関の前で鼻息荒い男が立っていたらやばいな。下の方がおっきくなってたらパないな。


 童貞の呼吸、紳士の型!


 呼吸を整えるんだ。そして、紳士的に振る舞うんだ。

 大丈夫俺なら出来る。いざとなったら話せるはず。

 さあ、行け。

 俺なら出来るだろう?


 そうして俺は、美少女を求め最初の一歩を踏み出した。

 これはニートがハーレムを目指す、物語なのでした。



 コンコンッ。


『誰? 新人?』

「あ、はい。そそうです」

『あんまり人と関わりたくない人が多いからって言ったような』

「あ、はい。でもその、以前のお礼が」

『いいよいいよ。私の方こそ、G倒してくれて感謝してるから』

「家の件もありますし。出来たら、その(仲良くしたいです)」

『うーん。まぁ部屋を出る人も人の部屋に来るのもほとんどいないし、たまにはいっか』

「(よっしゃあああああ! 女の子の部屋だあああ!)」


 現実と理想が分かたれる日は、そう遠くない未来なのでし、たっと。

ここまで読み終えたあなたは勇者です。

ありがとうございました。

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