信頼できる友人、僕が望んだもの
事あるごとに僕の目に飛び込んでくる事件の話題。
実際に聞くまでは、そんな事件すら知らなかった。
でも、ここ最近ときたら、その話題を一日に一回は目にしている気がする。
まるで、知らない誰かに追われているかのような。
得体のしれない気持ち悪さを感じた。
「その事件、、、今はどうなってる、、、」
「ん?これのこと?貴方が新聞の話題に興味持つなんて珍しいわね。どうなってるも何も新聞に書かれている通りよ。犯人はまだ捕まってないみたい。用心しなきゃね。」
母は、僕が溢したものを拭き取ってくれた。
その後は、新品のようだった。
「、、、ありがとう、、」
「どういたしまして。」
「、、、そろそろ行かないと。」
残った朝ご飯を急いで食べきる。
妹は、一足先に食べ終え、既に玄関にいた。
妹が外に出たタイミングで完食。
次いで出る。
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大学構内。
上橋大学は、都内の中の大学だと総人数はそこそこといったところで、学力及び偏差値で考えると平均より少し上といった具合だ。地方に溢れているような大学と比べれば、治安は良く、学生が授業を受ける様子もまじめなものである。大学デビューしたような連中は少なくて、どちらかというと、僕みたいな日陰者が目立つ。この点は、僕にとっても都合がいい。
正人は、その中でも僕に話しかけてきてくれた稀有な存在だ。周りの学生たちが着々と交友関係を作っていく中、僕は当然外れていた。その時は、一人でもなんとかなるだろうと思っていた。転機は、テストが差し迫ったある時。僕は、それに向けて準備をしていた。ゲームと同じで、準備は大切。この考えはあった。実際、僕のノートは綺麗な文字で、要点を踏まえて、まとめられていた。そして、それを横から除く影。
彼が、正人だった。第一声は、予想のつくもので、何も驚くことは無かった。
「はー。スゲーな。ノートっていうかもうそれ教科書じゃん。一冊いくらかで売れるよ。間違いない。ほんでさ、話は変わるんだけど、貸してくれない?そのノート。寝てたから、何もまとまってないわ。」
驚きはしなかった。ただ、何だこいつ。初対面の相手に凄いな。僕には無理だ。この思考が脳内を駆け回った。おそらく、僕とは違う人種なんだろうな。世の中、いろんな人間がいるもんだ。ほんと、疲れる。でも。何故か、その笑顔は嫌な感じではなかった。自分の右手はノートを掴み、正人に差し出していた。
「マジ?貸してくれんの。ほんと助かる。ありがとう。君、名前は?まだ聞いてなかったよね?ああ、ちなみに俺は、正人。荒木正人。なんか仰々しい名前だよな。」
「、、、藤林翔、、」
「そうか、よろしく。翔。」
肩を軽く叩かれる。叩くというのにも意味がたくさんある。僕は今まで暴力しか知らなかった。正人の奴は、その意味合いを持っておらず、内から明るくなる感じがした。
その後も正人とは、深い付き合いになっていた。時々、僕なんかで楽しいのか?そう思う時もまだある。でも、正人はいつも笑顔だ。そこに嘘偽りはない。友人は、まだ正人しかいない。そして、正人にはたくさんの友人がいる。気持ちは明らかに変化している。正人の友達とも、仲良くなりたい。正人は、リアルで今のところ、一番信頼できる人物だ。
だから、、
後ろから、足音が近づく。
振り返る。
正人。
彼になら、相談できる。
「あの事件の真相、解明しないか?」