笑えばいいよ、それだけで世界は明るくなる
四人のリアルで何をしているかについての会話は、とても有意義な時間だった。
各々が言いたいことや考えていることを出し合い、より本心を深く知ることが出来てきた。
「私は、リアルでは学生やってまーす。普通の高校生で至ってどこにでもいる奴です。うん、、、これだと面白くないな。そうだね。強いて言うなら、両親の中がめちゃくちゃ悪いかな?喧嘩ばかり。だから、ここでゲームしてる時間が楽しいって感じ?」
「じゃあ、次は私ですか。私は、、、大学生かな。そこまで頭のいい大学ってわけでもないよ。何て言えば、、名ばかりの大学生?ちゃんと、大学には行ってるし、授業も受けてはいるんだけど。友達がいない、、私がゲームしてるのは、ある意味でそこを補完するためなのかも、、、実際、リアルでも多少は喋れるようになったし、、、」
「俺も大学生だな。授業も聞いてて、楽しいし、友達も結構多い方か。今の暮らし方とか、生活に関して、何も不満はないよ。というと、皆より恵まれてるって思うかもだけど、まぁ、一つはあるかな。それに俺がゲームしてる理由も係ってくる、、いい意味で平凡なんだよね。それはいいことだって思うかもしれない。だけど、一度きりの人生じゃん?何かしたくない?なんかこう思いっきりね。」
話せば、話すほど出てくる話題の数々。
皆が悩み、それぞれに違うものを持っている。
悩んでいるのは、自分だけではないんだ。
当たり前のことだが、思い知った。
「ほら、はやくラストラスト。」
「お願いします。」
「トリだ。大トリ。」
自らのことを語り終えた三人が視線を一点に移す。
最後は、僕の番だ。
「僕は、僕には、、、ゲームしかない。他には何もないし、それ以上も望まない。ここは、皆ゲームだって言う。確かにそうだ。それは間違いない。でも、僕にはその意味以上の言葉がある。ここは、もう一つの世界だ。住んでいるのは、コンピューターが作り出したキャラクターじゃない。ちゃんと、自我がある。元の世界なんてなくてもいい。ここだけで十分だ。」
他の三人とは毛色の違う告白。
一応、他の三人の魂はリアルとも密接につながっている。
無くてもいい。
いらない。
何て言っているのは、僕だけだ。
「ちょっとー重い、重すぎるよ。もっとさ、こう気楽にね?」
「きっとみんな心配してますよ。」
「深く考えすぎんなって、なぁ?」
そして、皆一様に同じことを口走る。
「笑えばいいよ、それだけで世界は明るくなる。」
リアルで高校生をやっているという子が鏡を渡してくれた。
データで作られた鏡。
そこには顔にしわの寄っている僕が写っていた。
皆を見る。
僕とは違って、そこには笑顔があった。
両手で顔を挟まれて、口角を上に思いきり、引っ張られた。
作られた笑顔。
でも、不思議と気分は悪くなかった。
「どう?軽くなった?」
他の2人も微笑んでいた。