準備は大切、後悔しないために
その衝動に目覚めたのは、いつのことだっただろうか?
記憶はあまり定かではないが、確かにその時は存在していた。
ただ輝きを見たかった。
人間が元来持っている輝き。
生命の輝きを。
体が微かに揺れている。
誰かが僕の体に触れている。
顔を上げる。
「どうしたの?ボケっとして。何か悪い夢でも見てた?」
妹。
僕の体を揺らしていたのは、妹だった。
僕と比べても、身長はあまり変わりなく、顔立ちもそこまで似ていない。
纏っている雰囲気的なものは、同一。
兄妹なのだが、周りの人たちにそう見られたことは無い。
皆そんなわけあるか。
何て言ってくる。
「いや。ちょっと眠たかっただけだよ。最近、買ったゲームがこれまた面白くてさ。こう、何て言うの?新しい戦略型RPG?組み立てれる戦略が独特なんだよ。最初、味方として動いていても、途中で寝返るなんてことも出来るし、敵として戦ってた連中でも仲間にする、なんてことも出来る。どうよ?」
妹は僕を見つめて、深くため息。
顔には、呆れの色が見え、一層険しい顔になった。
「またゲームの話?ほんと、飽きないもんだよね。前にやってたゲームはどうしたの?新作オープンワールドだ!なんて言って、はしゃいでたじゃない。その時も眼にクマが出来るくらいだったよね?」
「ああ、あれか。二日でストーリークリア。四日で、収集要素のコンプリート。五日で、レベルカンスト。そこまでやりこんだ。もう悔いはない。あのゲームも神ゲーだった。」
「、、、まぁ、とにかく時間をよく見て。」
「は。もうこんな時間か。大学行くのだるいな。」
「ほら、早く早く。」
今やってる戦略型RPGにしろ、その前にやっていた新作オープンワールドにしろ。
準備という物は大切だ。
どのくらい重要なのかというと、それが生死を分けることもある。
あと一つポーションがあれば、回復魔法が使えたのに。
あと一つハーブがあれば、回復薬が作れたのに。
そこに残るのは、後悔のみ。
俺はそれを望まない。
どれだけ面倒くさいなんて思っていても。
だから、大学に行く準備はしっかりとしてある。