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魔法適正もありありでした!?

「はあ~、疲れた……」


 俺は今、ギルド二階の宿屋のベッドにうつ伏せている。

 あの魔物、正確にはサラマンダーというらしいが、あの魔物を倒した後も色々大変だった……。


「しかし、どうするかな。これ……」


 俺の手元には魔導学院への推薦証がある。


「今はまだこの町から出ていくつもりはないし……」


 俺はそう言いながら瞼を閉じ、サラマンダー討伐の後のことを思い出す。




 俺はギルドに到着すると女性を下ろす。


「すみません、大丈夫でしたか?」


 彼女はどこかぼーっとしており、どこか打ってしまったのかと心配する。


「は! はい、大丈夫です。先ほどはありがとうございました! それよりさっきの……!」


「あ、すみません。話は中に入ってからでもいいですか?」


 俺がそう言うと彼女は首を縦に振って俺の後をついてくる。


「グレイさん、エルドさん、ただいま戻りました」


 俺はギルドに入ると、真っ先に二人に声をかけて先ほどのことを報告する。


「また謎の男か……それに魔物まで」


「はい、昨日のシルバーウルフも男が操っていたようですし、今回もそうでないかと」


「ああ、それで間違いないだろうな。サラマンダーってのは火山の火口付近や地下深く、それこそダンジョンのような場所で確認される魔物だ。こんなところにいるのはおかしい」


 エルドさんがそう肯定して、グレイさんもうなずく。


「それで浩輝。サラマンダーはどこに居やがる。やつは強力な魔物だからな、防衛拠点を設置して迎え撃ちたい。それでも時間も人も足りなからな、防衛拠点とまではいかなくてもそこに人を集めて……」


 何やらエルドさんがすごいことを言い出したけど、これってまさかヤバイ?

 俺、サラマンダー倒しちゃいましたって言えない雰囲気なんだけど!?


「あの~、すみません」


 そこで後ろの女性が手をあげる。


「ああ、すみません。グレイさん、彼女は道の途中で足を怪我していたので、ここまで連れてきました」


「ありがとう。それでそちらのお嬢さんの名前をお聞きしても?」


 茶髪のセミロング、身長は平均的で黒のローブを着ている。

 グレイさんが女性の名前を訪ねると彼女は話始める。


「私は、クエルシア魔導学院、第二級講師のミラ・ルシェルです。その、浩輝さんに危ないところを助けていただきました。それでサラマンダーのことなんですけど……その、浩輝君が倒しちゃってましたよ……?」


 この女性、ミラさんいきなりバラしちゃった!? 

 単独撃破するような魔物じゃないんでしょ、あれは!?

 それにスキルのことはできるだけ黙っておきたいのに!


「第二級!? いやそれは置いておこう……浩輝君、サラマンダーを倒したのは本当かい……?」


「……はい」


 グレイさんは大きなため息をつく。


「マジか浩輝。お前ってホントにすごいな? というか規格外だぜ?」


 エルドさんは若干あきれたように言葉をかけてくる。


「私も浩輝さんがサラマンダーを斬った時、びっくりしちゃいました。あれって切れるんだ、って」


「ちょっと待て浩輝、お前あれを斬ったのか……?」


「はい」


 何やら本格的にやばいらしい。

 グレイさんに至っては顔を青く染め今にも倒れそうだ。


「浩輝君、サラマンダーっていうのはね、土地によってはその地域の神とあがめる人もいる程に強力な魔物なんだ。そして、その硬い皮膚は刃物じゃ刃が通らないことで有名でね。水、もしくわ氷魔法を使って体温と体力を削って倒すのがセオリーなんだ」


「ああ、だから基本は国が冒険者に対して特別依頼を出す。最低でも50人は集めて討伐隊を結成するんだぜ?」


 話を聞いていて俺は自分の耳がおかしくなったのでは? と思った。

 だって、国が動くほどの魔物? 50人の討伐隊? それに土地神として崇められてる?

 今度は俺自身が倒れそうになる。


「浩輝君、これは君の勝手だけど、サラマンダーを討伐したことは黙っておいたほうが良い」


「だな。間違いなくこの国、それに周辺諸国からマークされることになる」


「そうですね、特に帝国から強引な引き抜きがあってもおかしくないと思います」


 三人は何やら物騒な話をし始める。


「もちろん黙っておきます」


 俺がそれだけ言うと三人は少し落ち着いた様子でこちらを見る。


「でも浩輝君には感謝しないといけないね。正直、君を除くここにいる全員が束になっても勝てないだろう。その脅威を取り去ってくれたんだから」


「そうだな、それじゃ俺は集まってるやつらに指示をしてくるぜ。サラマンダーがいなくなったなら火も消せるはずだしな」


 そう言ってエルドさんはギルドから出て行った。


「浩輝君にはもう少し働いてもらいたいんだけど、いいかな?」


「はい。ですがその前に、ミラさんをリエラさんたちのところへ案内してもいいですか? 彼女は足首を痛めてるようなので」


 グレイさんは笑顔で頷いた。


「それでは行きましょう。こっちです」


 彼女が遅れないように歩幅を合わせて歩く。

 どうやらギルドカード作った時の実技の訓練場に怪我人を運んでいるらしい。

 訓練場に着くと結構な数の人がいた。

 ほとんどの人が座り込んでいる。


「すみません、リエラさん。こちらの人、足首を怪我してしまったみたいで」


「わかりました。ここまでありがとう、浩輝君」


「いえいえ、それじゃあ僕はこれで失礼します」


 俺はリエラさんにミラさんを引き渡し、グレイさんのもとに引き返そうとする。


「ま、待ってください! 浩輝さん、あとでお話ししたいことがあります。グレイさんにもお聞きいただきたいのですが、お時間を頂戴してもよろしいでしょうか?」


「わかりました。グレイさんにもお話しておきます」


 俺は少し考えそう答える。




「お待たせしました」


 俺はグレイさんの所に戻る。

 グレイさんがこちらを向いて頷くと説明を始める。


「まずは各所に、消火可能であることを連絡してほしい。エルドが連絡したのは、ここに集まってた人たちに対して、彼らも各方面に連絡を回すだろうけど君の方が早いだろうしね」


 まあ、確かにそうだろう。

 緊急事態だからスキルを使っての移送をしているので、常人とは比べ物にならない。


「次になんだけど、どちらかというとこっちを優先してほしい。今回浩輝が連れてきた女性のように、その場からの移動が困難な人がいるかもしれない、浩輝君はこういう人がいないか探してほしい。もし見つけたらここにつれてきてくれ」


「わかりました」


 俺は短く答えると、ミラさんとの約束を思い出す


「そうだ、グレイさん」


 俺はグレイさんを呼び止めて、後で時間をとれないか聞いてみた。


「そうだな……この問題が解決すれば大丈夫かな」


「わかりました、ありがとうございます」


 俺はそう言ってギルドから出る。


「さてと、行きますか。『フィジカルライズ』、『スタビリティアップ』」


 俺はスキルを発動させ身体能力を強化し、役目を果たすべく町に出た。

 結果、各方面に連絡してその間とその後に救助者を探すと、男女合わせて3名ほど助けた。

 三人とも俺に運ばれたこと、そして運ばれ方に驚いていたけど、最終的にはみんな感謝してくれた。

 そうしてるうちに町の火は鎮火され、少しだけ町全体が落ち着きを取り戻した。

 結局俺が救助活動をやめ、ギルドに戻ることができたのは夜が少し明け始めたころだった。


「ただいま戻りました。それでグレイさん事後処理の方はどうですか?」


「う~ん、こっちはまだしばらくかかるだろうね。それにしても助かったよ、救助に参加してくれてありがとう」


 俺はこれだけの時間でなぜ三人しか助けてないのかというと、それは地上からでは道が塞がれてたり、孤立しているため地上の捜索では見つからない救助者を優先して探していたからだ。


「浩輝君がいなければ三人のうち二人は間に合わなかったかもしれない」


 おそらく胴体に深い傷を負っていた男性と、足を瓦礫に挟まれていた女性だろう。


「ええ、本当に見つかって良かったです。特に女性の方は火の手が回ってきてましたから。ところでグレイさん先ほどお願いしたお時間の件ですが……」


「大丈夫、あとで伺うよ今日中にね」


「ありがとうございます」


 俺はミラさんにこのことを話そうと訓練場に向かうと、中は大勢の人で溢れかえっていた。


「これは……」


 多くの人が体のどこかに包帯を巻き、あるいは全身包帯だらけの人もいる。


「これは……」


 あまりの怪我人の多さに思わず口から洩れてしまう。


「今回の火事でやけどを負ってしまった人達よ。主に工業区画の人たちね」


 答えてくれたのはリアーナだった。


「リアーナさん、お互いに無事でよかったです」


「そうね、でも町はこの有様よ。それにこの人たちもね。私もお母様もさっきから回復魔法をかけっぱなしで疲れたわ」


 俺はリアーナを見て驚いた。


「リアーナさんも魔法を使えるんですか?」


 リアーナは、俺に呆れたといわんばかりの顔を向けた。


「魔法は誰でも使えるわよ。ただ使えるってだけだけどね」


 そうだった。

 この世界では魔法が使えないことの方がおかしいんだった。

 俺はそれを思い出し、そして疑問を抱いた。


「使えるだけ、ですか?」


「それはそうよ。誰にでも魔法は使えるけど、それは魔法を発動するための素質があるだけ。使うために練習しなきゃ、発動はしないわ」


 それを聞いて俺はそれはそうだと思った。どんなスポーツも才能だけあっても初心者であれば、ただほかの初心者よりうまいだけである。


「ごもっともです。それでリアーナさん、私に回復魔法を教えてくれませんか?」


 そういえばこの世界の魔法を俺が使えるのか、これに関しては実験しようがなかったからなあ。

 この際に確認しておこう。

 俺はそう考えるとリアーナに頼んでみる。


「あなたに? いいけど私よりもお母様に教わったほうが良いかもしれないわよ?」


 リアーナはそんなことを言ってくるが、リエラさんは今でも忙しそうににしている。

 そのことに気づいたのかリアーナは了承してくれる。


「……わかったわ、じゃあ場所を変えましょう。ここじゃあほかの人の迷惑になるかもしれないし」


「わかりました」


 俺はそう言うとリアーナの後について行く。

 ギルドのエントランスにいたグレイさんに、魔法を教えてもらうために少し出てくることを伝え、俺たちは森に入ってすぐの広々としたところに移動した。


「よし、この辺でいいわね。それじゃあ、始めましょう?」


「お願いします」


 そう言うとリアーナは頷き説明を始める。


「まずは魔法についてなんだけど、この辺は簡単に私の知ってることを教えるわね。まず魔法、これは魔力を使い、特定の事象を引き起こしてるの。ここまではいいわよね?」


 グレイさんが少しだけ話してくれたことだ。


「はい。魔力に決まった命令をするとか」


「ええ、その決まった命令を起こすと魔法陣、もしくは命令式と言われることもある光の円が現れるの。私たちは、この魔法陣を魔力で描くことで魔法を扱う。私の中ではこういう認識よ」


 なるほど、その魔法陣というのを覚えればいいのか?

 そんなことを考えていると、茂みの方から何か掻き分け進んでくる音がする。


「誰!?」


 リアーナがそう叫び、俺は自然とリアーナをかばう位置取りをする。

 そうして茂みから大きな人間大の影が出てくる。


「はわわ、私ですよ浩輝君!」


 そうって出てきたのは、ミラさんだった。


「一体こんなところで何をしているのですか?」


「いえ、グレイさんに浩輝君とリアーナちゃんが魔法の練習で森に行ったと聞きまして、これは私も行かねば、と思ったのです」


 そういえばミラさん、魔導学院の講師だったっけ?


「あなたは……?」


「は、はい。私、クエルシア魔導学院、第二級講師のミラ・ルシェルです」


「え!? 魔導学院の、しかも第二級なんですか!?」


 なぜかリアーナはかしこまると礼までする。


「やめてください、そんなにかしこまらなくてもいいですよ」


 俺はその光景を見て固まってしまった。

 リアーナが敬語だ、しかも敬礼まで、実はやばい人なんじゃ……。


「それでミラさん、何の用ですか?」


「そうそう、浩輝君が魔法を使えるようになりたいと聞いて、助けになれればなあって」


 どうやら魔法を教えに来てくれたらしい。


「魔導学院の講師に教えてもらえるなんて光栄ですね」


 俺がそう言うとミラさんは若干顔を赤くする。


「そういえば、先ほど言っていた第二級教師っていうのは何ですか?」


「えっとですね、クエルシア魔導学院の講師や卒業生には、第一級から第六級という階級がありまして、私はその中の第二級なんです。この第何級というのは使える魔法や、それに準ずる知識などで定められています」


「言ってしまうと、第六級から第四級までが魔導士っていう魔法に関してかなりの実力と知識を持っていて、第三級で国家魔導士……つまり国が認めた最高位魔導士になるわ。そして第一級魔導士はこの大陸内では五人しかいない単独で国家を相手どれるような化け物、第二級はそんな化け物に片足踏み込んだレベルの人達よ」


 今リアーナの説明を聞いて、ようやくヤバイ人だというのがわかった。

 要するにミラさんも若干ヤバイ実力者ってことじゃないか?


「私なんて浩輝君の実力に比べればまだまだですよ」


 俺はその言葉を聞いてギョっとした。

 それはリアーナも同じようで、こちらを見ている。

 そういえば、サラマンダーのことリアーナに話してなかった……。

 二回もぶちまけたミラさんは、何か様子がおかしいと思ったのか首を傾げる。


「あれ、二人ともどうかしましたか?」


 人にばらすなと自分から言っといて、あっさり話しちゃったよ……。

 なんとなく女神様と同じものを感じつつ俺はミラさんに耳打ちする。


「ミラさん、リアーナさんにはサラマンダーのこと話してないんですよ。」


「え、そうだったんですか? 知りませんでした……すみません」


 とは言え相手リアーナだ。

 不用意に喋ることもないだろうし、知られても問題はないだろう。

 そう考えていると、リアーナがこちらを見る。


「二人とも、随分と仲がいいのね? それにさっきの、ミラさんよりも浩輝が強いみたいな言い方だったけれど……もちろん両方聞かせてくれるわよね、浩輝?」


 それから俺たちは今日あったことを話した。

 所々リアーナは驚いたり、呆れたり、とにかく忙しそうに表情を変えて話を聞いていた。


「はあ、とりあえず理解はしたわ。でも一つ気が掛かりなことがあるの、なぜミラさんは浩輝の練習に? 確かに浩輝が命の恩人なのはわかったけど、浩輝と私が森に来ているなんてお父様は自ら話したのかしら?」


 確かに少し気になる。

 グレイさんがミラさんに俺たちのことを話すだろうか?

 確かに、魔導学園の講師であるミラさんにお願いしたのかもしれないけど……。


「い、いえ。私が聞いたんです。浩輝君とグレイさんにご相談ございまして」


 なるほど、そういえばそのことを伝えるのを忘れていた。


「すみません、そのことでしたら今日中にお時間をくださるそうです」


「はい。グレイさんの方からもそう伺いまして、その時にお二人がこの森で魔法の練習をしていると聞きまして、何かお手伝いできることがあればと思いまして。」


「ありがとうございます」


「まあ、いいわ。それで話はまとまったのかしら?」


「はい。大丈夫です」


「それじゃあ、ミラさん。浩輝に教えてる間私もここにいていいですか? ミラさんの講義に興味があるんです」


 ミラさんはにこやかな表情で頷くと、俺とリアーナの方を見てローブのポケットから取り出した木の実? だろうか、それを一つずつ俺たちに渡す。

 濃い茶色をしていて、表面に少し凹凸があり、片手に収まるほど大きさだ。


「それはマナの実というものです。その木の実はとても魔力に敏感で、本人が気付いてなくても魔力への変換効率がわかります。浩輝君は何も知らない初心者だとグレイさんに聞きましたので、リアーナちゃんは退屈かもしれないですけど我慢してくださいね?」


「いえいえ、改めて確認できますし、このマナの実というのも初めて見ました!」


「そうですか、リアーナちゃんにとっても、面白いものであれば何よりです。それでは、マナの実を持ったまま目を閉じて、深く息を吸ってください」


 俺は言われた通りにやってみる、すると手の中にある実が割れたのがわかった。

 しばらくすると、隣にいるリアーナのも割れたようで、驚いているのかおびえたような声を出した。


「……では、やめていただいて構いませんよ」


 そうミラさんが言ったので俺は目を開けてみる。

 すると俺の中にあったはずの木の実は目を出していた。

 リアーナも同じだったらしく首を傾げている。


「すみません、これは何をしたんですか?」


 俺は不思議に思い質問してみる。


「はい、これはその人のマナから魔力への変換効率を調べたんですよ。このマナの実は私たち人間と同じく、マナを魔力へと変換して成長します。つまり、この実を持ってマナを魔力に変換することで、実の成長具合から変換効率がわかります」


 マナから魔力への変換? 何それ。


「すみません、ミラさん。マナから魔力への変換ってどう言うことなんですか?」


「あ、そうでした。浩輝君はまだ魔力が何か分かってないんですよね。すみません、先にそちらからお話しします」


「魔力というのは人が魔法を使う際や、何気ない生活を送る際に利用、または微量に放出されるものです。これを魔法に利用する際、人体が自然生成する量では到底足りません。なので、私たち魔導士は空気中のマナを魔力へと変換するんです」


 なるほど、リアーナが言ってた魔法を使うための素質があっても、練習しなきゃダメっていうのはこのことか……。

 念のために一応聞いておくか。


「その変換効率は鍛えれば効率を上げることもできるんですか?」


「はい、できます。ですが伸び幅はその人の素質次第です。そしてその効率を助ける働きをするのがこれです」


 そう言うとミラさんはその場で指を鳴らす。

 すると彼女の手の中に大きな杖が出てくる。


「綺麗……」


 リアーナが隣で溜息をもらす。

 しかし、その気持ちわからなくも会いな……。

 まるで美術品のような杖だ、全体的に細身で、杖の先端にある青く光る宝石を守るかのように金色の金属が挟み込んでいる。杖の持つところは淡い青と白色の糸がまかれている。


「これは見たらわかると思いますが、杖です。これを使うことで私たち魔導士は変換効率をさらに上げます。それはこの杖の先についてる魔石のおかげです。魔石は魔物の体内でマナが結晶化したものですから、加工さえすれば効率を上げるために使用することも可能なんです」


 なるほど、エルドさんが言ってた冒険者の魔石の使い方ってこれか……。


「とりあえず、杖に関してはまた今度お話しします。それで杖無しの、素の変換効率を知ってもらいたくて二人には今回マナの実をやってもらったんですけど、二人ともすごいですよ。リアーナちゃんはマナの実の成長速度の限界にほぼ到達してましたし、浩輝君に至ってはちょっとおかしなスピードでした」


「浩輝、あんた何事も人を驚かせないと生きていけなの?」


 リアーナが呆れたと言わんばかりの視線を送ってくる。

 なんだか、最初に出会った時よりかは柔らかな態度になった気がする。


「それに、浩輝君。君の実はまだ成長してます。普通木の実の成長は目が出た時点で止まります。私たちが変換できる魔力量では到底マナの気を成長させるには足りませんから」


「そじゃあ、私のマナの実が成長を続けてるのは?」


「それはおそらく、浩輝君、あなたの魔力量が膨大なんですよ。魔力を変換スピードではなく変換される際の単位の問題です。例えば効率を数字で言うなら、私たち二級講師は平均で一分間に500ほど変換できます。リアーナさんはおそらく200ほどです。しかし浩輝君の場合リアーナさんと同じ効率なのに対して一度に変換できる量が多いためおそらく魔力の生産量が多いため1000程にもなるでしょう。そうじゃないと芽が出たマナの実を更に成長させるなんてできません」


「それじゃあ、俺はその魔力量をあげるのではなく効率、つまりスピードを鍛えればいいと?」


「そういうことになりますね」


「もうあなたが何をしても驚かなくなってきたわ……」


 リアーナが頭を抱えている。


「どうかしましたか、リアーナさん?」


 俺がそう聞くと彼女がこちらを向く。


「大丈夫よ、あなたなら仕方ないって思ってしまった私に呆れてるだけ」


 リアーナはそう言うとミラさんに向き直ると、続きをお願いした。

 しかし、今日はもう日も暮れてきたということでミラさんがギルドに戻ることを提案したので、俺たちはそれに従った。


「それじゃあ、また明日。おやすみなさい」


 リアーナはそう言って二階の宿の部屋に向かった。

 多くの人はこのギルドの近くに設営された仮設の避難所で寝泊まりしているようだが、グレイさんたちと俺だけはギルドの宿に泊まっていた。

 俺は避難所でもいいと言ったのだがグレイさんや助けた人から噂で広まったのか、町の人たちまで反対して宿に泊まれと言ってきたのだ。

 そしてグレイさんの方にもようやく時間ができたようで、ミラさんとグレイさんとの三人で話をしている。


「それで、ミラさん話とは何ですか?」


 俺は単刀直入に聞く、この手の話題はさっさと本題に入らないと面倒なやつだろう。


「は、はい。それでは、まず今回お話しさせてほしいことが二つほどあります。一つ目は浩輝君を魔導学院に入学させてみないか。というもので、二つ目がこの間、浩輝君が私の前で見せたあの剣技についてです」


 なんと、両方俺のことだったのか。

 魔導学院への入学と、やっぱり聞かれるよな……スキル。


「それじゃあ、まずは魔導学院の入学から。これは浩輝君の自由だと思っているよ。行きたいなら応援するし、それなりの手助けもする。行きたくないのだ有れば行かなくてもいい。そう私は思うよ」


 グレイさんがそう言うと、二人ともこちらを見てくる。


「私は……正直まだわかりません。私はあの森を出てすぐですし、魔法についての知識も全然持ち合わせてないです。なのでまだ何とも言えません」


 グレイさんもミラさんも優し気な笑顔で頷いてくれる。


「浩輝君には入学するしないに関わらず、私が個人的教えようと考えています。浩輝君の魔法への才能は周囲の人と比べ、突出しすぎています。魔力を暴走させれば都市が一つ消し飛ぶほどに」


 は? 都市が一つ消し飛ぶ!?


「それほどの魔力量だったのかい?」


「ええ、浩輝君。あの時はリアーナちゃんが居たから言わなかったんだけど、魔力の制御に失敗すると魔法が暴発して、とても危険なんです。だからあなたには、自分の魔力を制御できるようになってもらわないといけません。今日はもしかしたら、と思ってグレイさんに居場所を聞いてあなたの魔力量を図らせてもらったの」


「それで私は予想通りありえないほどの魔力量を保有してた、ってことですか?」


「そういうことよ。でも心配しないで、私が責任をもって教えます。だから安心してください」


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


 俺がそう言うとミラさんは力強く頷き「任せてください!」と言ってくれた。


「それじゃあ次の話題だけど……また何かやったのかい、浩輝君?」


「それは、あはは……」


「浩輝君がサラマンダーを討伐したことは知っていますよね? その際に浩輝君は見たこともない剣でサラマンダーを半分に断ち切っていました。浩輝君あれは何ですか?」


 目の前でやったら、そりゃばっちり目撃されてますよねー。

 どうごまかすか考えているとグレイさんがこちらの目を見据えてくる。


「浩輝君、それは私たちに言えないことなのかい?」


 グレイさんが真剣な表情で聞いてくる。

 俺は喉から声が出ず、ゆっくりと頷いた。


「そうかい、それじゃあ質問を変えるよ。それは私たちに害意もしくわ敵意によるものかな?」


「それは違います!」


 思わず声を荒げ、否定してしまった。

 グレイさんは笑顔でこちらに近づいて俺の頭に手を置く。


「よかった」


 そう一言述べるとグレイさんは俺に向かって「私の聞きたいことはもうないよ」と言う。


「ミラさん、すみません。このことは話しづらいことなんです」


 それだけ言うとミラさんは困ったような笑顔になる。


「しょうがないですね。言えるようになったら教えてくださいね? それと、これを。魔導学院への推薦状です。これがあれば入学時にいろいろ優遇してもらえると思います」


 それだけ言うと彼女はギルドを出ていく、グレイさんもこちらを向き。


「もう部屋に戻ってお休み。大丈夫、浩輝君が火事を収めてくれたんだ、ここからは私の仕事だよ」


「はい、おやすみなさい」


 俺はそう言うと自室に戻り、今に至るわけだ。


「まあ、今悩んでも仕方ないか。明日もミラさんに魔術のこと教えてもらわなきゃいけないし、もう寝よ」


 俺はそのままベッドに潜り込み瞼を下ろした。




「あれ? 連絡が来てる……」


 私は避難所から出て、少し森に入ったところで魔水晶を起動する。

 そこに映し出された文章に私は驚き、そして頭を抱える。


『今回、アルノスで起こった火事について詳しく報告せよ』


 魔導学院から直接送られてきたこの文章には、浩輝君のことがクエルシア内でも噂になっているかそれ以上であるということなのでしょう。


「しかし、なぜ魔導学院が浩輝君のことを……」


 どう返信するか、グレイさんや浩輝君にこのことをどう伝えるかで頭を抱えながら、深い夜は明けていった。

 今回読んでくれた方、ありがとうございます!

 今回は少し文字数が増え過ぎまして、投稿遅れました……すみません。

 さてさて、浩輝君ついに異世界の魔法に触れる時が!! でも何やら問題を抱えているようですねぇ。

 しかし、これから頑張ればなんとかなるそうです! がんばれ! 浩輝!

 次回は浩輝、魔法の特訓です!

 ではでは次回また会いましょう!

                            それでは皆さんよい読書を!!

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