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ここって出現しないんじゃないんですか!?

俺たちはギルドを出た後先ほどの橋と反対方向に向かって歩いている。


「私たちは今どこに向かって歩いてるんですか?」


 時間的にはもう少しで昼になりそうである。

 しかし、俺たちは今町から少し離れた場所にいた。


「これから向かう先で昼食にしましょ。シャルがお昼を持たせてくれたのよ」


 そういうと彼女は左手に下げていたバスケットをさす。

 朝、シャルロットさんが準備していたものはこれだったのか。

 俺は納得すると彼女に話しかける。


「私が持ちますよ」


 そういうと俺は彼女からバスケットを受け取る。


「あら、ありがと」


 彼女は俺にそういうと先ほどよりの少しだけ軽い足取りになり前を歩く。


「そういえば……。あなたってB級から冒険者始めるんだっけ?」


 突然そんなことを質問してくる。


「はい、B級から始めるように言われました」


「それじゃあこの町から出ていくのかしら?」


 俺はいきなりすぎて驚いてしまう。


「いきなりどうしたんですか? 当分はこの町から移動することは考えてないですよ?」


「そうなの? この町は魔物がいないから、冒険者への依頼が少ないし、報酬もほかのところがいいから、ここにとどまらないで次の町に移動するのかと思ってたわ」


 なるほど、と思った。

 確かにグレイさんが、この近辺には魔物は生息していないと言ってたな。


「さっきも言いましたが当分は移動はしないですよ。まだ知らないことも多いので、いろいろエルドさんやグレイさんたちにお世話になろうと思っています。ただ住居に関しては何とかしないと、って思うんですけどね……」


「何よ? うちは嫌なの?」


「そういうわけじゃないけど、お世話になりっぱなしっていうのは流石に」


「そんなこと気にしてるの?」


 彼女はそんなことというが、実際迷惑になっているはずだ。


「お父様もお母様もきっと寂しがるわね」


 彼女の言葉に驚いた。

 グレイさんたちとはまだ出会ったばかりなのに寂しがる? なんでだ?

 そんなことを思っていると彼女がこちらを振り向き。


「不思議そうな顔してるわね。……今朝話したことは覚えてる? 兄のことよ」


 思い出した。そうだった、彼女の兄は何かの事件に巻き込まれ死んだんだったか。


「ええ。覚えています」


「そう。じゃあお父様とお母さまが、あなたに兄を重ねてみてるかもしれない、ってことも覚えてる? あなたは何とも言えない気持ちになるかもしれないけどね」


「いいえ、大丈夫です。その、リアーナさんのお兄さんについて質問してもいいですか?」


 俺は少し悪い気がした。それども聞きたいと思ってしまった。


「……しょうがないわね。この話をし始めたのは私だし」


 彼女はそういうとおもむろに話し始めた。


「私の兄はドリウス・ルミエール。私とは一つ違いで、何でもできてしまうような人だったの。お父様やお母さまは何もさせてもらえないとよく言っていたわ」


 彼女は兄のことを話し始めると途端に穏やかな表情になる。

 それはまるで、自分の大切な宝物を眺めているような、そんな優しい表情に。


「兄はよく言ってたわ。できる人とできない人とではできないほうが多い。だからリアーナも決して無理せずできることをやれって」


 そのことを話し始めた彼女は立ち止まり、少し寂しげな表情をする。


「ある日この町で大きな火災があったわ。その時、私と兄は町の商業区画にいたの。出火元、原因ともに不明の事件よ。兄と私は手をつないで一緒に炎から逃げていたわ。でもいつの間にか兄がいなくなっていたわ。幼かった私はそれくらいしか覚えていないけど、あの時私が兄を見失いさえしなければ……ってそれは今は関係ないわね」


 彼女はそういうと前を向いて再び歩き出した。

 俺は彼女にかける言葉を見つける言葉を見つけられなかった。

 それからしばらく道なりに歩くと少し広めの場所に出た。


「到着よ。どう? とってもきれいでしょ? 私自慢の場所よ」


 彼女はそういうと、両手をいっぱいに広げこちらを見た。

 それは、この広く美しい川辺にひっそりと咲く一輪の花のように。寂しげに、けれども精一杯胸を張って生きようとする美しさ。いつか散るからこその美しさであると。

 そんな風に思えてしまう。


「ああ、とても美しい」


 俺は純粋にそう思い口から漏らす。

 そしてこの川辺はそれを強調しているかのような場所だと感じる。部屋にものが少ない人は自分の居場所を作らず、いつでもここから去る準備を無意識下でしているとかなんとか。


「そうでしょう? この川辺は兄と二人で見つけたのよ。昔はよく二人で遊んだ場所よ」


「そんなに大切な場所をなぜ?」


「別にこれと言って理由はないわ。ただ私がここに来たくなっただけよ。それじゃあ、お昼にしましょ?」


 彼女はそういうと草の上に腰を下ろす。

 彼女は兄のことを話してから俺に対して態度が軟化した。きっと誰かに聞いてほしかったのだろう。

 それから俺たちは昼食をとり、町へと戻ろうとしたとき林から犬のような生き物が現れた。


「犬……ですか? 可愛らしいですね」


 そう言い、近づこうとすると。


「待って!」


 彼女が俺を止める。彼女の大きな声を聴いたのは初めてで驚いた。


「待って浩輝。頭をよく見て、角があるわ。あれは……魔物よ……!」


 よく見ると頭に角が生えており、目は真っ赤に染まっている。

 見た目はハイイロオオカミに近いが、何か異質なものを感じる。


「なっ!? この辺には出没しないんじゃ?」 


「そのはずなんだけど……」


 とりあえずリアーナを守ることが最優先だな。

 そう考えた俺は彼女の前に立ちはだかるように立つ。


「リアーナ。ここは俺が受け持つから、君は急いでギルドにこのことを知らせてくれ」


 思わず俺は地が出てしまう。

 彼女は来た道に道に戻ろうとする。

 しかし、すでに周囲は囲まれているようだ。

 そこかしこから同じような犬が出てくる。


「リアーナこっちへ。傍から離れないでください」


「わ、分かった」


 なぜか顔を赤くしている。こんな時にどうしたのだろうか。

 俺は袋から細身の直剣を取り出す。

 俺が構えると魔物は一斉にこちらへ走り出した。


「少し嫌かもしれないけど、我慢してください」


 そう言って俺は彼女を抱き寄せる。

 魔物がこちらを噛み付こうとしてくる。俺はリアーナを抱き寄せたまま体を回転させ回避する。直剣を逆手持ちに変えすれ違いざま魔物の首を刺す。


「きゃあ!?」


 彼女は犬を刺したことに驚いたのか、少しおびえたような声を出す。


「少し怖いかもしれませんが、それも我慢してください」


 俺は彼女にそういうと、前の魔物をにらむ。

 リアーナには我慢してもらわないといけないかもな……気にしてられないかもしれない。

 なにせ数が多い、多方面から攻撃されたら守り切れるかも怪しい。


「わ、わかったわ」


 彼女がそう言いうと魔物がまた飛び掛かってきた。

 俺は最初の魔物を突きで怯ませ一歩後ろに後退する。しかしほかの魔物たちも飛び掛かってきてる。

 俺は全て捌ききるが、彼女は揺れ過ぎたせいか目を回している。


「リアーナさん大丈夫ですか?」


「え、ええ。少し目を回しているだけよ」


 魔物の数が減ってきた。もう一息だ……しかし何かおかしい。

 俺は違和感を感じる。

 そうか、野生の動物で群れの大半が殺されているのに一匹たりとも逃げないのだ。これはこの魔物の特性なのか?それとも何か別の要因があるのか?とりあえず彼女を逃がそう。

 そう考えた俺は来た道を塞いでいる魔物に突っ込む。


「ちょ、ちょっと!?」


 彼女は俺が魔物に突っ込んだことに驚いたようだ。左腕で抱き寄せていたのを手つなぎに変え走る。

 俺は速攻で二匹を片付ける。そして彼女を送り出す。


「リアーナさん、町まで走ってください!」


 そう俺が言うと彼女は走り出す。走り去ったことを確認してから俺は袋からエストックを取り出す。

直剣を袋にしまうとエストックを構え、目の前の犬ではなくその後ろに警戒する。


「何かいる……?」


 すると後ろから一回り大きな犬の魔物と一人の男が立っていた。

 俺は危ない、そう言いそうになるがやめる。

 あの魔物は隣の男を襲おうともしない? なぜだ?


「あなたは何者なんですか?」


 とりあえず普通じゃないことはわかる。警戒しながら少しでも情報を引き出せないか試してみる。


「……」


 どうやら答える気はないらしい。

 俺は表に出さないよう警戒を強め、エストックをしまい袋から肉厚の直剣を取り出す。

 先ほどまでは魔物の群れを相手にしていたが今回は人だ。完全に敵対してるわけじゃないが、警戒するに越したことはない。


「……やれ」


 何か聞こえたかと思うと、大きな魔物がいきなり飛び掛かってきた。

 俺は地面を転がり回避して、魔物と男が同時に視界に移るように位置取る。


「……」


 男はとことん話すつもりはないらしい。それに手を出してくる気配もない。

 俺はこの大きな魔物に集中することにした。

 どうやら先ほどの魔物と基本的には同じで噛み付き、体当たりの二つが主な攻撃方法のようだ。

 俺は先ほど同様エストックに持ち変える。

 直剣では魔物の毛に阻まれ刃が通らない可能性がある。

 しかしエストックなどの刺突武器なら毛に阻まれにくい。

 魔物は愚直に突っ込んできたかと思うと、回避しようとする俺に身を捩り噛み付こうとしてくる。

 驚きはしたが俺にあたることはなかった。

 どうやらさっきまでの魔物とは姿かたちは同じでも、思考力が高いのかもしくは知性が発達しているのかもしれないな。

 俺は一層警戒を深めた。なにせ今回は謎の男までいるのだ。警戒しないわけにはいかない。

 

「ふぅ……」


 俺は息を吐き体を落ちるかせる。

 俺は目の前の謎の男をもう一度見る。

 どうやら本当に何もしてくる気配はない。

 しかしなぜだ? 何が目的でこんなことをする?

 簡単に思いつくのはやはりリアーナのことだ。彼女は貴族の娘だ誘拐するなりすれば金になるかもしれない。しかしそれなら一人になる瞬間を狙えばいいはず。そんなことを考えながら俺は魔物に注意を移す。

 とりあえず一つ分かったことがある。あの魔物は男の約半径2メートル以上は離れないようにしている。

 理由はわからないがそれさえわかればあの男が襲われない理由が見えてくる気がする。

 そんなことを考えていると魔物はこちらへ走ってくる。

 俺は攻撃が当たる直前に魔物の顔にエストックを突き出す。当然それを避けようと魔物は身を捩りかわす。

 しかし、俺の攻撃をかわしたとはいえ魔物は自分の体勢を崩している。

 俺はそこへ突きを繰り出す。魔物はかろうじて回避し、一歩後ろに下がるように飛ぶ。

 しかし、それを見越していた俺は、先に袋から槍を取り出しておいたのだ。それを魔物に向かって突き出す。魔物はよけきれずに顔に命中すると断末魔をあげて倒れる。

 俺は謎の男から話を聞き出そうと男のいた場所に目をやると、もうそこから姿を消していた。

 あいつは一体何者なんだ……?

 すると人の走る音が聞こえてくる。


「浩輝君! 大丈夫か!?」


 グレイさんだろうか? 遠くから声が聞こえた。


「はい、何とか無事です」


 グレイさんが俺を見つけたとたんこちらに走ってきた。


「グレイさん。リアーナは無事でしたか?」


 俺がそう聞くと、彼は答える前に俺を抱きしめた。


「リアーナは大丈夫だったよ。君のおかげだ、ありがとう。しかしだね君は無茶しすぎだ! 今回は無事だったから良いけれど」


「すみませんでした」


 どうやらグレイさんは相当お怒りのようだ。

 そして、心配してくれていたようだ。


「まったくだぜ……冒険者になって初日で魔物と戦闘する奴がいるかよ」


「すみません。いきなり囲まれたものですから」


「とにかく、無事でいてくれてよかった……さあ帰ろう。家でリアーナやシャルロト、リエルも待っているよ」


「わかりました」


 そう言うと俺たちは家までの帰路に着いた。

 今回読んでくれた方ありがとうございます。

いや~、少しづつ更新が遅くなって済みません……学校が始まって少し時間が取れないんですよね~。

 まあ、そんなことは置いといて今回はどうやらリアーナの過去と謎の男の登場しましたね。

 てか浩輝、リアーナちゃんを抱き寄せるとかうらやまけしからん。そしてよく頑張りました浩輝、デートになるかなと思ってたのに魔物とダンスとは……。

 今回も色々ありましたがとりあえずゆっくり休んでください。


              それではまた次回会いましょう

                              それでは皆さんよい読書を!!


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