竜胤の杖完成です!?
「ここが王城ですよ、浩輝様」
「なんというか、遠くから見たときも思いましたけどやっぱり大きいですね」
馬車から降りると、ジャレッドさん達が王城へと案内してくれようとしたのだが、竜種の死体を放置するわけにはいかないらしく詰め所に走って行ってしまった。
それで今はシーラ様が王城へ案内をしてくれたのだが。
この王城がすごく大きい、ほんとどうやって作ったのだろうか。
「そうですね、やっぱりこの国の象徴だからですかね。昔の人はこうして権力の大きさを示したのだと思います」
「なるほど、そういうものなんですね」
「やはり王族としてはどれだけ国力が優れているか、ここを示したいものでしょうし。グレイさんのように自ら節制を心掛ける貴族の方はほとんどいません」
「要するにどれだけお金と人手が必要かを重視するわけですね」
「そういうことよ。お父様は離れに接待用の大きな屋敷を持っているけど、そちらはほとんど使わないわ。お父様は使う前に掃除とかすればいいって言ってるけど、シャルは律義に掃除をしてくれているみたい」
後ろに居たリアーナがそう答えてくれる。
なるほど、だから時々どこを探してもシャルさんが見当たらない時があったのか。
実を言うとシャルロットさんとは初めのうち以外はあまり接点がない。
用事を頼もうと思った時も何回かグレイさんに行先を聞いても分からない時があった。
「そうだったんだ。今度はその離れも見てみたいな」
そういえば国王陛下に謁見するためにここまで来たわけだけど、このままいってすんなり会えるものなのか?
「そういえばこれから国王陛下に謁見するですよね? もう向かってもいいのでしょうか」
「大丈夫だと思います。今回浩輝様へ会うことが最優先事項になっていると思いますので、王城に入ってしまえばそのまま謁見の間に通されると思います」
最重要事項って、そんなに俺と会うの大事なのか?
などと考えているとシーラ様が騎士に話をしに行った。
話が終わりしばらくすると騎士がこちらへ歩いてきて謁見の間に案内をしてくれた。
「それにしてもなんか天井が高すぎて変な気分になるな。いつもは俺達の高さに合わせているけど、ここは何か他のものに合わせて作ったみたいな」
「言われてみればそうですね。ずっとここに居たので疑問にすら思いませんでしたけど……」
まあ特に意味はないのかもしれないけど、何かそう作らなければいけない理由でもあったのだろうか?
俺達は考え意見を交換しながら歩いた。
二人ともいい顔をしている。
「浩輝様はどう思いますか?」
「確かにこういう時は浩輝の意見は確信を突くかも」
「そうだな……昔話とか、伝説に起因してるんじゃないか?」
物語や伝説には大方意味がある。
それが正しければ記録であるし、正しくないことだとしても語られた意味がある。
そのどういう意味で語られたか、そこを考え当時のものと並べてみれば見えてくるものがあるかもしれない。
「伝説、ですか。確かにそれに類似する物はありますね」
「もしかして“孤独の英雄”ですか?」
「孤独の英雄……?」
「弟子と旅をしていた男性が人と魔族を共栄関係になる際に尽力した話です。この国では全国的に有名な話なんですよ」
孤独の英雄、か。少し調べてみてもいいかもな。
しばらく歩いていると大きな扉の前に着いた。
扉の前に立つ騎士二人に案内してくれた騎士が合図を送ると二人は扉を押して開け始めた。
「国王陛下、英雄様のご到着です。」
「うむ。よくぞ参った英雄殿、まずは王都への招集に応じてくれたことに礼を言おう」
銀色の髪をした男性が玉座から立ちこちらへと歩いてくる。
この人がシーラのお父さんか……10代と言われても信じてしまうぞ、これ。
見た目はものすごく若く一体何歳なのか予想持つかない。
「いいえ、そんな。それよりも国王陛下にお会いできて光栄です」
ヤバイ、どう答えたらいいのか全く分からない。
俺が冷や汗をかいていると隣のシーラ様が「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」と声をかけてくれた。
それじゃあ遠慮なしに聞いても構わないかな?
「それで国王陛下、私から一つ質問があるのですがよろしいでしょうか?」
「ちょっと浩輝!?」
リアーナが横から小さな声で静止するように声をかけてくる。
しかし国王陛下は「構わない」と言って俺に続けるよう促してくる。
「今回の招集についてです。率直に聞きますがこの招集、勲章を授与してはい終りというわけではないのでしょう? 本当の目的は何なのでしょうか」
「ふむ、そこを聞かれてしまうか。存外英雄殿は頭がキレるのかな?」
キレるも何も警戒して物事を見ればそこに行きつくだろうに。
おそらく国王陛下はあえて黙っていたのだろう。自分が操り人形にする際どのように扱うべきか。
それを見極めるために。
「大方ここで私が聞かなければ勲章授与と同時に、その何かについて発表するつもりだったのでは? そうでなくとも私やほかの二人が逃げられない状況にする、とか」
「ほう、そう読むかね。だが安心したまえ、そのようなことはしないと誓おう。そして招集した目的は勲章授与だけではないと言うのもまた事実。これについては今夜の晩餐会後に時間を設けたいと考えている」
「わかりました。ではそれは後程お伺いします」
なんだがこういう話をしたら落ち着いてきたな。
俺はそのあと、この謁見はただ招集に応じたかどうかを確かめるためのものであることと、残りの二人ももう王都へ到着していることを聞いて王城を後にした。
シーラ様は国王陛下と話をすると言って王城に残った。
「そういえば浩輝。あなたってこれからどうするつもりなの? 晩餐会までまだ時間があるみたいだけど」
「特に予定とかは決めてないぞ。リアーナは行きたいところとかあるのか?」
そう聞くとリア-ナはこちらを向いてキラキラした顔で言う。
「魔法道具屋に行ってみましょう!」
「それでシーラよ、英雄殿はどうだね。あの者のことを見てきてどのように思った」
父は浩輝様との謁見を済ませた後、私を呼び出した。
それにしてもやっぱり浩輝様のことでしか……
「浩輝様はとてもお優しい方です。困っている方にはできるだけ手を差し伸べようとする。これは避難所での対応や火事の時の功績から思いました。そして実力、これに関しては言うまでのもなく高いです。近衛を相手させてみましたが相手にならず。そして道中に竜種を単独撃破しております」
「そうか、それは本当であったか。報告は聞いていたが、にわかに信じがたかったが……だとすると、ますます彼が必要になってくるな」
お父様は何を言っているの……? 浩輝様が必要になるって。
「その国王陛下、浩輝様と話していた何か。それについてお聞かせ願えませんか?」
父は顎に手を当て少し考え口を開く。
「いいだろう。現在この国の各地で魔物の活性化が確認されている。これはアルノスに魔物が現れたことからまず間違いはない。ああそこは元々マナが薄い地域、魔物が発生するほどの濃度ではなかった。この活性化について英雄殿に力を借りたい」
「浩輝様の力を、ですか?」
なぜなのだろう。そういうことは基本国が行うことだ、一個人に協力を求めるのはおかしい。
「そうだ、今までは国が動いて処理してきた。しかし最近では手に負えない物ばかり、すでにダンジョン内には竜種をはじめに強大な力を持った魔物が発生し始めた」
「では今回集められた方々三人は」
「そういうことだ、それじゃあシーラお前はもう部屋に戻りなさい。夜はまた晩餐会で英雄殿を頼むよ」
「はい、国王陛下。それでは失礼します」
「それでリアーナ魔法道具屋ってどこにあるんだ?」
俺たちは晩餐会まで時間があったのでリアーナ希望の魔法道具屋を目指して歩いている。
「前来た時には確かこっちの方にあったんだけど……あ、あそこよ!」
そう言ってリアーナが走って行ったのは白い壁に緑の屋根をした店だった。
ショーウインドーには杖やローブなどが飾られている。
リアーナに続いて店内に入る。中は意外と広く棚には杖を始めに、魔法の効果が付与された小物やポーション、更には魔石を加工したアクセサリまで置いてある。
「いらっしゃい。あらあら、随分と若いお客様ね」
そう言って奥から紫色の髪をした女性が出てきた。
髪はウェーブが掛かっており、ローブとその妖艶さが合わさり魔法使いという言葉がピッタリである。
「それで今日は何が入用なのかしら? ポーション、それともその歳なら初めての杖かしら?」
「いいえ、少し立ち寄っただけです」
「あらそうなのね。ゆっくり見ていくといいわ、将来うちの顧客になってくれるかもしれないしね」
そう言ってカウンターに座る。
「見て、浩輝! この杖凄く綺麗よ!」
杖がたくさん並んでいるコーナーに居たリアーナが大きな声で俺を呼ぶ。俺は女性に頭を下げてリアーナの所へ行く。
リアーナの所へ行くと、そこには周りの杖と違い特に装飾品のない木で作られた杖が置いてあった。
その杖は装飾品こそついていないがとてもきれいな形に削られている。
「へえー、その杖を綺麗というのねあなた」
そう言って先ほどの女性が近づいてくる。
「この杖は他のものと違って装飾品を付けてないし、魔石もつけてない。杖としてはとても中途半端なものなの」
「ここの穴は何ですか?」
俺は杖の持つ部分に開いている穴のような場所を指さした。
「そこは魔石を嵌めるのよ。その杖は魔石を用意してもらって完成させる。普通は取り扱わない商品よ」
「どういうことですか?」
リアーナが不思議そうに質問するが、俺が「ここはどういうお店だ?」と聞き返すとハッとした顔をする。
「そう、ここは既製品を扱うお店よ。こんな製作途中の杖は扱わないわ」
だったらどうして置いてあるのかがわからない。
俺がどうして置いてあるのか聞こうとすると隣に居るリアーナが先に聞く。
「それはね、この品はダンジョンから出土した物だからよ。ダンジョンからの出土品は基本国に売るんだけど、装備品に限り売らなくてもいいの。ただこの杖は何故かこの穴に魔石を嵌めても使えないのよ。だからかれこれもう3年位ここに置きっぱなしね」
魔石を嵌めても使えない? どういうことなんだ、魔法の杖は基本魔石が魔力変換の際に反応してその変換速度と量を上昇させる仕組み。
つまり多少形に左右されたり、それらを補助する機構が組み込まれていることで差はあれど使えない物はないはず。
「あなたも疑問に思ってるんでしょう? 魔石を嵌めてなんで使えないのかって。でも実際使えなのよ、何なら試してみる?」
そう言ってその杖をこちらに差し出してくる。
「浩輝、やってみてもいいかしら? あなたの魔石を借りたいのだけど」
「ああ、それじゃあこれを使うか?」
そう言って俺が取り出したのは竜種の魔石だ。
馬車に変える前に一応採っておいた方が良いとディーノさんに言われ採取しておいた。
杖を受け取ったリアーナに魔石を渡す。
「それでどうすればいいんですか?」
「その魔石を杖の穴に嵌めるだけでいいよ。ただその魔石は少し大きすぎるわね、少し削りましょうか」
そう言ってリアーナが杖と魔石を近づけると魔石が赤く光りだした。
「一体これはなに!?」
光が収まり再び俺は杖を見ると魔石が杖に収まている。
まるで初めからそこにあるのが当然であるかのように自然だ。
「これはどういうこと? 光ったと思ったら今度は魔石と杖が結合している?」
「結合ですか?」
俺は女性に質問する。
結合とは二つ以上のものが結びつくことだが、これは異質。もっと別の何かに感じる。
「融合と言い換えてもいいかもね、これは。おそらくこの杖はその魔石に合わせて作られたものなのね。完全に溶け合っている。ほら、魔力を通して見て。他との違いが分かるわ」
そう言ってリアーナが魔力を変換しようとすると、あまりにも大きな魔力が生成されたためかリアーナの服が揺れている。
基本どれだけ大きな魔力でも、それ単体では物質を動かせるほど質量はない。
「やっぱり、なんて変換効率。この杖普通じゃないわね。それにあなたの持っていた魔石、あれ一体何の魔石なの?」
俺は一瞬迷ったが正直に答える。
「さっきのは竜種の魔石です。ここへ来る道中倒しました」
俺がそう言うと女性は目を見開き、信じられない物を見るようにこちらを観察してくる」
「孤独の……英雄……?」
「それよりもどうするのこれ。間違いなく国宝級の武器っちゃったわよ?」
それを聞いて俺は自分がまたとんでもないことをしたと気付いた。
しかしあっけらかんとした表情で女性が大丈夫だという。
「さっき言ったでしょ? 遺物の中でも武器などの装備品は個人での所有が認められてるって。だからこれをあんたらが所有することに問題はないわけ。というわけでその杖あげるわ」
「え、そんな悪いです。それにもともとは売り物だったわけですし」
俺がそう言うと女性は一瞬驚いた顔をするが何かおかしいのか笑い出してしまう。
「いいわよ、竜種の魔石なんてもの拝ませてもらったお礼よ。どうしてもって言うなら何か珍しいものを見つけた時に、うちに売ってくれると嬉しいな。あ、あたしの名前はクレア・ニール、クレアお姉さんって呼んでくれると嬉しいな」
俺とリアーナは「わかりました」と答え杖を有り難く頂いた。
俺達は店を出ると国王陛下が用意してくれていた宿に向かう。」
「リアーナ夜は晩餐会だけど一緒に来る?」
そう俺が聞くと頷いて「あなた一人だと心配だもの」と言って、俺を追い抜いていく。
「だからほら、行きましょう?」
そう言って手を差し伸べてくる。
夕日に照らされて髪が輝いてとても美しい。
俺はリアーナの手を取り宿へと二人で駆けていく。
今回見てくれた方ありがとうございます!
個人的に5000字位で納めたい自分としては、長くなりそうだったので結局2分割させていただきます……すみません。
今回は謁見にて腹の探り合いと、謎の杖の完成しました!
新たなキャラが二人追加されましたが覚えてくれると幸いです!
次回は晩餐会そして今回の招集されたわけを知る、浩輝達はどんな選択が待ち受けているのか。
ではでは次回また会いましょう。
それでは皆様よい読書を!!