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魔力の色に染まります!?

 外から雨が馬車を打つ音が聞こえる。


「外の様子はどうだったの?」


「酷い雨で視界が確保できない。この様子だと今日はもう動けないかもしれないな」


 俺がそういうとリアーナは退屈だと言わんばかりに横に倒れる。


「こればっかりは仕方ありませんよ。それにしてもどうしたのでしょうか? 先ほどまでは全く雲もなく快晴だったのですが……」


 俺たちは今、馬車の中で立ち往生していた。

 アルノスの町を出て四日、始めは王女が野宿って……などと思っていたが、なんかとでも楽しそうにしていた。

 もちろん寝袋の様な物は現代と違い布製だが物凄く快適な物を使っていて、近衛の方々が俺の分も用意してくれていた。

 リアーナはシーラ様と一緒に入って寝ていたようだ。

 おかげで二人は仲良くなったようで、リアーナも打ち解けた話し方をしている。


「浩輝ー、何か今出来そうな練習法はないかしら?」


 こちらを向いてリアーナが問いかけてくる。

 おそらく魔法のことだろう、この狭い空間で安全に行える練習はいくつかある。

 しかし、リアーナはまだミラさんに教えてもらってないから、変な癖がついても困るし……そうだ、あれなら大丈夫だろう。

 俺はリアーナの横に掛け直して手を握る。


「ちょ、っと、何を……」


 いきなり手を握られて驚いたのか、その顔は真っ赤になってしまった。

 それでも、俺が少しづつ魔力をリアーナの体を包み込むように送り込んでいくと、次第に顔は冷静に、けど初めて見るものに興味を示す子供の様に目を輝かせ始めた。


「すごい、なんなのこの感覚。水の中にいるみたい」


「リアーナの体を包み込むように魔力を張ってみたんだ。魔力の操作が魔法の基本なんだけど、俺は魔力ってものを感じにくくて。だがら初めはこうして魔力っていうのを直に触れさせてもらってたんだ」


 これは体で魔力を感じるだけなので、俺がリアーナにやっても大丈夫だし、何より魔力というものがイメージしやすくなっただろう。


「次は自分から魔力を放出する練習だな。それで魔力を放出、自分の体に纏わせるわけなんだけど、コツというかイメージとしては自分の体を包み込むベールをイメージするといいぞ」


 俺がそういうとリアーナは首を傾げている。


「ねえ、浩輝。魔力ってどうやって出すの?」


 そういえばそうか。俺もそこで四苦八苦した。

 俺はどう説明したものかと腕を組んで考えていると、シーラ様がリアーナに声をかける。


「リアーナさん一度目を瞑っていただけますか? ……はい、それでは自分の胸に意識を向けてみてください。落ち着いてゆっくりと息を吸って、吐いてください……そうです。そして胸の奥からゆっくり流れ込んでくる温かなものを感じ取って、そうです。いい感じですよ」


 すごい、シーラ様がリアーナの魔力放出を導いている。

 俺も感覚でできるようになったのに二日かかった。

 それなのに初めての人にここまで放出させるとは……そういえばリアーナの魔力って何色なんだろう?


「そうしたらその温かいものが全身に巡るイメージです」


 シーラ様がそう言った瞬間リアーナが少し赤みを帯びていく。

 なるほど、リアーナの魔法適正は火なのか。


「な、なにこれ!? 私光ってるんだけど」


 目を開けたリアーナは驚いて自分の手足を見ている。


「魔力が体を覆うとそうなるんだ」


「でも浩輝の時は色なんてついてなかったわよね?」


「それは魔法の属性が関係してくるんですよ」


 シーラ様が横から補足してくれる。

 俺は頷いて続ける。


「魔法にも属性があるんだ。火・水・風・土・光・闇の六つを中心にいろんな属性の魔法が存在してる。そして俺が無色だったのは時の属性に適性があるから。体に魔力を纏うと適性の高い属性の色が魔力に発現するんだ。リアーナは赤色、つまり火属性の適性が高いってこと」


「なるほど……火属性かぁ、なんかいいわね」


 リアーナが目をキラキラさせている。


「そういえばシーラ様も魔法が使えるんですか?」


 先ほどリアーナの魔力放出を促していたときに思ったのだが、なぜ魔法の知識を持っているのか。

 それはシーラ様も魔法を使るから、という結論に至った。


「はい、使えますよ」


 そういって体に魔力を纏う。

 すごく綺麗な藍色だ。銀色の髪と合わさって冷たい雰囲気を漂わせている。


「すごく綺麗な色ですね……シーラ様は何の属性なのですか? 水か氷でしょうか?」


 リアーナはすっかり見とれてしまっている。

 俺も一瞬目を離せなくなってしまった。


「私は闇と水の二つの属性の適性が高いみたいです」


「そうだったんですね。それにしても2属性持ちなんて珍しいですね」


 そう、2属性持ちは珍しく何より羨ましがられるのだ。

 適性が高ければその属性の魔法の発動スピード、燃費、威力に至るまでが他の属性よりも高い。


「そんなにすごくないんですけどね。適性が多いとその分どちらを鍛えるか迷いますし、1属性の人に比べても伸びしろは少ないですし」


 確かに2属性持ちは1属性持ちに比べて尖ったところは少ない。

 しかしそれはほとんどの場合二つも適性があるため、どちらも伸ばし切れていない為だという。

 なので最近はどちらか一つの属性だけを鍛えるのが一般的だとミラさんが教えてくれた。


「ということは、どちらかに絞っているのですか?」


「いいえ、最近ではもう魔法の練習も禁止されてしまって。こうして魔力を体に纏ったりなどして魔力コントロールの練習ばかりです」


「え、どうして禁止されているのですか?」


 リアーナは不思議そうに質問するとシーラ様は少しずつ語り始めた。


「わかりません。しかし母の死が原因なのでしょう。この間、浩輝様に話を聞いていただいた後、自分でも考えてみたんです。どうして父はああ成ったのかを。やはり母の死後父はおかしくなった気がします。笑顔は無く厳しい人になってしまった」


「そうなのですか。国王陛下はとてもやさしく笑顔の絶えぬ人だとお聞きしていましたが……」


「こればかりは考えても仕方ないことだと思います。さ、リアーナさん魔法の練習を続けましょう?」


 そういって二人は魔法の練習を続ける。

 俺は二人にもう一度外の様子を見てくると言って馬車の外に出る。


「ジャレッドさん、周りの様子はどうですか?」


「お、英雄様か。変化はないぜ、なさ過ぎて逆に怖いくらいに、な」


 そういってジャレットさんは馬車の近くに建てたテントの中から答える。

 ジャレッドさんは三人の近衛で今回の隊長を任されていて最年長のベテラン騎士らしい。

 俺を馬の後ろに乗せてくれたのもジャレッドさんである。

 結構奥行きと高さがあるこのテントは、木々の枝に棒のようなもの引っ掛けてその上に布を置くという簡素なもので、風が出ていない為この布が飛ばされることはない為、地面に固定する必要のない現状では雨を防ぐことができ、更に面積を多くとれるという点ではこのテントがベストなのだろう。


「英雄様なんてやめてくださいよ。そういえばほかの二人はどうしたのですか? 姿が見えないようですけど」


「ああ、メリアとディーノのことか? あいつらは見回りに行ったぞ、ディーノが何か変な音が聞こえたとか言って」


「この視界の悪いときにですか?」


 正直この雨、風がないにもかかわらず雨量がすごくて30メートル先が見えない。

 空は雨雲に覆われ暗くなっている影響もある。


「俺も止めたんだが聞かなくてな。仕方ねえからメリアに付いていかせたんだ。二人いればたいていの魔物から身は守れるだろう」


「そうなんですか? 自分あんまり魔物との戦闘経験が少なくて」


「そうだな……浩輝が倒したサラマンダー上の下とすればここに居るようなのは精々中の下までだぜ? 流石にあいつらも苦戦しないだろう」


 そうなのかと思いながら、ふと気いなったことを聞く。


「サラマンダーより強い魔物ってどんなのがいるんですか?」


 ジャレッドさんは顎に手を当てて少し考える。


「そうだな……同格の存在として扱われているのがウンディーネ、シルフ、ノームの精霊の名前を付けられている魔物に、上を行く魔物としては竜系統のモンスターにリヴァイアサンにベヒーモスなどがいるな。それと魔族だ。基本的に領地を侵さなければ攻撃してこないんだがやつらの戦闘力は人間じゃあ太刀打ちできないって言われている」


 魔族か、確か冒険者のランクの適性試験の時に吸血鬼と対峙したけど、あれのことだろうか。

 だとしたら勝てる相手じゃないな、今のままなら。


「俺が知ってるのはそれくらいだ、王都のギルドにでも行けばもっと詳しい情報が手に入るだろうさ」


「ありがとうございます」


 俺がそういって頭を下げると少し驚いたような顔をした。


「どうかしましたか?」


「いや、普通強いやつはプライドが高くて他人に礼を言ったり、頭を下げるような奴は少ないんだ。だから少し驚いてしまった」


「もしかして今回王都に集まる二人もそうなんですかね?」


「わからないがけど、その可能性もあると思うぞ」


 うまくやっていけるのだろうか、少し不安になってきた。


「まあ、考えても仕方ないぞ。それよりも浩輝、気付いてるか?」


「ええ」


 俺はそう言って刀を腰に下げ、ジャレッドさんは杖に手をかける。


「ジャレッドさん馬車の護衛をお願いします。俺が森の中の様子を見てきます」


「……浩輝、あまりこういうのは言いたくないんだがここは見捨てるべきだ。王女様にリアーナ様が乗っていらっしゃる馬車を一人護衛するのはリスクが大きすぎる」


 森に駆け出しそうになっていた俺は、その言葉を聞いたときにジャレッドさんの方を振り返りそうになった。


「だから30分だ! それ以上は守り切れるか分からないからそれまでに二人と原因を何とかして来い!!」


 そう言って馬車の周りに魔法で防壁を展開しているのがわかる。


「二人のこと頼んだぞ!!」


 「はい!」と叫びつつ俺は赤黒く光る森に飛び込む。

見てくれた方ありがとうございます!

どうやら王都まであと一歩というところで足踏みしてしまい。さらには近衛の二人が何かに巻き込まれてしまったようです。

無事全員揃って王都へ到着できるのか!?

ではではまた次回会いましょう!

                                 それでは皆さんよい読書を!!

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