表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/29

魔法よりも剣振ったほうが早かったです!?

「浩輝君。君は自分のしたことの意味を理解しているのか?」


 現在俺はギルドの訓練場で正座をしている。

 目の前にはお怒りのグレイさんが立っていた。


「だってグレイさんは、また私のことを庇おうとしてましたよね? もうこれ以上は迷惑かけたくないんです」


「だったとしても、だ。今回のことは君の人生と国の勢力図を狂わせかねないものなんだよ。それほどにデリケートな問題なんだ」


 グレイさんの言ってることは分かる、俺の人生が狂うことも、俺が王国の操り人形になる不味さも、おそらくすべて正しくて、すべてその通りなんだろう。

 でもこれは俺の問題だ。周囲に問題が起きようとも、それは俺の決断で結果が変わる。

 そしてその中心にいるのは紛れもない俺だ。


「そうだったとしても、これは私自身の問題です。今回は凌げたとしても次にまたグレイさんに助けてもらえるか分からない。それに自分自身で決めないと、これから先後悔し続けると思います」


 俺がそう言うとグレイさんはあきらめたように忠告してくる。


「君の言うことは分かった。でも覚えていてほしい、君の決断や行動によってこれからの世情が変わると言っても過言じゃない。他国は君を取り込もうとしてくるし、王国はどうにかして爵位を与えようとしてくるだろう」


「爵位をですか? 何でそんなことを?」


 爵位って貴族にするってことだよな? そんなことしたら余計に面倒くさいことになるのでは?


「それは君を貴族にしてしまえば国から勅令を出せて、それに従わないといけない義務が発生するからだよ。貴族は国からの勅令を無視できないし、この国以外に属することが出来なくなるからね」


「この国に私を縛り付けておく首輪として、ですか」


「そう言うこと。今回のことはなるベく隠したかったんだけど、流石に無理があった。それに浩輝君はもうシーラ様に、自分がサラマンダーを単独撃破したと宣言してしまった。言い逃れはできなくなった。とりあえずこの戦いは勝たないと不味い」


 グレイさんはどうやら俺のこれからを案じているようだ。

 ありがたい。あれほど勝手をし、迷惑をかけてなお俺を案じてくれている。

 それが痛いほどに伝わってくる。

 しかし、だからこそこれ以上グレイさんに迷惑を掛けたくない、そう思ってしまう。


「まあ、なんとか勝って見せます。俺のことは心配しないでください」


「わかった。私から言えることは一つだけだね、浩輝君がんばれ!」


「はい!」


 俺がグレイさんの喝に返事を返し訓練場の真ん中に行こうとしたとき、横に居たリアーナから声を掛けられる。


「頑張りなさい、気を付けてね」


 俺の手を握り祈るように目をぎゅっと閉じる。


「大丈夫、勝ってくるよ」


 俺がそう言うとリアーナはそっと手を離した。

 訓練場の真ん中ですでに騎士の方々が待っていた。

 俺が向かい合うと俺を後ろに乗せた騎士が笑いかけてくる。


「まさか君が英雄様だったとはな。俺たちのこと気付いてて黙ってたんだろうが、それにしても気付かなかったし、後ろに乗せてる子供が英雄様なんて思いもしなかったよ。見ての通り一応王女様の近衛でね。さっき言ったようなそこら辺の騎士とは違うから気をつけな」


「はい、大丈夫です。森で魔法を見たときから気付いてました。こっちも全力で行かせてもらいます」


 俺がそう返すと、後ろの二人の騎士からもピリピリとしたプレッシャーを感じる。


「それでは両者準備はよろしいでしょうか」


 シーラ様が俺たちに問うてくる。

 右手には細身の直剣を、左手には短剣を持ち俺は「はい」と答える。

 一瞬王女様と騎士の方々が驚くが、すぐにこちらを観察するように睨んでくる。


「それでは、始め!!」


 合図があった瞬間三人は魔方陣を展開しする。


「『フィジカルライズ』」


 俺は誰にも聞こえないように呟くようにスキルを発動させると、思いっきり踏み込み接近する。

 周りからはいきなり三人の中央に現れたように見えたのだろう、グレイさんやリアーナ、女王様の声まで聞こえてくる。


「クソッ! 散らばれ、俺は正面を抑えてみる。お前らは側面から……」


 三人も同様に驚いたようで俺から離れようと散らばる。

 しかし俺とこの三人と身体能力に雲泥の差があるのだ、取り囲むなんてさせない。


「ふっ!」


 俺はもう一度踏み込むと先ほど号令を出していた騎士に突撃する。

 背中側に回り込み、張り付くよう後ろから首にナイフを当てる。


「ッ!?」


 俺はこの騎士をとらえたのでこれで終わりにしよう、そう提案しようとしたのだがナイフを当てられているのにも関わらずこの騎士は口元を釣り上げた。

 前方を見ると二人の騎士が魔法を使おうとしている。


「そういうことかよッ!」


 俺は騎士から離れ距離をとる。

 今、後ろから張り付いてて分かったが、あの騎士は体に魔力を纏い防護服のようにしていた。

 それを見越して残りの騎士は俺にダメージを与えようとしていた。


「『ウィンドバレット』」


「『アイススピア』」


 二人が同時に魔法を撃ってくる。

 先ほど張り付いていたはずの騎士も魔法を放つ準備をしている。

 俺は魔法に正面から突っ込んだ、魔法使いに対して距離をとるなんて愚策でしかないからだ。

 

「正面から突っ込んで来るなんてね。でも、それは愚策なんじゃないかしら?」


 女の騎士がそう言うが俺は軌道を変えない。

 魔法がこちらに飛んでくる。

 俺は腕を交差させ胸の前で組み短剣を逆手に持ち替える。


「『影狼』」


 俺はスキルを発動する。

 この影狼は職業スキルクラススキルのうちの一つで、自分の体を闇の粒子に分解、自分が指定した相手の後ろに再構成、する技だ。

 ゲームでは対策を取られやすいスキルだったが、この世界ではだれもこのスキルを知らない。

 ならば、少なくとも初見では見抜かれないだろう。


「な、なんですか!?」


 俺の体が黒い粒子になり霧散すると同時に皆が驚きの声をあげる。

 もうスキルのこと隠せない、なら出し惜しみせずに使うべきだろう。

 俺は左奥に居た女の騎士の後ろで自身を再構成する。


「メリア! 後ろだ!」


 ほかの騎士が声をあげるが、俺はすでに剣を振り下ろしている。


「遅い、『アブソードブレイド』」


 直剣用のスキルを発動させ右上から斬り下ろす。

 メリアというらしい騎士は膝をつく。


「無事か、メリア!?」


「え、ええ。大丈夫よ、でも力が入らないの。私はリタイアよ」


 俺が斬った跡には血はおろか傷一つすらない。

 『アブソードブレイド』は相手のMPを削り取る技だったが、どうやらこの世界では相手の魔力を削り取るため、ひどい倦怠感で戦闘不能にできるようだ。


「!? なんだこれ!?」


 俺がもう一度『影狼』を使おうとすると足に植物のツタが絡みついている。


「『エンブレスプラント』、二度もやらせないぜ。今だ!」


 どうやら俺は拘束系の移動阻害魔法を使ったようだ。


「『ウィンドバレット』」


 先ほどの魔法を撃ってくる。

 俺は短剣を右手に持ち替え、飛んでくる魔法に振るう。


「『ブレイクエッジ』、『アクセルフレイム』」


 短剣用スキルで魔法を消し飛ばし、格闘スキルで足に炎を纏いツタを焼き払う。


「足から炎!? なんだそれ!?」


 俺がツタを焼き払うと同時に二人の騎士が怯む。

 短剣を袋にしまい、直剣を右手に構える。


「『フレイムダンス』」


 片手直剣用のスキルを発動させ、二人の騎士の間を縫うように抜ける。

 二人は俺を止めようとしてくるが遅い、さっきまでは人相手にどうすればいいか勝手がわからなかったが、もうわかった。


「な!? そんなばかな、今ので俺たちの鎧を……」


 俺は火を纏った剣で鎧の繋ぎ目を切り裂き二人の鎧を破壊し、切っ先を突き付ける。

 

「そこまで、ですね。私の連れてきた近衛三人を圧倒するその実力、間違いなく英雄様です。浩輝様、疑い試してしまったこと申し訳ございません。ですが仕方ないことだと理解いただきたいのです」


 それはそうだ偽物か本物か、実際戦ってみないとわからない。

 その点に関しては俺も仕方ないと思う。


「別に気にしていませんよ」


 俺がそう言うと安心したのか声から少し緊張が抜けたように感じる。


「ありがとうございます。では浩輝様、お話がございますので少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」


「はい、大丈夫ですよ。グレイさん、奥の部屋を使わせていただいてもよろしいでしょうか?」


 俺がそう尋ねると、グレイさんは頷いて扉を開ける。


「シーラ様、浩輝君こちらへ」


 俺たちはいつもグレイさんのいる部屋に戻ってきた。


「それでは改めまして、英雄浩輝様。今回、我がエルゼリア王国のアルノスに出現したサラマンダー討伐をはじめ、火事の鎮圧、住民の救助など数々の功績を立てられました。これに我が父、エルゼリア国王アルファード王は勲章、そして報奨金などの授与することとし、娘である私が英雄浩輝様のお迎えに上がりました」


 どうやらグレイさんたちの見立ては概ね正しく、俺をとりあえず王都へ連れていきたいそうだ。

 そこで勲章や報奨金などを渡したいと言ってくる。

 そこに俺の意志は関係なく、グレイさんからも王都まではいかなきゃだめだと小さな声で言われた。

 延々と話をされそうだったので俺はとりあえず疲れたのでまた後日、と言って部屋を無理やり抜け出して、借りている部屋まで逃げてくる。


「ふぅ、疲れた……にしても俺が英雄なんて呼ばれるとは、変な気分だな」


 俺は英雄なんて柄じゃないし、何よりサラマンダーを倒しただけなのだ。

 そんなこんなを考えていると、誰かがドアをノックしてきた。


「はい、どちら様ですか?」


 俺が誰かを訪ねると、外からリアーナの声がしてきた。

 

「失礼するわよ」


 そう言ってリアーナは部屋の中に入ってきた。


「それで何か用か? 俺の部屋を訪ねるなんて」


 俺がそう聞くとリアーナは呆れたような声でこちらを向いてくる。


「あなたが途中で抜けていたから本当にさっきの話を理解しているのか気になったのよ」


 どうやら心配して来てくれたようだ。

 正直先ほどの話はあまり整理がついていなかった。


「その顔、やっぱりあなた理解してないのね。これから私がもう一度簡単に説明してあげるから、ちゃんと聞いてなさいよ?」


「ありがとう」


「礼なんていいわ、そのために来たんだもの」


 リアーナはそう言って説明を始める。


「まず、王女様がここに来た目的。これに関しては大丈夫?」


 それならわかる……というか、そのせいでこんなことになっているのだ。


「俺を王都へ連れていくためだろ?」


「そう、そしてあなたに勲章を与えること、そうすれば貴族の爵位をあなたに与えれるの」


 俺は頷く、そこからなのだ。

 何のために王女をこちらに寄越したのか、考えれば考える程わからない。

 よくあるRPGではお姫様がやってくるが、普通に考えればありえない。


「しかし、なんで王女様が来るんだ? 王族が直接、それも護衛三人で来るなんて、普通ありえないだろ?」


 そう言うとリアーナは頷く。


「確かに王族が直接アルノスに来るなんて異例だわ。でも、あなたをこの国に縛り付ける上で最も簡単な策がそれだからじゃないかしら?」


「どういうことだ?」


「要するにあなたと王女をくっつけちゃうのよ。そうすればあなたは王族になり、王国に牙を向けることもなくなる。あなたという戦力が手に入る」


 俺は驚きで声が出なくなった。


「まあ、私の考えすぎだと思うわ。でも最後のあなたという戦力を手に入れる、この点は間違いないと思うわ」


 リアーナはそう言うが、俺はその言葉が頭から離れない。


「もしもそういう風に利用されるとしたら、王女様はどんな気持ちなんだろうな……」


 俺がそう言うとリアーナは難しい顔をして答える。


「何も思えないんじゃないかしら。何も考えられない、私だったらそうだと思う」


 彼女がそう答えると、誰かがドアを叩く。

 俺たちは驚くが、返事を返す。


「どうぞ」


 俺がそう答えると、中に入ってきたのはシーラ様だった。


「!? シーラ様、どうしてここへ!?」


 俺は驚きそう言い、リアーナも驚き目を見開いている。


「少し浩輝さんとお話をと思いまして。あら? リアーナさんじゃありませんか……もしかしてお邪魔でしたか?」


 クスリと笑いこちらに近づいてくる。


「いえ、私の方は用が終わりましたので失礼します」


 そう言ってリアーナは外に出て行ってしまう。


「それでシーラ様、何か私に御用ですか?」


 俺がそう言うと頷く。


「そうですね……少し外を歩きませんか? 夜風に当たりたくなってしまって」


「わかりました」


 そう言って俺たちはギルドの外に繰り出した。


今回見てくれた方、ありがとうございます!

浩輝初めての対人戦闘でした! 上手くは書けなかったけど楽しんでくれたらいいなってい思います!

次回はシーラ様と夜のお散歩に出かけるそうです。浩輝ははたしてどうなってしまうのか。

ではでは次回また会いましょう!

                             それでは皆さんよい読書を!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ