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なぜかワンコは布団に潜り込んでくる

 夕食が終わると約束通りレイはプリンを出す。

 玉座の間には少女モードの四人がいた。

 たいへん上機嫌で大喜びしてる。


「ぷりん♪ ぷりん♪ ぷりん♪ ぷりん♪ ぷりん♪」


 どうやら少女モードが彼女らの正体らしい。

 少女の年齢だというのに食べ物で喜びすぎだが、レイが来る前の貧しい食事を考えれば妥当なのかもしれない。


「それじゃあ、俺は仕込みして終わったら寝るわ。みんなちゃんと歯を磨けよー」


「うん! じゃあねー!」


 アリシアはピルピルと耳を動かしながら答えた。


「おう、わかったぜ」


「わかりました」


「ん。マスター了解」


 他の三人も同じだった。

 聞き分けが良すぎて逆に不安になる。


「まあいいか」


 レイは気にしないことにして、明日の仕込みに戻った。

 そして夜。レイは自室に戻る。


「おかえりー」


「おう」


 レイは首をかしげる。

 なにかがおかしい。


「おかえりー!」


 しっぽをブンブンとふる小型犬……。アリシアが待っていた。


「魔王様……。自分の部屋があるでしょ! 男の部屋に入らないの!」


 だがアリシアは聞いていない。

 レイにボールを差し出す。


「……ほい」


 レイが廊下へボールを投げると喜んで走って行く。

 その隙にレイはドアを閉め、着替えをはじめる。


 かりかりかりかり。かりかりかりかり。


「入れてくだしゃい」である。


「きゅうううううううううううん! ぴにゃあああああああああ!」


「今着替えてるから待っててね!」


 レイは大急ぎで着替えるとドアを開ける。

 アリシアはボールを持ったままレイに飛びかかる。


「きゅうううううううううううん! ぴにゃ! ぴにゃ!」


「わかったから! 悪かったって!」


 レイはアリシアをなで回す。

 アリシアはしっぽをふりながらおなかを見せる。


「つかね魔王様、なにしに来たの?」


「ねんこ」


「また添い寝ですか?」


「うむ!」


 アリシアの正体がレイにバレてからというもの、アリシアは添い寝を要求している。

 確かに少女の姿でないだけまだ犯罪臭はしない。

 アダルトフォームであれば愛人確定だろう。

 だからまだいいのであるが……。


「おーっす、レイ来たぞー」


 シルヴィア。


「レイ様。今日も来ました」


 アーヤ。


「マスター。寝よう」


 レン。

 どれもゆるキャラフォームである。


「君ら部屋あるよね? なんで狭い俺の部屋に来るのかな?」


「いいじゃーん! 減るもんでもなし!」


 シルヴィアが地団駄を踏んだ。

 確かに減るものはない。


「そうですよ! 誰かと一緒じゃないと寝られないんです!」


 ふわふわと飛びながらアーヤも抗議する。


「マスター、マスタニウムをチャージしないと元気でない」


「レンちゃん、それ明らかに嘘だよね。ねえ嘘だよね!」


 レイは抗議するが、次の瞬間、アリシアたちは目をキラキラさせる。

 この無垢な目にはレイも弱いのだ。


「う……ッ! わかりましたって!」


 結局寝ることになる。

 レイが明りを消してベッドで寝っ転がると、アリシアはレイの股の間で丸くなる。

 さらにそこにシルヴィアがくっつき、アーヤも、さらにレイまでくっついて寝る。

 レイは寝ながら考える。なぜこんなにもなつかれているのだろうか……。

 レイはあまり子どもや女性に好かれる顔ではない。というかオークにすらオークと間違えられる人相だ。というか、顔のせいでオークキングにまでなってしまった。

 それが、なんだかよくわからないうちに少女たちになつかれてしまった。

 いったいなにがあったのだろうか?

 よくわからないままレイは目を閉じ、もうなにも考えないようにした。

 そして、いつのまにかレイは眠りに落ちたのだった。

 朝早く、なにやら重い。

 よく見ると、いつのまにかレイの腹の上でアーヤが眠っていた。

 脇の下にあごを乗っけて枕代わりにして牛がシルヴィア。

 ほっぺたにくっついているお化けがアーヤ。

 そして強奪したレイの枕の上ですぴすぴ寝息を立てているUFOがレンだ。

 たった一晩でなにがあったのだろうか。

 レイは不思議でたまらない。


「おーい、アリシア。降りてくれー」


 レイは空いている方の手でアリシアをなでる。

 アリシアの足がピコピコと動く。


「起きてないよー」


「起きてるよね! ねえアリシア、絶対起きてるよね!」


 アリシアはあくまで起きない気のようなので、レイは次に脇の下を枕にしてるシルヴィアを揺する。


「頼む、シルヴィア起きて。アリシアどけてくれ」


「起きてないもん!」


 またもや拒否。

 レイは今度は顔の横にいるアーヤを揺する。


「アーヤ、助けて!」


「起きてないですよー」


 最後の希望はレンである。

 レンはいい子なので聞いてくれるはずだ。


「レン、助けて!」


「スリープ中……スリープ中……」


「お前ら起きてるだろがー!」


 こうしてしばらく動けずに困っているといつのまにか眠ってしまった。

 レイは目の前の光景に固まった。

 レイの腹の上に顔を埋めてすやすや眠るのはアリシア。ただし、ワンピースの少女姿だ。

 腕を枕にしてるのはシルヴィア。こちらも少女姿。

 しかも逆サイドにはアーヤもレイにくっついている。

 そして頭の上には凄まじい寝相のレン。

 完全に通報案件である。


「おーい、みんな起きてくれ!」


「うーん……」


 アリシアが起き上がる。


「ごはんー?」


「そうそう! ごはんだぞー!」


「うーん……」


 目がショボショボしてるようだ。


「アリシア。起きてー」


「うーん? ん?」


 寝ぼけ眼のアリシアが目をこすりながら、あくびする。

 そしてようやく一言。


「レイのえっちー♪」


「マジで拳骨落とすよ」


「えへへへへへ~♪」となぜか喜びながらアリシアはシルヴィアたちを揺する。


「みんなーごはんだよー」


 四天王たちももそもそと起き上がる。


「ごはん~?」


「ごはんですか~?」


「マスター、ごはん?」


 ワカラナイ マスターなのに 世話してる レイ


「とりあえず、悪い噂が立つので姿を元に戻してくれませんかね?」


 アリシアは一瞬、「んー?」と考えると素直に従った。

 ぽん!

 アダルトフォームになったそのときだった。


「オークキング様。食堂に来ないって大騒ぎに……」


 オークが入ってきたとき、そこに映ったもの魔王と狂戦士、さらには骸骨姿のリッチと魔導兵器までをはべらすレイの姿だった。

 どう言い訳してもそうとしか見えなかった。


「ご……ゴッド……!」



 オークは感動に打ち震えると、その場に平伏する。


「伝説のオーク王……いえ、グレート・オーク王様に我々オーク一同永遠の忠誠を誓います!」


 グレートがついた。


「あのな、これは事故だ! 断じてお前らが思っている関係では、ない!」


「わかっております。わかっておりますとも。かの伝説のオーク王、バジャリマーもリッチとゴーレムを寵姫にしていたとか。本来、オーク王とはそういうもの。レイ様も伝説に一歩踏み出したのですね!」


「わかってねー! つか何度も言うが、俺はオークじゃねえ!」


「ふふふ、またまたぁ。では食堂でお待ちしております。みんなにはよく(・・)言っておきます」


 旦那、わかってますぜ。という顔をしてオークは去って行く。

 ツッコミ皆無である。


「アリシアちゃん……俺はこの魔王軍が心配です」


「レイがいるから大丈夫だよ」


 悪役系美女の姿でそう言うアリシアはかわいかった。

 こうしてレイの称号に「グレート」がついたのであった。

 ちなみにこれからどんどん長くなる。

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