第6話 二人の決意
1月4日。年が明けて最初の登校日だ。私、水森理奈は今日、それはもう大きな爆弾を落とす。
「り~なっ!!」
来やがったな胸揉み星人。いつもならばこの後に抱きつかれ為されるがままになる。しかし今日の私に死角は無い。私は理奈。胸を揉まれればしっかり揉み返す女。
「とうっ!」
「うきゅぅっ!?」
喰らえっ!! そのたわわに実った双丘を揉みほぐしてくれるわッ! 必殺のパイルドライバー!!
いつもいつも私をおちょくりおって!! 覚悟しやがr
「いや調子のんなし」
「いてっ」
揉もうとしたら頭を手刀で殴られた。痛い。凄く。みゆりも凄く不機嫌そうだ。胸を隠すように腕を組み、頬がちょっと赤らんでいる。これはあれだ、ガチで恥ずかしかったパターンだ。
そんなみゆりを見てようやく我に返った。
「ごめん、何かに操られてたみたい」
「だよね、絶交してやろうかと思った」
危ない……あの目はガチだ。ガチで絶交するつもりだったな。……いや待て。貴様いつも私にそれやってたよな? おかしくない? いや、音の出ない口笛吹いても騙されないよ、流石に。
というわけで……
「え、やめて? ジリジリと近寄ってこないで? ねぇ。ねぇってば!! 危ない!! 今にも何かを鷲掴みにしようとしそうなその両手を早く引っ込めてーっ!!」
わしっ
「あぁっ……我が生涯に……一片の悔い無し……」
私は理奈。どんな強敵が現れてもこの豪腕で薙ぎ払い続ける女。
「大丈夫か、柊矢」
「あ、あぁ」
「……俺に言われたくは無いだろうけどさ。柊矢って女のことになるとそこら辺の岩より硬くなるよな」
「……え、下ネタ?」
「その冗談が言えるなら大丈夫だと思う。頑張れ」
「お、おう」
1月4日。俺は今日この日を死日と定めた。死因は何かって? 爆死だ。俺自身が爆弾となって――過去の自分をぶち壊すために。
放課後が全ての勝負時だ。受験なんて今はどうでも良い。いやどうでもよくはないけど。
ただ、今日の放課後はそれほどに大切な戦いだ。
まずは……前哨戦。戦いを起こすには準備が必要だ。誰も竹槍だけを携えて戦争に行こうなどとは思わないだろう。そう、だから武器がいる。戦うための立派な武器が。目的地は3年A組の教室。標的は――佐野みゆり!
「佐野さん、いる?」
「呼んだ?」
「うおっ」
まさかの後ろにおられました。
突撃するつもりが突撃されるような形になり、思わず驚愕の声を漏らす。あと顔が近かったので思わずのけぞった。こいついつも距離感がおかしいんだよ。
「何? あたしに告白? ごめんね……私彼氏いるんだ……」
「待とうか。告白もしていない俺が何故振られないといけない。というか既に振ってるような空気になっちまったじゃねえかおいどうしてくれるんだよ」
「あたしに言う?」
「事の発端だろうが……」
「それで? 用件があるんでしょ」
「お、おう。……ここじゃちょっと注目されてて言いにくいんだが……場所を変えて良いか?」
「あ~、やっぱり告白なんでしょ~?」
「ちげえよっ!!」
既に朝ご飯分くらいのカロリーを消費できた気がする。疲れた。