ドアの向こうであがちおんが踊っていた!
先生の姿が見えなくなった夕方の学校。
阿美とキノコ、雄一の三人は足音が響かないよう靴を手にゆっくりと廊下を歩いている。
「何かいるな」
阿美のセーラー服のポケットからハムスターのフクが顔を出した。気のせいかもしれないが、少し顔つきが邪悪に変化しているように見える。
「俺の顔にさぁ、なぜか、眉毛ができたんだ」
邪悪の元は眉毛なのか?
「開けるよ」
雄一がゆっくりとドアを開ける。
すると、中には大きな黒犬がいた。
「待ちすぎました。すでに夕刻。私の活躍できる時間は過ぎています」
犬は地べたに寝そべりながら、阿美たちを見て気だるげに言う。
「ぐざふぁんがあなたに味方せよと」
黒犬はそれだけ言うと、ふわっと姿を消し、犬のいた場所には真鍮の指輪が転がっていた。
顔を見回す3人。
「ぐざふぁん?」
阿美の後ろで様子をうかがっていたキノコがつぶやく。
「堕天使だよ」
クイズ王並みに何でも知っている雄一が答えた。
「前に水路であった、あのぐざふぁん?」
阿美がゆっくりと魅入られたように指輪に近づきながらポケットのハクに話しかける。
「やつは阿美のなんなんだ?」
指輪に触ろうとした阿美を雄一が制した。
「待って、僕が!」
ところが、
「おもっ」
指輪はびくともしない。
「これ、あの黒犬が変化したのかなぁ、やばいよ」
「ん?」
今度は阿美が触る。すると、指輪はポンとはねて阿美の左手の人差し指に収まった。
「重くないよ、軽い」
「そんな魔法?」
キノコが駆け寄って、阿美の手を掲げる。
「そんな魔法、あるね」
ちょっと雄一は不機嫌そうだ。
キノコによって阿美の左手は天井を指すようなしぐさになっている。
突然、指輪から影が飛び出し、黒い天使の形になる。体を左右に動かし、両手を回し、くるくると踊る影。
影が突然文字になる。日本語でも英語でもない文字。
「ありがとうって古代文字だ」
雄一が驚いたように言う。
「悪魔と仲間なの、君?」
雄一が心底驚いた顔で阿美を見た。
「読めちゃったよ、古代文字」
「なんで?何でも知ってる雄一くんだからじゃないの?」
「違うよ、さっきさ…」
雄一が戸惑ったように言葉をつなげようとしたときに、
黒い煙が大きな筋となって、足元に道を作る。
道の先には、小さな暖炉があった。
「汚れるなぁ、また」
フクは阿美のポケットの底にしがみついた。
「時間がないらしい。行こう!」
再び文字となった黒い煙を見て、雄一が阿美の左手をとる。
「大丈夫かなぁ、二人だけなんか特殊能力持ってるけど、私はなにもないんだけど」
キノコが不安そうにつぶやいた。