中学生パワー全開!次の敵はなんだ?
タマおばあちゃんの葬儀も引っ越しも終わり、阿美は学校に戻ってきた。数えてみると、学校を休んだのはたった4日だった。
「おはよー」
1年3組の扉を開けると、皆が一斉に阿美を見た。
「引っ越したんだって!」
「学校近いんでしょ、もしかしたら歩いてきた?」
「いいなぁ。いいなぁ。家族のいない生活、いいなぁ」
なんで、知ってるの?
阿美はクラスメイトに囲まれながら、考える。
「誰かに言ったけ?」
「ミームンが言ってたよ、大変だから優しくしろって」
「さすがミームン、気遣いゼロ」
クラスで笑いが起こる。
ミームンとは担任の先生の愛称だ。三村仁でミームン。
ちょっと小太りなところがムーミン似の27才男子。
「いじめは許さないぞ!!」
が口癖だけど、配慮がいつもずれている。
「ふつー、言わないけどね」
「さすが、ミームンだから」
皆が口々に阿美に話しかける。
「待ってた!待ってたよ~」
抱きついてきたのは、キノコだ。
「見つけたの、凄いとこ、お昼、お弁当だよね、すっごいたのしみ。すっごいとこだから」
キノコはキャラに似合わず興奮している。
「ねえ、なんで今日はみんな来てるの?」
阿美がクラスを見回して、人数を数える。
2,4,6,8・・・全員いる。
いつも保健室登校している歩も、遅刻ばかりの美穂もみんないる。
「明日からテストだからじゃない」
「え、そうだっけ?忘れてた」
「大丈夫大丈夫、なんか、今日、テストに出るとこ、教えくれるみたい」
「ミームン、口軽いからさ、きょうはみんなでチヤホヤしようって」
ドアが開いて、ミームンが入ってくる。
「ごきげんよー」
先生もごきげんのよう。
まあ、結論から言えば、ミームンは問題を教えてはくれなかったけど。
阿美の複雑な家庭事情は一気に学年に広まり、阿美は気兼ねなく白飯弁当を食べることができる立場となった。ただ、今日から阿美は塚田さんのお手製弁当を持ってきてるから、もうトイレ飯する必要はないんだけど。だから、みんなと食べてよかったのに、キノコがそれを許さなかった。
「こっちこっち」
地下2階の一番奥にある放送室を通り過ぎたところで、キノコが立ち止まった。廊下の突き当りの変哲もない壁を指さしている。キノコは笑みが止まらない。
「見てて」
指先を壁の隙間に差し込むキノコ。突然、壁が扉に変わった。
「秘密の部屋、みつけちゃったの。今日はここでランチ!」
「ここで、お弁当食べるの?」
「そう」
「そうって、そんな感じじゃないし、それに、入っていいの?ゴブリンとか悪魔どか、そんなの出てくるんじゃ…」
キノコが笑いだす。
「阿美、そんなにファンタジーだったっけ?」
「先生たちの秘密会議の部屋みたいよ、先輩から聞いた」
「ん?」
「ここは公然の秘密の部屋なんだって」
「公然?」
「そ、知ってる人は知っている。だから公然の秘密。さ、入るよ」
キノコは部屋の扉を開けて、そのまま進む。阿美は嫌な予感がした。ほのかに水と草、泥の匂いがする。
「この先にいるよ、ゴブリン」
キノコはうれしそうに笑った。
「できれば、ドラゴンとケルベロスとドワーフも!」
ほんとにいるかも、阿美はキノコには予知力があるんじゃと思い始めている。だって!
そのとき、扉の中から声がした。
「だめだよ、内緒ではいっちゃ」
校長先生の声だ。
「やばっ!」
二人は廊下を駆け戻る。
「校長って、魔王使えるっけ?」
「魔王?」
「あ、魔法」
「魔法も魔王も使えないでしょ、どう考えたって」
逃げ帰って教室に戻るのもしゃくなんで、結局、いつものトイレで2人でお弁当を食べている阿美とキノコ。
「校長、来年定年だってよ」
「若く見えるよね」
「人工的魔法のおかげだってお母さんがいってた…ねえ」
キノコが続ける。
「お弁当、美味しそうだね」
「うん、ありがと」
阿美は甘めの卵焼きを頬ばる。
「あのね、わたし、トイレでお弁当、もう飽きてるんだ」
「知ってた」
明日はクラスで食べよう、そう二人は約束した。
でも、明日はすっごく大変なことになっちゃうんだけど。
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ありがとうございます。
つたない文章ですが、壮大な物語を夢見ています。
今後ともよろしくお願いいたします。次の更新は25日夜です。