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おばあちゃんが作ったダンジョンで泳いでみたら…  作者: まいる
魔物退治の王道?ドラゴンを小さくして持ち歩きたい願望をかなえる
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料理上手な塚田さんの切実なお悩み

「ええ、そうなんです。田舎に子供を預けてます。2歳の男の子です。ええ、かわいいです。でも、仕方なかったんです。そうです、ええ、夫の浮気とパチンコで…気が付いた時には借金が200万あって…家を出て子供を連れて上京したんですが…田舎ですか…どこかって…千葉です、野田。野田知ってますか?…ええ、そんなに遠くはありません…田舎じゃないって?そうかもしれません。一人暮らししている理由?私も田舎で子どもと暮らせばいいって…それができない事情が…逃げてるんです…いろいろ…」


ゴブリン退治の後、住人全員で葉山アパートの近くにある中華料理店で食事をした。美味しい紹興酒のボトルがサービスで出て、飲める人が少なかったので、塚田さんだけが一人でがぶ飲みしていた。で、上記のような独り言が始まったのは、アパートの食堂に戻ってきてから。

「あれは誰と話しているの?」

玲子が炭酸水のペットボトルを手に、壁に向かって話す塚田さんを眺めている。翌日、お見合いがあるので顔がむくむのは嫌という理由で玲子は紹興酒を飲まなかった。

「テレホン人生相談だ、ハム」

飲んでないのに、阿美はほろ酔いの上機嫌だ。何かの料理に酒が使われていたのかもしれない。


「たまたまなんです…電話相談で話した方がとてもいい人で…ここのアパートの大家さんで…ええ、格安でいいよって…ううっ、本当に格安で…最初は住むところもなくて、もう住み込みの夜の仕事しかないって…でも、昼間の仕事見つけて、子どもにも仕送り出来て…料理さえ作ってくれればいいよって…だから、ここ追い出されたら…怖いけど…あんなのに襲われたら…だけど、子どもかわいいし…」


「塚田さん、本当に知らなかったの」

雄一は部屋からもってきたミカンをみんなに配りながら、山田に聞いてみる。

「そうだっけ?」

山田は塚田さんが地下の秘密を知ってるのか知らないのか気にしたことがなかった。というか、知らないってあるんだろうか。


「ねえ、塚田さん、さっきと雰囲気違うよね」

ミカンをもらった玲子がじっと塚田さんを見ている。

「少し若くなった?ってか、痩せたんじゃない。ゴブリンの血を流すんでお風呂入ったからかなぁ」

「あのお風呂、どんな希望でも叶うのかなぁ」

ミカンを自分から取りに来た阿美がつぶやく。

「頭良くなりたい!。せめて宿題ができるぐらい」


雄一は塚田さんに近寄り、ミカンを渡した。

「部屋で寝たほうがいいですよ。もう変な動物は出ないから。ちゃんと入り口に鍵しましたから」

塚田さんはミカンを受け取って小さくうなずいた。

「タマおばあちゃんの日記読み返したら、結界の作り方も書いてあったんで。だからもう大丈夫ですよ、もう奴らは、来ないです」

「塚田さん…?」

雄一が塚田さんの顔をのぞき込むと、塚田さんはいつの間にか眠っていた。

「寝てる…」

「どうする、小さくして部屋に連れていく?」

「どんな副作用があるかわかんないのに、よくそんなことを…」

雄一の言葉を玲子が制して、塚田さんの方をポンポンと叩く玲子。

「起きて、部屋で寝ましょう」



「塚田さんに子どもいるの、知ってた?」

阿美が雄一に聞く。

「知るわけないよ」

「ここの住人ってタマおばあちゃんが選んでるんだよね、塚田さんって何か持ってるのかなぁ、実は」

「俺だって何も持ってないよ」

と雄一。

「塚田さん、引っ越しちゃうかなぁ。そしたら、お弁当、どうしよう」

阿美は今は冬休み前でお弁当はないけど、3学期からのお弁当が不安でならない。


「それより、明日、なんでゴブリンが上がってきたのかを探検に行くけど、一緒に行く?」

山田が阿美に声をかける。阿美の指輪がきらっと光った。

「その堕天使は行きたいようだよ、地下に」

「そうだ、忘れた」

阿美は光る指輪をじっと見つめた。


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