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おばあちゃんが作ったダンジョンで泳いでみたら…  作者: まいる
魔物退治の王道?ドラゴンを小さくして持ち歩きたい願望をかなえる
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キノコ、ドラゴンを小さくしようと画策する

「で、やることにしたのか?」

「そうハムよ」

カラカラカラと回し車を回しながら、ハムスターのフクが阿美に声をかけた。阿美は自分の部屋に戻ってきている。

「そうハム、って言わねーよ、って何回言ったら…」

「わかったハム」

ぶっきらぼうに答える阿美は、頭にハチマキを巻いて、山と積まれた中学の宿題と格闘している。

「よく考えたら、私だけ勉強ができないのよ、あの二人は…」

安孫子ちゃんはお母さんの母校で生物部入部してドラゴンの世話をしたいがために中学受験をしている。成績に余裕があったので、塾にも通わずに合格していた。

キノコは、第一希望の私立中を受験したとき、緊張のあまり寝てしまったそう。そんなことあるとは思えないけど、キノコがいうのだからそうなんだろう。キノコが通っていた私立中学受験塾の上位クラスが、阿美と同じ学校に進学するのは初めてらしく、本当にいいのか、と何度も塾講師から聞かれた、と言っていた。

そんな二人の楽しそうな笑い声が葉山アパートに響いている。そう、キノコは母親を何とか説得して、安孫子ちゃんの部屋に泊ることになったのだ。成績の良い二人は宿題も余裕。今日はガールズトークに花を咲かせるらしい。

しかし、二人とは阿美は違う。このところの騒動でたまってしまった宿題をなんとか提出しなければならない。

「教えてもらえよ、あいつらに」

阿美がフクをにらんだ。

「数百円のこづかいで、ドラゴンの世話なんて、危険だろ。普通数十万もらえるだろ、そんな仕事」

阿美が再び、フクをにらむ。


その頃、玲子と山田は、二人でウキウキしながら、地図を見ている。

「僕のペットはドラゴンなんです、名前はこれからで…原産地は…」

山田はぶつぶつ口のなかで呪文のように呟きながら、地図を見ている。

「ゴブリンとかに見つからないように、餌を運ぶの、難しいなぁ」

「途中で魔物狩りして、ドラゴンの池に投げ込む?」

玲子は物騒な提案をしている。

「そんなに弱い魔物、いないでしょ」

「安いドックフードでいいって言われてもね…」

ネット通販で売っている大型犬用のドックフードをドラゴンが食べてたなんて…

「切ない…」


そして202号室では…。

安孫子ちゃんとキノコが秘密の会議をしていた。

「どうしてもペットにしたいの」

キノコはドラゴンの存在を知ったとき、「小さくして手乗りドラゴンにしたら」どんなに可愛いだろう、と思った。その時は単なる思いつきだったのだ。

だけど…

それから、ドラゴンのことが頭から離れない。フクのようにカラカラカラと回し車に乗るドラゴン、制服のポケットに入れて一緒に学校に行ったらどんなに楽しいだろうとか、お風呂に一緒に入ったら火を噴いてぬるま湯を温めてくれるのかなぁとか、いろんな妄想がキノコの頭の中を駆け巡っている。

今日、玲子さんがドラゴンの世話係になると聞いて、キノコはショックを受けていた。

「わたしの…なのに…」

そのショックは安孫子ちゃんにもあった。生物部の部長として、代々続く大切な役目をなくしてしまった…お母さんになんて言おう…安孫子ちゃんは母親の顔を思い浮かべていた。

「どうしよう…」

ふたりの気持ちはすれ違ってはいるけれど、しなければいけないことは重なっていた。

「地下にあるお風呂で泳ぐと、魔力が使えるようになるみたい」

キノコは人みたいな顔になったフクが、コップの中でだんだんハムスターに戻るところも見ている。

キノコは、魔法のランプが欲しいと思った。千夜一夜物語に出てくる3つだけ希望の叶う魔法のランプ。希望は1つだけど。

安孫子ちゃんは、時間が元に戻って、ドラゴンの飼育係に戻れたら、と思っている。本当にお風呂にそんな力があればだけど…。

二人は夜になったら、そっと、お風呂に入りに行こう、と固く固く誓った。


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