ドラゴンは誰のもの?
やっと続きが…GW中に完結を!
さて、阿美とキノコは、寄り道は校則違反だと嫌がる安孫子ちゃんを無理やり、葉山アパートに連れ込もうとしていた。ところが、
「葉山アパート?」
その名前を阿美が出した途端、安孫子ちゃんの顔が緩む。
「そこうちだ!」
「うち?」
阿美とキノコは同時に叫ぶ。
「202号室の表札に安孫子って書いてない?」
安孫子ちゃんは、うん、うん、とうなづくと、すたすたと歩きだす。
「場所、わかってるから…」
慌てて、阿美とキノコは安孫子ちゃんの後を追いかけた。
道すがら聞いたところによると、安孫子ちゃんの家は神奈川の先のかなりの遠くで、学校まで一時間半以上かかるらしい。そこで安孫子ちゃんのお母さんがタマおばあちゃんに頼んで、帰れない時に使うように部屋を借りたというのだ。
「まだ、一回ぐらいしか泊ってないけど」
掃除は月に1回程度、安孫子ママがしてるから…と、聞いて、たまらずに阿美が安孫子の肩に腕を回した。
「ん?どういうこと?」
「タマさんも卒業生なの。この学校の」
そういえば、安孫子ママも卒業生だった。
「タマさんはね、生物部の初代部長。お母さんの大先輩」
いろいろなことが繋がってくる。
「うちの学校がもともとダンジョンを作ったのかなぁ」
急に頼んだのにも関わらず、この日も塚田さんは人数分の夕食を用意してくれた。今日はカレー、ゆで卵とアスパラがトッピングされている。
安孫子ちゃんはお母さんにメールして、今日はここに泊っていいことになったらしい。家に帰らなければいけないキノコはずっとふくれっ面をしている。
「じゃないみたい。ドラゴンはタマさんが偶然見つけたって」
「そんな偶然って?」
一緒にカレーを食べていた山田と雄一が声をそろえた。
「そんな偶然…あるはずがない!」
安孫子ちゃんはカレーを食べながら、スマホを見ている。
「校長先生からメール。今日会議で、あの地下に繋がる扉、コンクリで固めちゃうんだって。生徒が危ないから」
安孫子ちゃんが、ため息をついた。
「生物部の仕事も終わりみたい。次はプロの人が餌をあげるんだって」
「プロ?」
「そうみたい。どんなプロなんだろ」
なにげなく、安孫子がつぶやいたとき、仕事帰りの玲子が飛び込んできた。
「大変よ…変なメールが…あ、初めまして」
安孫子ちゃんに気が付き挨拶する玲子。
「変なメールってもしかして…」
感のいいキノコが玲子が手にしたスマホをのぞき込む。
「ドラゴンの飼育依頼だったりして」
「…なんでわかった?」
「なんで、玲子さんのメアド、校長先生が知ってるんだ。なんで?」
雄一が阿美とキノコをじっと見る。
慌てて首を振る二人。
テーブルに不思議な空気が流れる。
「そんなに何でもわかっちゃうの?」
キノコが覚えた声でつぶやいたときに、塚田さんがデザートのブドウをもってやってきた。
「あ、私です。夕方、阿美ちゃんの学校から電話が着て。背の高い女性の電話番号が知りたいっていうので…ごめんなさい、学校の先生だから…安心かと思って…」
と塚田さん。
「安心?」
ドラゴンに秘密に餌を上げてるような学校は安心なんだろうか。
阿美の疑問は小さな声となって外に出てたみたい。
「あの地下に他に何がいるのか、みんなわからないみたいで。他の学校の先生たちもはっきりは言わないみたい」
安孫子ちゃんの話だと、皇居近くの男子校の学食がすごい分量の豚肉を購入するので、話題になってるとのこと。
「あれは人間用じゃないな、って」
「やすっ!」
メールを見ていた玲子が声を上げた。
「ドラゴンに餌あげるのって大変でしょ、食べられちゃうんでしょ、にしては、安いよ、見てよ」
そこには、3桁の数字が報酬として記載されていた。
「なぜ、こんなに安いの、なぜ!」
玲子は仁王立ちで叫んでいる。