最初っからテンプレさんは迷子です
「いざ降臨っと!」
転移の魔方陣の光が消えるとまず感じたのはむせかえる様な木々の香りだった。見上げると太陽は真上にあり、目が眩み手で庇う。
「取り敢えずは人のいる場所を探すか…。その前に持ち物を確認するかな…。」
今着ているTシャツにジャケット、ジーンズにベルトに靴下にブーツタイプの安全靴…鞄には…メモ帳3冊とペンが20本ほど、スマホと太陽光充電器にスマホ用携帯バッテリー、ウエットティッシュと飴とチョコレート、空のペットボトル、タオル、ハンドタオルにB5版のラノベが2冊…昨日買った100円ショップで買ったLEDライトと単3電池が8本…以上だった。
「マジか…。意外と鞄は重いのに大した物がない…。まぁ、日本在住者で武器を携帯してるヤツは普通はいないが…。」
ぶつぶつ言いながら目についた1m20cmくらいの木の枝と拳の半分くらいの大きさの石ころ3つを拾う。枝は脆そうだが何も無いよりは良いだろう。
「取り敢えずマップでも見ながら適当に歩くしかないな。山の中に紛れても仕方ないし平野の方を目指すかな。」
こうして適度に物陰に隠れながら広い場所が見える様に気をつけながらひたすら歩き始めるのだった。
…それから6時間。
「めっちゃ暗くなったし何とも出会わないし人工物が1つもないし…こんな見通しが良いところではいくら夜でも寝るのは危険だし移動し続けるしかないかな…。」
そして移動を続け更に時間は過ぎ去りやっと1つの答えにたどり着いたのだ。
「もしかして…見渡しが良くて何もないところには何にも居なくない?人も危険だから守りやすい場所に普通集落作るだろうし、魔物の行動範囲もそうじゃね?こんな広い場所にいるのは足の早い草食動物やそれを狩りにくる肉食の生き物なんじゃ…。」
(↑魔物に遭遇しなかったのは運が良かっただけw)
取り敢えず、その日は人より少しだけ大きめな岩に寄り添う様にして集めた枝で周囲をカモフラージュして寝る事にした。
「スマホのバイブでアラームセットしたし、おやすみなさい…。」
こうして初日の幕は閉じたのだった。
お気づきの方も多いとは思いますが転移してきた場所から反対に行けば集落がありました。しかし、きっとその集落には辿り着かず駄女神が用意したテンプレは永遠にスルーされていくのです。
そして当然本当に迷子なのはテンプレではなく主人公なのです。
鞄の中身は今日の作者の鞄の中身ですね(笑)