加護を得よう【後編】
「えっと、このスキル付与券ですっけ?これどうやって使えば良いんでしょうか?」
じゃあ、さっさとスキル付けちゃいましょうと立ち直りの早い駄女神が差し出したチケットを眺めながら質問すると、何やら空中に魔方陣を描き始める。
「ちょっと待っててあげて今準備してるから、お茶もう一杯どう?」
ヘラ様とお茶をすすりながら待つこと5分。魔方陣から何やら派手な装飾がなされた見たことがある様な箱が出現する。
「こ…これって…スロットマシン?」
そう現れたのはギャンブルの代名詞ともいえるスロットマシンだった。懲りてないの?やっぱり懲りてないの?と疑いの目を駄女神に向けていると横からフォローが入った。
「スキルの付与っていっても実のところ何でも好きなのをって訳にはいかないのよ。それで少し演出入れたいなと思ったらスロットマシンっていうのは定番なのよ。別に他意があった訳じゃないわ。」
「じゃあ、罰ゲームにカジノっぽくバニースーツで司会進行とかって訳にもいかないですね。」
ビクッっとしたビクティニアスを二人でニヤリと笑いながら見る。
「なっ!一応、わたしは神なのよ!女神なのよ!バニースーツなんて…なんて…。」
「はいはい、話進めるわね。バニーちゃんは惜しいけど今はスキル付与しちゃわないとね。そこの挿入口に券を入れて横のレバーを引くとスタートするわよ。」
…ウィーン…ウィーン…何度入れても出てくる券。シワを伸ばしながら気になった事を聞いてみる。
「そういえばスキルって何種類くらいあるんですか?あとスキルの横の数字はスキルのレベルですよね?最大どれくらいなんでしょう?」
答えたのは駄女神。
「えっと、アルステイティアで有効なスキルの種類は現在26803種ってところね。一応全部のスキルはそのスロットから出る仕様にはなっているけど種族指定のあるスキルや使用不可能なスキルは出ない様になってる親切設定よ。勿論、一般的なスキルの方が出やすくてレアなスキル程出にくい設定よ。一応、完全な実力機で回転スタートしてから同じタイミングで回ってから止まるまでは同じスピードで回ってるしボタン押したタイミングでバッチリ止まるから目押しも可能って話だけど、スキルレベルが10まであってそれもそれぞれ入っているから、ダブり含めて250万個を超える数の絵柄が一周10秒以下で回ってるから実質神眼でもなければ絵柄なんて見えないけどね。神眼があっても反応なんか出来ないけど。」
あ、券入った!1枚、2枚、3枚…っと…
「あんまり聞いてないわね?まぁ、良いわ。さっさと回して頂戴…8回もあるんだからリズムよくやってよね。」
「ねぇ、綺麗な女神のビクティニアス様…ここに10枚で1回オマケって書いてるんだけど…。」
「ちょっと!8回も引けるんだから良いでしょ!そんだけのスキルがあったら英雄クラスよ!贅沢言ってんじゃないわよ!散々私の事を心の中で駄女神なんて呼んで何が綺麗な女神のよ!調子良すぎよ!」
やべっ、こっちも心読まれてたし…でもなぁ、何か10枚で1回オマケとか書いてあると8枚でやったら負けって気分になるよねぁ…。
「ふふっ、そうね。何だがそれは気分的に負けな気がするわよね。じゃあこうしましょう、わたくしとビクティニアスでもう1枚ずつだすわ。わたくしからは夫がかけた迷惑料として、ビクティニアスからは自分のやった事の謝罪の意味を込めてね。それでどう?ビクティニアス?」
「………ヘラ様がそう仰るなら。でも貴方覚えてなさい!この券は神が溜めている神力を一定量消費して作り上げる超レアなアイテムなの!本来なら歴史を動かしたいとか神と人の間に子が為された時くらいしか使われる事がないの。それも10枚もなんて過去の歴史上に使った事例は多分ないわ。本当に特別で光栄な事だと知っておきなさい!」
そんな貴重な物だとは知らずにドン引きしていると二人の女神様はさっさとスキル付与券をどこからか取りだし渡してくる。(ヘラ様が胸の谷間のあたりをごそごそしてたのは忘れる事にしよう。少し温かいし…。)
「「じゃあ、改めてスキルスロット11連スタートっ!」」
ガチャン!スタートのレバーを引くと小気味良い音がなり響きスロットのロールが回転を始めると同時にスロットマシン自体が横長に伸びて11個のロールとボタンになっている。うん、絵柄なんて早すぎてみえません。
ぽちっ…鑑定3
ぽちっ…石工4
ぽちっ…解体2
ぽちっ…採掘3
ぼちっ…革細工3
「なんか地味ね…。」
「これで石と木を使った立派な大工さんになれるわね。」
「………………。」
ぽちっ…収納空間 レア☆
ぽちっ…鍛冶2
ぽちっ…調合3
ぽちっ…治癒魔法1
ぽちっ…伐採1
「え?もうラスト?地味過ぎない?」
「運40が泣くわね。スキルレベルも低いし…。」
「……………………。」
ぽちっ…地図(3Dホログラム付き・半径3km) レア☆☆☆
「…えっと…立派な大工さんになれるわよ…。」
「もう言葉にならないわね。もう何度か回させたくなる罠なのかしら…。」
「……………優しさが痛い…。」
スキル付与後のステータス
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鳴海 優(20歳)
職業《転移者》
称号《無類の生産好き》《スキル収集家》《賭けの景品》《転移者》
レベル 1
生命力 160
魔力 223
力 112
体力 86
精神 79
素早さ 91
運 41
スキル《剣術2》《体術2》《治癒魔法1》《鑑定3》《解体2》《採掘3》《伐採1》《農業3》《鍛冶2》《石工4》《木工4》《革細工3》《調合3》《土木2》《建築1》《算術3》《美術3》《歌唱2》《言語翻訳》《収納空間》《地図》
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「取り敢えず、スキル付与も終わったし大地に立つの巻きかな?」
「そうね、いざ降臨!よね?」
「女神様のお二人?何故に目を合わせない…。て、ちょっと!なんか魔方陣が足元で輝いてるんですけど!?ちょっと!待って!ねぇってば!な…。」
こうして、わたし鳴海優の異世界転移は行われたのだった。うん、とりあえず幻想世界アルステイティアだっけ?行ってきますよ、もう!
「あんだけ騒いでスキルいっぱい付けて職人が出来たわけね。」
「大英雄が出来てもおかしくなかったハズなのにね…。やっぱり貴女の世界の発展とか暫く保留の運命なのかしら?コストだけ言えば小惑星が作れたわよ?」
「まぁ、期待するだけはタダですから…。」
「期待ね…まぁ、タダも何ももうコストかける気にならないわよね…。面白い事でもしてくれて暇潰しくらいにはなれば良いんだけどね。」
…こうして二人の女神も消えていくのであった。




