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日本刀とミコト

「で、なんでこんなに人がいるんだ?」


約束した日本刀の試し斬りをしてみようとミコトを呼び出すと、そこには何故か20人以上のギャラリーが出来ていて、ザークにクック、ミコトと共に訓練した新兵たち…それにジータまでがその中に集まっていたのだ。


「美味しい料理とかは別に無いんだけどな。」


「別に食べ物に集まってきた訳じゃないんだけどな。マサルが新しい武器を作って試すって聞いたから見学に来たんだよ。」


「それで気に入ったら自分にも一振り打ってくれって事だな?」


コクコク頷く数名と、冗談でもマサルの打つ武器は高くて買えない新兵たち。


「ミコト!その中から好きなものを4〜5本選びな。お勧めは1番左側のヤツだぞ。」


楽しくなって打ち過ぎた1ダースの刀。反りや材料といったものを少しずつ変えてデータを取ったので、マサルにとっては遊び終えた玩具に過ぎない。


「ねぇ、マサルさん?この刀にはなんで波紋が無いの?」


一押しの刀を手にしたミコトは何故か、それにだけ刃に日本刀の特徴とも言える波紋が無い事に気付いた。


「それはアダマンタイト製だからだよ。通常の釉薬(うわぐすり)じゃあ波紋が出なかったんだ。まぁ、ミコト君の力なら問題になるような事は一欠片も無いから気にしないでくれ。」


あっさり素人、一般人では誤差にもならないも笑い飛ばすマサル。


「ミコト君。アダマンタイトってのは通常では加工出来ない程に硬いんだ…一部の職人技を持った一流のドワーフやエルフなんかじゃないと加工が出来ない程だよ。………そう、産業になると思っていたのに加工出来る人が少な過ぎてなかなか売れないくらいにね…。」


ザークの目の端にはキラリと光る涙の玉が…。


「く、苦労したんですね………。」


「何を2人でコントやってんだ。ミコトは試し斬りするから準備運動ちゃんとやっとけよ。」


そう言ったマサルはアイテムボックスから藁で出来た人形を取り出し、軸になっている木を何も使わず地面に突き刺していく。


「ここの地面めちゃくちゃ硬いんですけど…。」


「ミコト君。気にしても仕方ない、準備しよう。」


今度はミコトたちが準備運動をしている横でマサルは一本の刀を手に取り、鞘を外すと軽く横に振るう。太刀筋は早すぎて見えなかったが、初動と振り終わりの姿勢で刀を振るったのが分かった程だったが。


「まぁまぁかな………刃こぼれもしてないし、問題はなさそうだ。」


「刃こぼれって………あっ!」


刀を振るってから何秒も遅れて藁人形が微かな風によってズレ落ちる。


「何なんだ…何が起こったんだ?」


「おれも初めて見たけど、あれが日本刀の太刀筋だよ。」


「切断面もこんなに美しい…。」


いつの間にか側に来ていたクックは目の色を変えて、切断された藁人形を見ている。


「じゃあ、早速ミコトは刀の握り方や振り方を覚えて貰う。」


「「オレたちもやる!」」


ザークとクックにジータもミコトに教える内容をかぶり付く様にして覚えている。


「とまぁ、簡単に説明したけど実際にやってみないと分からないしな。」


「じゃあ、ちょっとやってみるよ。」


ミコトは鞘から刀身を抜くと構えて上段から袈裟懸けに刀を振り抜く。


「痛っ!」


刀は藁人形の芯の木に当たり刃が止まってしまう。


「ちゃんと引かないと斬れないぞ?」


「そんなに簡単に出来ないよ…。」


「じゃあ、次はオレだな!」


ザークが待ちきれないといった様子で藁人形の前で構える。既に鞘は外して地面に転がっている。


「おりゃっ!!」


ミコトと同じように袈裟懸けに刀を振り下ろすザーク。そしてそのまま折れて刃は飛んでいく………飛んで………さくっ。


「ちょっと!?刺さった!足に刺さったよ!?」


完全にとばっちりを受けたジータを唖然としてみる一同。


「刃がちゃんと立ってなかったな。」


「冷静に分析してないで抜いて治療してよ!」


ジータを治療した後も、チャレンジャーたちはアダマンタイト製のもの一本を残し全ての刀を折ってしまった。


「………何だよ、欠陥品じゃないのか?」


「なんでこんなに折れるんだ…。」


「完全に力量不足だな。日本刀は扱いが特に難しい武器なんだ。それに藁人形相手にこんだけ折っている様じゃ魔物相手にどうやって使う気だ?」


「……………完全にアダマンタイト製オンリー?」


「ミコト………いくら余ってる資材と言ってもアダマンタイトは凄く高価な素材なんだぞ?本来は、素人や新人が持つような武器じゃないんだ。」


「つまり………この世界では刀は向いてない?」


「そもそも人間相手なら兎に角、人意外に使うには刀は脆すぎるんだよ。基本的に生命力が高い生き物、硬い生き物が多いからな…長期戦すると武器が打ち負けるのは決定的な弱点になるんだ。」


そう、武器が頑丈なのは生存競争を生き残る為の大事なファクターで、日本刀はそれにそぐわないのだ。


「まぁ、アダマンタイトの刀を極めたらなかなか面白い使い手になれるかもな。」


その日の晩、振り下ろした刀の重さで自分の足を斬りつけたミコトは見事にやる気を無くし、アダマンタイトの刀はマサルのアイテムボックスの中で死蔵される事となったのだった。

日本刀が素人に使えるかぁ!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] そもそも人間相手なら兎に角、人意外に使うには刀は脆すぎるんだよ。 →人以外
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