【side story】メイと船作り
ある日、いつもの様に工房へと足を運ぶと作業台の上に見慣れぬ木箱が置いてあった。
「なんだろう………これ………??おにいちゃんのかな?」
メイが1人悩んでいると次々に船を作っている仲間の子たちが集まってくる。しかし、誰1人として木箱には心当たりが無く、しっかりと釘打ちして止められた蓋を勝手に開けて良いのかどうかの判断も付かず時間だけが過ぎていく。
「作業出来ないから取り敢えず机から下ろそうか?」
と誰かが提案して箱に手をかけたその時、
「あれ?まだ開けてなかったの?」
入り口から聞きなれた声が聞こえた。
「やぁ、みんな。今日はその箱の中身について説明しに来たよ!」
子供たちの教師としてすっかり定着したゼラフィティス様だ。
「今日はみんなに新しいパーツを持って来たんだ。なんと!これを付けると舵がとれる様になるんだよ!マサルと共同開発した新しい魔道具なんだ!」
「おにいちゃんは?」
「マサルは新しく作った工房でドレスを作ってるよ?あ、あとこの工房はみんなにあげるってさ。」
みんながワッと喜ぶ中、メイ1人だけつまらなそうな表情を浮かべる。
「どうしたんだいメイちゃん?」
「おにいちゃんも一緒にここでやれば良いのに………。」
「あぁ、マサルが今作ってるのはウェディングドレスだから、埃っぽいこの工房じゃあ少し難しかったんじゃないかな?ここは木屑とか出るし、みんなが動けば掃除をちゃんとしてても埃が舞うからね。」
「一緒にしたくないんじゃないの?」
違うよと頭を撫でるゼラフィティスに少し落ち込んだ心に元気が出てくる。
「じゃあ、ゼラフィティス様。新しいパーツのこと教えてくだしゃい!」
「ふふっ、元気になったみたいだね。じゃあ、説明するよ。………と言っても簡単なんだけどね。ここにある蝶番の様な物…これがリモコンっていう、こっちのスイッチで右に動いたり左に動いたりする………以上だ。片方を船体に付けて、片方に舵を取る為の板を付ける………簡単だろ?」
「板が動いて水の抵抗で左右に曲がれるんですね?」
集まった子供たちは目をギラギラさせながら新しく持って来たパーツを吟味する。
「これは………船体の真後ろに付けたら船体で歪んだ水の流れが当たるから少し下に付けないと駄目なのね?」
「さすがメイちゃん………先生教える事はもう無いみたいだね?因みに、魔道具は手で動かさないでね?丈夫に作ってあるけど壊れたらいけないからね。」
「「「「「「はい!」」」」」」
元気の良い返事に嬉しそうな笑みを浮かべながら消えていくゼラフィティス様。
「わっ、すごい!15組もあるよ!」
「先生たちに感謝しないとね。」
大人たちは知らない………子供たちが本物のプロフェッショナルとして船造りに携わっている事を………。
大人たちは知らない………この子供たちが作る船が既にこの世界のどの船より高度な物であるという事を………。
「なぁ、マサル………次のボートレースが楽しみだな。」
「あぁ、世界が変わる発明をしているのを子供たちも大人たちも気付いてない………外洋へと行ける船………人の世界がまた広がるな。」
悪巧みは静かに進んでいた。
舵を取れる自らに推進力のある船は地球の大航海時代の船よりある意味レベルが高いですからね。
文字どおり世界が変わります♪




