ジータは現場監督?
翌日、住民たちは堆肥とアダマンタイトを生産している建屋の隣に広く整地され鋼材で作られた骨組みに目を見張った。
マサルが神になる前からいる人々は『作業早くなってるなぁ』くらいだが、ヴィンターリアにここ数年で住み始めた者は城に続き突如生えてきた巨大建造物に驚き目を見張る、他国から来ている者たちは絶句するしかない。
「兄ちゃん!今度は何をやらかしてんの?」
もう少年期を卒業しようかという迄に成長しているジータが外から大きな声をかける。
「おう!昨日アデリナに資材倉庫が無いって言われたからさ、交易の品物なんかも管理・運営出来る様に、巨大な倉庫兼、店にしてしまおうと思ってな!」
そう、マサルが昔務めていたホームセンターが遂に、このアルステイティアの地に作られようとしているのだ。
「取り敢えずは資材館だな、生活物資なんかは別に建てて通路で行き来出来る様にするつもりだ!ちょうど良い!ジータ手伝ってくれ!」
「オレ、これからプロの狩人になる為の講習会があるんだけど………今日逃すと3ヶ月後にならないと講習無いんだよ。」
「3ヶ月か………じゃあ、それまで俺を手伝ってくれ!給料は出すし、特製の弓矢とナイフ、その他諸々で買収されてくれないか?」
悩むジータにマサルは追い討ちをかける。
「アダマンタイトのナイフに、ワームの弦のトロント弓………アダマンタイトの短槍………小手も付けよっかな………。」
「兄ちゃん………逃がす気が全然感じられないんだけど………。」
「そうか?断ってくれても良いんだぜ?………ボートレースの優勝者の賞品で作る本物の船の乗船許可も付けようと思ってるのになぁ………他の人に話持っていくか………。」
「ちょっと待ってよ!やるよ!やれば良いんだろ?………まったく、兄ちゃんにはかなわないなぁ………。」
ジータに見えない角度でニヤリと悪い笑みを浮かべて早速マサルはジータに指示を出していく。既に船への乗船許可の辺りで狩人の道を歩み外しているのだが、ジータはそれには気付いていない。
「じゃあ、俺は床に石板並べて磨くから、ジータはそこにある材料で棚を組んでくれ。棚の規格はそこの柱に貼ってあるから間違えない様にな。」
「ちょっと待ってよ!これ………全部棚かよ………何個作るんだよ!」
「大丈夫だ、それでもまだ半分くらいだからな?」
実際は山のように棚板などが積み重なっているが1/5程の棚しか作れない。最初から心が折れると面倒なので適当に誤魔化したのだ。
「何が大丈夫なんだよ………兄ちゃん。誰かもう少し雇わねぇ?」
「じゃあ、ジータの給料はこれくらいだから………ジータが現場監督って事で、ジータより安い給料でなら採用する権限を与えよう!」
「オレが選ぶのかよ!……因みに何人まで?」
「6人迄で宜しく!!」
「最初から全然人手が足りてないんじゃないかよ!ちっ、文句言ってても仕事は終わらない!今日講習受けるヤツ等は全員道連れだ!」
こうしてジータの同期は全員が狩人の道を踏み外していくのであった。




