姿を見せぬ謎の魔物
ゼラフィティスに近くまで送って貰うと意外とその集落は平穏な雰囲気に包まれていた。
「問題は解決したのかな?…………すいません、ヴィンターリア王都から何やら魔物が出ると聞いてやって来たのですが?」
「王都から来たって………?」
集落の入り口にある畑仕事をしているオジさんに声をかけると、胡散臭そうな目でなめ回す様に観察する村人に子供たちから預かった手紙を見せる。
「この手紙の子の集落はココで間違いないですよね?」
「わしは、字が読めん………一番奥の長の家に見せなさい。」
「長の家ですね、ありがとうございます。」
…言われた通り集落の中を進んで行く。
「意外と古い集落だな……立派な藁葺き屋根に水田か………植えているのは米か?にしては、ちょっと変わった感じがするな…。」
葉の色はとても薄いが、とても頑丈そうな太い茎をしているて、日本の田んぼを見慣れている人が見るとその違いは間違いなく違和感を抱かされるだろう。
「もともと、太い茎葉の品種なのに栄養不足か?」
稲は一般的に肥を多くすると緑が濃くなり、少なくすると薄くなる。多くて栄養をたくさん蓄えた方が良い様に一見思われるのだが、葉の栄養が多いと蝗が集まり葉を食べるし、早く実がなると鳥の被害にあうのだ。農家の中では周りの田を見て駆け引きをしながら丁寧に米を育てているところも少なくない。
「取り敢えずは、長の家だな!長の家!寄り道してても仕方ないよな。」
キョロキョロしながら長の家を何とか見つけ、空きっぱなしの扉から声をかける。
「すいません、こちらが長の家で間違いない無いでしょうか?」
中には数人の女性たちと老人が話し合いをしていた様で、一斉に聞き慣れぬ声がしたマサルへと視線が集まる。
「王都から参りましたマサルと申します。魔物の被害に合われていると言われて来たのですが、お話はどなたから聞けば宜しいのでしょうか?」
「王都から?もう来たのですが?手紙は出して1月…まだ王都に着いた頃だと思いますが?」
「あぁ…王都に手紙が着いてから日は経ってませんが、神ゼラフィティス様のお力によりココに来させて頂きました。」
この世界で神の名をもって詐欺を働く者はいないと前にアデリナに聞いたので、ゼラフィティスの名を全面に押し出して何とか理解して貰う。実際にゼラフィティスに送って貰ったので嘘は言ってない。
「では、村の現状を説明致しましょう………。」
村長の話が眠くなる程に長かったので意訳すると、家畜が謎の魔物に襲われる様になった。その魔物は肉食の様で、多量の血痕が現場にあって、何かを引きずった跡があった。既に村から3人の犠牲者が出ており、過去この様な事例が無い為に山から何か未知の魔物が下りてきたのだろうと思っているらしい。
「なるほど…家畜も3割近くが既に喰われて生活が成り行かなくなってきているんですね。」
「襲われるペースを考えても魔物は一体では無いかと思っております。」
確かに一度に複数が襲われたりしていない事からも敵は一体で、毎日ヤギや人を襲って喰うとなると相当な大喰らいという事になる。熊だってあの大きな身体をしていて毎日獲物をとって食べている訳ではないのだ。
「では、その魔物が狩りをした一番新しい場所が見たいのですが…。」
「分かりました、村の狩人に案内させましょう。……それで、本隊の方々はいつ来るのでしょうか?」
「本隊?………あぁ、私1人ですよ?」
「1人だけですか!?それはまた………。」
明らかな失望の表情をする村人たち…それはそうだろう、未知の魔物に対して送られてきたのは1人の若造だけなのだから。
「まぁ、安心して下さいとは言いませんが心配しないで下さい。一応、ヴィンターリアの最大戦力が来たのですから………っと、この小麦使ってやって下さい。」
と20kgの小麦を5つアイテムボックスから取り出し無造作に積み上げる。
「これは!?何処から!?」
「じゃあ、案内出来る狩人さんが来たら声をかけて下さい。俺はちょっと準備してますから。」
そう言い残して外に出てると対ピンファント戦に用意した、全然役に立ってなかったアダマンタイトの鎧と槍を身につける。
「ちゃんと相手の姿を見た人がいないってのもオカシいよな………あれだけ喰うなら相当身体がデカいハズなのに、ここにはそれほど背の高い植物はあんまり無いのに………あるのは広い田んぼか………生えてる稲の背の高さはせいぜい50〜70cmだしな。」
「田んぼに興味がありますか?」
田を眺めて唸っていたマサルに声をかけたのは1人の農家のおばさんだった。
「ええ、あれは米ですよね?」
「ほぅ、あまり他所では育てているところは無いと言ってましたがご存知でしたか。我々はこの米を粥にして食べるのが一般的で、この辺りの主食なのです。」
「良かったら収穫出来る様になったら種を少し分けて頂けませんか?私も米は大好物なのですよ。」
「それでしたら、後程に昨年のもので良ければ幾らかお持ちしましょう。この村の為にこれほど遠くまで来て下さったのですから、手ぶらで帰らせる訳にはいきませんので。」
「ありがとうございます。………ところで、稲の色が若干弱々しい気がするのですが、元々あの様な色の品種なのでしょうか?」
「いえ、例年はもっと深い緑をしているのですが、今年は何故だか色付きも悪く成長も遅いのです。」
「他に何か変わった事はありませんでしたか?小さな事でも構わないのですが。」
「そういえば………今年は蛙やワームが少ないと誰かが言ってましたね。それから夜に耳を澄ませると確かに蛙の声がしないのでオカシいなと話をしていたんですよ。」
背の低い草木、しかし見付からない敵……水田……蛙の減少……。
「そうか!皆に伝えろ!魔物は水辺から来る!田んぼの水路なんかを使っているから見付かり難いんだ!」
生態系を変える程の暴食の水生生物……マサルには1つ心当たりがあった。
「まだ幼虫でうろつき回っていてくれよ………成体になったら流石にヤバいぞ……。」
マサルは、まだ見ぬその魔物に焦りを覚えていった。
そう、あの子が犯人なのですよ!
いやぁ、子供の頃には捕まえて育てたりしましたね………しかし、意外とヤバい生き物だとはあまり知られてないのかも知れません。
答えが分かった方は感想に!分からない方は感想を見ずに明日を待つのだ!(笑)




