ただいまヴィンターリア
「ただいまぁ………って、牧場かよ!マギアルウス…ちゃんと働けよ…寝てばっかいるんじゃねぇだろな。おっ、家が増えてる!木も大きくなったなぁ…。」
マギアルウスは風切りウズラや角兎たちに囲まれてハーレム?状態で惰眠を貪っていた。
「おっ、子供たちがボートレースしてるな…あれはメイか?おぉ〜い、メイ!みんなぁ〜!」
「んっ?おにいちゃん?………おにいちゃんだ!」
すっかり大きくなったメイは船を手放しマサルに向かって駆け出す。広げたマサルの腕の中に飛び込もうと勢いよくジャンプしようとした瞬間…。
「マサルっ!!」
「ぐけっ!」
何処からか現れたビクティニアスが横から突っ込んできて、マサルを全身全霊のタックルでさらっていく。呆然とマサルに抱きつき地面に転がるビクティニアスたちを眺めて、そっと少し捲れたビクティニアスのスカートを直すメイ。
「みんな!おにいちゃんかえってきたよ!」
暫くは相手にして貰えない事を悟り、街中に帰って来た事を報告に走ることにしたメイ…健気な子である。
「おぉ、マサルが戻って来たって!」
「本当か!是非すぐにでも顔を見にいこう!」
「やっと帰ってきたか!」
などと口々に言い合いマサルの元へと街の人たちが集まっていく。
「ちょっとザーク!マサルが戻って来たって言ってるわよ!行くわよ!!ほら、早く着替えて!」
「本当か!分かった急ぐからやっててくれ!」
とすっかり城の無い事を良い事に神殿に住み着いているヴィンターリアの女王アデリナと王配ザークは人だかりの出来ているマサルの元へと駆け付けたのであった。
「ちょっと姉様、ズルい!わたくしもマサルとお話するのです!」
「んんっ、もうちょっと………もうちょっとだけぇ。」
人だかりの中に飛び込んだアデリナとザークは姉妹神にもみくちゃにされて、街の住民たちから冷めた目で見られて困っているマサルの姿だった。
「あっ、アデリナただいま。謹慎終わって帰って来ましたよっと…ちょっ!アイラ、そこ掴んだらズボン脱げちゃう!」
「えっ?あっ、ごめんなさいって…わたくしズボンなんて掴んでませんよ?」
「じゃあ、誰が……ってメイ!?」
皆を呼びに行っていたメイは暫くするとアイラセフィラが来て揉みくちゃにされている隙を見て、こっそりと後ろから腰辺りに抱き付きに戻っていたのである。
「おにいちゃんのきんしんは3ねんだったよね?」
旦那さんが連絡もせずに残業で遅くなったのを責める様な仕草と表情でマサルに問い掛けるメイ。
「そうよ、何でこんなに遅くなったの!」
「ちゃんと説明して下さるんですよね?」
ビクティニアスとアイラセフィラも参戦し、いつまで経っても主導権を握れないヴィンターリアの女王様…。他の住民たちは尚更だ。
「分かったよ、簡単に説明するな…。向こうの神界に行ったら処分が言い渡されてヘパイストス様っていう鍛冶の神様の所で神様の色々を学ぶ事になったんだ。………って、ビクティニアス!ちゃんとアレ(マギアルウス)の神力はこっちに来た?」
「えっ?あぁ、去年ちゃんと来たわよ。色々と大変そうだからって…マサルが交渉してくれたの?」
「んっ?去年?………アテナ………着服しようとしたけど俺を迎えに行けず、帰せない埋め合わせとして返還したな?師匠結界くれてやるんじゃなかったな…。」
「どういう事?」
「あぁ、簡単に言うとアテナが俺を迎えに来ないから帰って来れずに1年余分に向こうにいたんだ。」
細かい心遣いも何もかも台無しである…やはり信頼というものは脆く崩れやすいものなのであろう。せっかく、アテナやヘパイストスの心意気で良い経験が出来たと誉めるつもりだったのに急にそんな熱量は消え去ってしまった。
「うん、ビクティニアスはヘラ様に報告しても良いと思うよ?」
「そうしとくね。」
あっさりアテナを売るマサル…ヘパイストスに捕まるよりは何万倍もマシだと諦めて貰おう。
「取り敢えず、みんな………飯にしようか。向こうでは水と酒とリンゴ、それに焼いた肉に少しのパンくらいしか無くて辛かったんだよ…。」
「神界のどんな辺境よ……それ。」
「それでも神様の中で1番の職人の所だったんだよ………ガッツリ勉強してガッツリ鍛えられたよ。ちょっと変態だけど愛に飢えてるだけの可哀想な師匠なんだよ。」
「変態なんだ…。」
「うん、変態で女神の敵なんだ…。」
心から関わり合いにならないと心に決めたビクティニアスとアイラセフィラ。
「取り敢えず、話は明日にしよう。大事な話もあるから細かい話はその時にでも。」
「皆さん!今夜は宴よ!」
アイラの宣言で沸き立つ民衆、アデリナはただただ呆然とそれを見守るしかなかった。
Twitterのアカウントわからないと言われたのでもう少し分かりやすく…@ToGospelのうさぴょんですよ。




